令和3年6月定例会
質 問 ・答 弁 実 録
《7月1日(木)3番手》
1 総合的視点に立った政策の推進について
2 せとうちDMOの存在価値の向上と
持続性のある財源確保について
3 ひろしまブランドの価値向上について
4 若者に選ばれる高等教育機関の魅力づくりについて
5 新型コロナ対策について
(1)新型コロナにおけるヘルスリテラシーについて
(2)集中対策期間中における県立施設の休館等について
自由民主党広島県議会議員連盟
出 原 昌 直
はじめに
皆さん、こんにちは。
自由民主党広島県議会議員連盟、福山市選出の出原昌直でございます。
今次定例会、最後の質問者として登壇の機会を与えていただき、中本議長をはじめ、小林副議長、先輩、同僚議員の皆様に、心から感謝を申し上げます。
まずは、新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に心からのご冥福をお祈り申し上げます。
また、日々県民の皆様の尊い命と健康を守っていただいている医療従事者、保健関係の皆様、そして、新型コロナ対策に関わっている全ての皆様方に深く感謝を申し上げます。
さて、湯﨑県政も3期、12年目に入り、残された期間も数か月となりました。
知事は、就任以降、これまでの行政にはなかった視点から社会課題にアプローチされ、いわゆる尖った政策を立案し、実行に移されてきました。
私は以前から、その独創的な発想と、困難な課題に果敢にチャレンジされる姿を見て、広島県の未来は明るく、あらゆる分野でトップランナーになっているに違いないと期待を膨らませていました。
しかしながら、世界経済のうねりや今般のコロナの影響もあり、依然として人口減少に歯止めがかかる兆しもなく、県民生活が豊かになったという実感は得られていないように思います。
解のない社会問題の解決にあたっては、従来の発想にとらわれないダイナミックな政策も時には必要かもしれませんが、基本に立ち返って足元を見つめ直し、地域を代表する我々議員、地域行政を担う市町、そして、価値を生み出す企業等との対話から、丁寧に政策を積み上げていくこともまた大切なことだと思います。
本日は、こうした観点に立ち、基本に立ち戻り、『対話』をテーマに質問したいと思いますので、知事をはじめ、執行部におかれましては、分かりやすい答弁をお願いし、質問に入ります。
1 総合的視点に立った政策の推進について
質問の第1は、総合的視点に立った政策の推進について、お伺いします。
今年度から県の最上位計画である「ひろしまビジョン」が始動しました。
私は、このビジョンの最大の特徴であり、そして、期待していることは、バックキャスト思考、日本語で言えば、未来からの逆算的思考を取り入れていることであります。
ご案内のとおり未来からの逆算的思考は、現在の延長線上で実現可能なシナリオを積み上げていくのではなく、外部環境変化を捉え、変化後の広島県の未来におけるありたい姿、目標を描くこと、未来を洞察することであります。
このため、未来からの逆算による政策形成は、顕在化した目の前の課題への対応ではなく、未来像を基点とした対話であり、イノベーションを生み出すことが前提にならなければなりません。
つまり、個別の政策から離れ、地域の未来像について対話することを組織として意識し、習慣化させ、ひいては組織文化としていくことが求められると思います。
言い換えれば、縦割り行政からの脱却であります。
ここで一つ事例を挙げて説明させていただきます。
私がこれまで要望してきた「住宅向け耐震化の補助制度」が今年度創設されました。このことは評価し、非常に感謝しております。
しかしながら、一つ残念なことは、「空き家」については、元となる国の制度では補助対象となっているにもかかわらず、県制度では対象から外されていることであります。
担当課の使命は、地震による倒壊等の被害から県民の生命を保護することかもれしれませんが、空き家率が20年後には30%にも及ぶと言われている未来を想像した上で、例えば、空き家を改修し、定住や関係人口の増加につなげる視点で考えれば、補助対象に「空き家」を加えるという選択肢があったのではないかと思います。
私自身、企業等から、「空き家を活用した地域活性化に資する事業展開を検討したい」という声を聞くことがあり、「地域のやっかいもの」、「負のストック」と言われる空き家も、知恵を絞り、新たな活用策を見出すことができれば、未来の芽となりえるということを申し上げたいわけであります。
変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の時代と言われる現代、従来からの積み上げである「なりゆきの未来」を前提とした政策・施策の検討プロセスでは、地域に起こりつつある社会変容に対応できず、また、当然にイノベーションは起こりえません。
コロナ危機に伴い県の財政状況が極めて厳しい中、感染拡大防止対策とビジョンの実現に向けた取組を両立させていくには、一層の選択と集中、最小経費で最大効果を図ることは当然ではあります。
しかしながら、こうした考えが行き過ぎると、未来起点の議論が敬遠され、目先のことにとらわれることで、総合的視点に立った政策や未来起点の政策が、政策立案の意思決定の過程で角が取れて消えてしまうことを懸念しております。
財政状況が厳しい中でこそ、俯瞰した未来の様々な可能性を組み合わせて複数のシナリオを描く総合的な議論の活発化が必要であり、そして、市町や企業等のプレーヤーとの協働により、地域を創造していくことが求められます。
とりわけ、企業はコロナ危機により、生き残りを掛けて、新たな成長戦略を模索し、市場の開拓、挑戦と変革に向けて必死であります。
このため、企業のやる気をバネにした、成長の可能性を引き出すレバレッジ効果が高い施策を講じていくことが、多様化、複雑化する地域課題の解決に向けたイノベーションの推進につながるのではないでしょうか。
持続可能な地域の実現に向けて、未来からの逆算的思考に基づく「ひろしまビジョン」を絵に描いた餅で終わらせてはなりません。
政策領域に閉じた議論に終始することなく、長期的な未来感、未来像を基点に発想、議論し、「総合的」視点を持って、未来の芽を見出し、様々に組み合わせること、そして、民間企業の活力を生かし、可能性を引き出す創発的な政策や事業を組み立てていくことが、これからの広島県には求められると思いますが、今後どのように取り組むのか、庁内における未来からの逆算的思考の定着と実践を含め、知事の御所見をお伺いいたします。
【答弁】知事
「安心▷誇り▷挑戦 ひろしまビジョン」の策定に当たりましては、先行きが不透明で変化が激しい社会経済情勢の中で、現状から延長するフォアキャストの手法では、社会的価値の創出に向けたイノベーションが起きにくいといった懸念があることから、未来のあるべき姿を構想した上で、10年後の目指す姿を描くバックキャストの手法により検討を行ったところでございます。
このような考え方に基づき、ひろしまビジョンでは、「17の施策領域」とそれぞれの10年後の目指す姿及びその実現に向けた取組の方向を設定し、それぞれの施策を連関させ、相乗効果を生み出す総合的な取組を推進することで、県民一人ひとりが、「安心」の土台と「誇り」によって、夢や希望に「挑戦」できる社会を実現していくこととしております。
具体的には、所得に対する子育て家庭の不安に対し、
・ 「産業イノベーション」や「働き方改革・多様な主体の活躍」の領域での取組により、暮らしの安心を築き、
・ 「子供・子育て」や「教育」の領域での取組により、子育て・教育に対する負担感の軽減や貧困の連鎖を断ち切るなど、
様々な施策を連関させた取組を進めてまいりたいと考えております。
このため、17領域の施策の推進に当たっては、その領域だけでなく、全体を俯瞰した総合的な視点を持った課題設定を行い、未来からの逆算的思考のほか、市町や民間との協働といった多様な実施手法の考え方も取り入れながら、戦略的に施策を立案することが重要でございます。
また、立案した施策を着実に遂行していくためには、変化の兆しを迅速かつ的確に把握し、計画や取組の見直しを柔軟に行うなど、PDCAサイクルによる施策マネジメントを実施し、施策の実行力を高めることも重要であると認識しております。
こうしたことから、戦略構築等に関する基本的な知識やスキルを有する人材の育成を計画的に行うとともに、施策のまとまりであるワーク単位でのモニタリング等を計画的に実施し、PDCAサイクルによる施策マネジメントの強化の取組を進めているところでございます。
今後も、総合的な視点を持った戦略構築力と施策の実行力を更に高める取組を進め、庁内全体に定着させることで、ひろしまビジョンに掲げる目指す姿の実現に結び付けてまいります。
2 せとうちDMOの存在価値の向上と持続性のある財源確保について
質問の第2は、せとうちDMOの存在価値の向上と持続性のある財源確保について、お伺いいたします。
一般社団法人せとうち観光推進機構と株式会社瀬戸内ブランドコーポレーションからなる「せとうちDMO」が、瀬戸内エリアのブランドの価値向上に向けて取り組みはじめ、5年が経過しました。
瀬戸内全体での観光地マーケティングやプロダクトの推進を担うせとうち観光推進機構の立ち上げには、湯﨑知事が先頭に立って、瀬戸内を囲む7県知事と対話し力を尽くされました。
私は、その多大な功績に敬意を表するととともに、推進機構の展開に大きな期待を寄せています。
しかしながら、この5年間、せとうち観光推進機構はプロモーションを中心に精力的に取り組まれてきましたが、令和元年度の実績では、「来訪意向度」をはじめ「延べ宿泊者数」、「住民満足度」など全ての指標は向上しているものの、目標には一歩及びませんでした。
とりわけ、DMOの目的が、観光地全体への来訪を奨励して、消費総額を増やし、その経済効果の恩恵を地域住民に広く行き渡らせて生活の質を上げることにあるため、「住民満足度」の目標が達成できなかったことは、非常に残念であります。
世界の経済成長をインバウンド客の誘致という形で取り込み、少子高齢化・人口減少による経済衰退を食い止めて、むしろ地方の経済をインバウンド客の支出で地方創生を実現させるためには、DMOの存在は欠かせません。
このため、これまでの観光協会とは一線を画し、DMOは観光地マーケティングによるプロモーションと、それを可能とする機動的・戦略的な予算配分、そして、自立した持続性ある資金調達を図る必要があります。
私は、コロナ危機を脱した後は、インバウンド客は必ず高い成長率で戻ってくるものと信じています。
しかしながら、令和元年度のせとうち観光推進機構の収入を見ると、その7割を瀬戸内7県の負担金と国庫補助金で占め、事業収入はわずか1割程度であり、とりわけ国の補助金の影響が事業計画を左右し、極めて不安定な財務体質にあります。
高齢化による社会保障費用の負担割合が増えることが確実で、政策的経費が先細る地方自治体の一般財源に依存することなく、成長産業部門であるインバウンド戦略に対する予算をどう確保するのかという将来展望を真剣に考える必要があると思います。
こうした状況を踏まえ、県においても永続的財源スキームの構築を行う必要性があることから、DMO向けの特定財源制度としての観光産業改善地区、いわゆる「日本版TID制度」の導入について、長きにわたって国に要望していますが、未だ実現の道筋は見えていません。
引き続き、瀬戸内7県と連携し、国に対して粘り強く交渉することをお願いいします。
同時に、法整備がなされた際には、スムーズに制度導入ができるよう準備を進めておくことが求められます。
その中で、最も大事なことは、瀬戸内エリアでのDMOの存在価値、すなわち「住民満足度」を高めることにあると思いますが、例えば、せとうちDMOの有料会員「せとうちDMOメンバーズ」の910社の約4割が広島県の企業等であることを考えると、瀬戸内エリア内で温度差があることを懸念しています。
先ほども申し上げましたが、私は、コロナ危機を脱した後は、インバウンド客は必ず高い成長率で戻ってくるものと信じていますが、そのインバウンド客は日本の全国各地に平等に戻ってくるわけではありません。
観光地として地域をマーケティングするDMOの仕事ぶりが、インバウンド客の回帰スピードに大きく影響するため、せとうちDMOの果たすべき役割は極めて重要であり、その役割を果たすための財政的基盤の強化は急務であります。
例えば、この度提案があった「観光誘客促進事業」を瀬戸内7県でのマイクロツーリズムとしてせとうち観光推進機構で展開することや、自治体からの施設管理の受託、古民家等を活用した宿泊事業の実施、旅行商品の造成とその販売による手数料の獲得など、収益が見込める自主事業を推進していく必要があると思います。
そこで、瀬戸内エリアでのせとうちDMOの存在価値である「住民満足度」の向上に向けた取組、持続性のある安定した財源の確保に向けた具体策について、知事にお伺いいたします。
【答弁】知事
「せとうちDMO」は、これまで瀬戸内エリアのブランド価値向上などに取り組んできており、瀬戸内7県の地域経済活性化や豊かな社会生活の実現を図っていく上で、極めて重要な役割を担っているものと認識しております。
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、インバウンド需要が見込めない中、せとうちDMOが、その存在価値をより一層高めていくためには、これまでの欧米豪をターゲットとした取組から当分の間、国内誘客にシフトしていくとともに、引き続き、国内外における瀬戸内ブランドの更なる向上を図っていく必要があると考えております。
あわせて、インバウンド需要の回復後において、瀬戸内エリア全体に経済効果をこれまで以上に波及させていくための施策にも、今から取り組んでおく必要があると考えております。
このため、国内誘客や瀬戸内ブランドの更なる向上を図る観点から、せとうちDMOにおいては、
・ コロナ禍における国内観光客の新たなニーズに対応した瀬戸内ならではの 観光プロダクトの開発や、
・ 自社メディア「瀬戸内ファインダー」やSNS等を活用した、国内外への瀬戸内の認知・浸透を効果的に推進するための新たな仕掛けづくりなどの取組を進めていくこととしております。
さらに、インバウンド需要の回復を見据え、
・ 回復過渡期におけるアジアからの誘客を促進するための取組や、
・ 海外富裕層等を含む各ターゲット層に応じた体験メニューの開発や魅力的なサービス創出に向けた取組
なども進めてまいります。
こうした取組などにより、瀬戸内ブランドの更なる向上や地域経済の活性化を図っていくことで、住民の方々の地域に対する 誇りや自信につなげ、住民満足度を高めていきたいと考えております。
次に、持続性のある安定した財源の確保につきましては、まず、県といたしましては、「日本版TID制度」の導入と併せて、平成31年1月から徴収が開始された国際観光旅客税について、DMOを含む地方の自由度の高い観光振興財源として配分されるよう、引き続き国に対し強く要望してまいります。
さらに、せとうちDMOにおいては、今後、
・ 地域における関係者との合意形成や役割分担の明確化などに基づく自治体や企業等からの新規受託事業の拡大や、
・ マーケティングにより得られたデータや知見等による知的財産収入の獲得
など、様々な手法を柔軟に検討し、持続性のある安定した財源の確保を図っていく必要があると考えております。
今後も、地域経済の活性化や豊かな地域社会の実現に向け、せとうちDMOや構成する各県等と緊密に連携を図りながら、瀬戸内ブランドの確立と交流人口の拡大に取り組んでまいります。
3 ひろしまブランドの価値向上について
質問の第3は、ひろしまブランドの価値向上について、お伺いいたします。
地域産品の売上向上や観光客の誘客、商店街の活性化、移住の促進、地域アイデンティティの核になるなど、地域ブランドに託された役割は多岐に渡るため、地域活性化推進に向けた「ブランド」戦略は意義のあることだと思います。
マーケティングの権威であるコトラーは、「ブランドとは消費者のマインドの中に存在するもの。消費者の知覚と思い込みで形成されている」と述べています。
つまり、消費者はモノを手にし、コトを体験したときに自分なりのフィルターを通してその価値を定め、脳細胞に記憶すると言われています。
このため、情報と刺激が溢れる中で、消費者の記憶に届けるためには、消費者の注意を引くことが重要であり、一貫性のない、バラバラなメッセージではなく、きちんと整理された情報を発信することが重要となってまいります。
そうした意味において、地域ブランドの価値向上に向けては、内外からどのように見られたいかを特定し、その中で、行政や企業等が一貫して取り組むことが求められると思います。
例えば、北海道東川町は、「写真映りのよい町」の創造を目指し、昭和60年に世界にも類のない「写真の町宣言」をしました。
それ以来、一貫して芸術写真をテーマに住民と試行錯誤し、その結果、写真家が大勢移住し、町や店舗のガイドブック、企業のパンフレットなどを作成する際に写真のクオリティーが高まり、腕のある料理人も移住してレストランが増え、それを知り、センスのよい暮らしに憧れる人が続いて移住し、町人口も増え、最近では、世界的に著名な建築家がテレワーク用オフィスを設置することが話題になりました。
一方で、現在、ひろしまブランドの価値向上に向けた「ひろしまの見られたい姿」を整理されていますが、そのキーワードには、「ひろしまの復興と活躍、産業やスポーツ・文化、海の幸に山の幸、豊かな海と四季を魅せる山々。開放的な都市機能などなど」と、要素や情報量が多すぎ、また、「ひろしまの復興」を除けば、ほとんどの地方都市を有する県に当てはまる内容で、消費者の心に突き刺さるとは私には到底思えません。
県という単位で、かつ、総合的な地域ブランドの向上を狙う、目的の設定は、非常に難しいのではないでしょうか。
県がブランドコンセプトを作ることは否定しませんが、地域づくりを担う市町との連携、協力なくしては、地域ブランディングは実現できません。
まずは、市町と対話して、どういうコンテンツで地域ブランディングしていきたいのかを整理することが先決ではないでしょうか。
そして、県は市町の地域ブランディングを伴走支援するとともに、複数の市町のブランドを、ストーリー性を持たせながらパッケージ化して、マーケティングを行った上で、プロモーション活動を行うことが広域自治体としての役割と思いますが、知事の御所見をお伺いいたします。
【答弁】知事
ひろしまブランドの価値向上に向けた取組は、県民の皆様に広島の強みを再認識していただき、誇りにつなげるとともに、国内外からの共感の獲得につなげていくために重要であると認識しております。
このため、「安心▷誇り▷挑戦 ひろしまビジョン」 に掲げる17の施策領域全てにおいて、 ひろしまブランドの強化を意識した取組を推進することとしており、地域のブランド価値向上に向け、市町をはじめとした多様な主体と連携して取組を進めることとしております。
これまでも本県では、平成26年に策定した「ひろしまブランドの価値向上に向けた取組方針」に基づき、地域の魅力創出や情報発信に取り組んだ結果、広島への関心が高まり、観光消費額や移住世帯数の増加などにつながったものと考えております。
こうした取組を更に推進し、より強いひろしまブランドを創っていくため、今年度、広島がどのように見られれば評判・評価が高まるのかを「広島の見られたい姿」として取りまとめたところであり、今後は、この「広島の見られたい姿」を、県民の皆様や、市町、企業・団体と共有し、オール広島で価値づくり、価値発信を行っていきたいと考えております。
この「広島の見られたい姿」の取りまとめにつきましては、広島の魅力を
・ひろしまは、元気あふれるところです
・ひろしまは、おいしさの宝庫です
・ひろしまは、暮らしやすさをつくります
という心に留まりやすい3つのストーリーで、表現しております。
さらに、広島が国内外に提供する中心価値を、「平和への想いと行動、穏やかな風土は、ひろしまの元気を育み、すべての人へ、明日へ向かうエネルギーをもたらす。」と定義したところです。
このひろしまブランドの中心価値は、 広島ならではの価値を通して「広島は元気である」、「広島に行けば元気がもらえる」という共感につなげるものであり、
・広島の復興を支えた先人たちの想いや頑張り
・ものづくりにかけた情熱とチャレンジ精神
・スポーツによってもたらされる勇気
・瀬戸内海と中国山地によって育まれた豊かな食文化
・都市と自然が融合した欲張りな暮らし
といった広島ならではの強みがあることに加え、こうした価値が揃っている広島だからこそ国内外に存在感を示せるものと考えております。
この「見られたい姿」が、共感されることによって、広島というエリアが着目され、観光、移住、企業立地など様々な分野で県内市町が国内の数ある地域の中から選ばれるものと考えております。
そうした意味において、地域のブランド価値を高める上で、県の役割は大きいと認識しており、県といたしましては市町それぞれの主体性、独自性を尊重しつつ、地域ならではの価値を共有し、共に磨くとともに、地域の強みを効果的に発信してまいります。
今後とも、こうしたブランド価値が高まる好循環の創出により広島や県内市町が魅力ある地域として、国内外の皆様から支持され、将来にわたって選ばれ続けるよう取組を推進してまいります。
4 若者に選ばれる高等教育機関の魅力づくりについて
質問の第4は、若者に選ばれる高等教育機関の魅力づくりについてお伺いいたします。
本県の大学進学時における転出超過が指摘されてから久しい状況にあります。
大学所在地は、学生の就職活動の拠点となるため、大学進学時の地域選択は、卒業時の就職活動に少なからず影響を与えます。
県外の大学に進学した学生の地元での就職希望は半数以下というデータもあるため、大学進学時の転出超過は、Uターンなどによって20歳代のうちに復元する一過性のものではないことから、しっかり対策を講じる必要があります。
本県の大学進学時における転出超過は、平成26年に約1,600人であり、県は施策目標として、令和元年に1,000人まで縮小することを掲げていました。
しかしながら、直近の令和2年度データでは目標に届かず、約1,500人が転出超過しており、依然として改善しているとは言えない状況にあります。
私なりに調べてみますと、近年の平均値では、県内大学等の入学定員が約14,400人に対し、県内高校生の大学等への進学者は約15,840人余り、定員充足率はほぼ100%という状況にあります。
つまり、単純計算ではありますが、分かりやすくいうと、仮に県内高校生の進学希望者が全員、県内進学を希望したとしても、約1,500人程度の学生が座る席は県内にはないということです。
県はこれまでどういう戦略で大学進学時における転出超過の状況を改善しようとしていたのか、県の本気度にも疑問が残るところであります。
一方、今後は、長期的に生徒数が減少基調となることが見込まれているため、入学定員数が今と変わらないと仮定すれば、こうした問題が解決され、一定の定員充足率を維持することで、転出超過の解消を図ることができ、県もそのような戦略を描いていると伺っています。
では、どのような施策で転出超過の解消を図っていくおつもりでしょうか。
人口の定住論が語られる際に、しばしば地域への愛着を育む教育の重要性が強調されますが、進学者が地元を離れるのは、やみくもに都会にあこがれているからではありません。
むしろ、住み慣れた地元への進学を希望する学生は、我々大人が思っている以上に多いと私は考えています。
根本的な問題は、高等教育機関がとりわけ首都圏に集中しているという構造的なものであり、地方は定員の収容力が小さいだけではなく、専攻や入試難易度などの選択肢も限られるため、大学進学者は都市に流出せざるをえない状況にあることに、きちんと向き合う必要があります。
国においては、地域大学振興法による大学進学に伴う若者の東京集中の是正などの取組を進めていますが、この振興法の意義は、東京の大学の定員増の禁止よりも、地方大学の振興と地域産業の活性化を支援する仕組みにあると捉えるべきであり、地方の創意と工夫なくしてその効果は期待できないと思います。
しかしながら、地方大学の魅力を高めると一言で言っても、県内26の高等教育機関は、それぞれが独立した組織であり、県立大学を除いては、県は財政的な支援もしていなければ、指導監督する立場にもありません。
こうした難しい立ち位置の中で、県は、大学間連携を強化し、教員等のそれぞれが有するリソースを共有し、相互に補完し合う体制を確立することを通じて、本県高等教育機関の魅力を高めることを検討されているようですが、その検討に当たっては、当事者である大学、主役である学生と対話されているのでしょうか。
進学は、「広島で学び、働きたい」と思う子供達のライフイベントの重要な岐路になります。
学生や県内企業のニーズ、若者の進学や就職等の地域移動の主要構造をしっかり把握した上で、広島で学ぶことができる学問の選択が広がり、そして、就職の選択の可能性が高まる教育を提供できる高等教育機関の魅力づくりに向けて取り組む必要があるのではないでしょうか。
大学進学時の転出超過の改善を図るため、今後、どのように取り組んでいくのか、これまでの大学進学時の転出超過改善の取組における課題等を含め、知事の御所見をお伺いします。
【答弁】環境県民局長
大学進学時における転出超過につきましては、県内の高校から大学等へ進学する学生数が、入学定員を上回る構造的な課題があり、特に、令和2年度は、募集停止による入学定員の大幅な減少などにより、転出超過が拡大いたしました。
今年度は、大学等進学者の減少と定員増によって、転出超過が縮小する見込みであり、一部大学等で定員割れが生じるミスマッチはございますが、近年、転出超過は縮減傾向にあると認識しております。
長期的には、18歳人口の減少に伴い、概ね10年後に、県内の大学進学者数と入学定員が均衡することとなるため、「安心▷誇り▷挑戦 ひろしまビジョン」では、令和12年度における転出超過の解消を目標に掲げ、それぞれが持つ強みや特色を活かしつつ、県内大学・短大間の連携を強化し、多彩な専門分野を抱え、魅力に溢れる本県高等教育の充実を目指すこととしております。
このため、今年度から、遠隔講義システムによる県内大学等のネットワーク化を促進するとともに、県内どこの大学等においても、これからの社会で求められる普遍的で汎用性の高い知識やスキルを修得できる環境整備を進めることとしております。
現在、まずは、デジタルリテラシーについて、県内の大学教員で構成する検討チームを設置し、ICTやAI・データサイエンスなど、学生が身に付けるべき知識・スキルや、カリキュラム等の検討を進めるとともに、教育ネットワーク中国の協力を得て、オンラインを通じた単位互換の拡大に取り組んでいるところでございます。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進チーム等関係部局と連携し、県内企業が求めるリテラシーレベルや人材需要など、産業界のニーズの把握に努めております。
こうした取組により、県内全ての大学・短大に在籍する学生が、それぞれの進路や趣向に基づき、最適なカリキュラムを選択し、実社会の要請に応えるデジタルリテラシーを修得できる環境を構築することで、本県で学んだ学生に対する評価や高等教育の魅力向上につなげ、大学進学時における転出超過の解消を図ってまいりたいと考えております。
5 新型コロナ対策について
(1)新型コロナ対策におけるヘルスリテラシーについて
最後の質問は、新型コロナ対策に関して、2点お伺いします。
はじめに、新型コロナにおけるヘルスリテラシーについてお伺いいたします。
ヘルスリテラシーとは、正しい健康情報を選び取り、意志決定をして、自らの健康を維持、向上させる能力をいいます。
ウィズコロナ時代を迎える今、自らを守るために必要な健康力とも言えます。
ここで、少し前に話題になった風刺的な話しを紹介させていただきます。
コロナ禍において、各国の政府が国民にマスクの着用を求めることになり、アメリカは「マスクをする人は英雄です」と発表しました。ドイツは「マスクをするのがルールです」、イタリアでは「マスクをすると異性にモテます」、そして、日本政府は「みんなマスクしていますよ」と発表した、というユーモアを持って国民性を風刺したものであります。
日本の国民性の一つとして、しばしば挙げられるのが「集団主義」であり、かつては「赤信号みんなで渡れば怖くない」といった表現が流行したこともありましたが、今回のコロナ禍では「同調圧力」といった言葉が改めて注目を集めています。
例えば、マスク着用を巡るトラブルが各所で発生していることは皆さんも御承知のとおりであります。
私自身、朝5時からの犬の散歩を日課としていますが、時折すれ違う人が皆マスクを着用してウォーキングしている姿を冷静になって見るとその異様さに気付き、今後、暑さを増す中での健康リスクを心配もします。
また、緊急事態宣言下において、休業要請対象施設でないにもかかわらず、類似の公立施設が休業したため周りの目を気にし、休業をせざるをえないというケースもありました。
ルールに従った経済活動をも阻害する過剰なまでの同調圧力によるこうした事態は改めていく必要があると強く思うところであります。
こうした中、第4波とも言われる感染拡大の波がようやく収束しつつありますが、国内外の人の動きがある以上、ワクチン接種による集団免疫力が高まるまでは、いつ新たな波が到来しても不思議ではありません。
他方、ワクチンについても、ヘルスリテラシーの観点から懸念される事態が発生しています。
厚生労働省が海外での臨床試験で安全性に問題がなかったことを踏まえ、ファイザー製ワクチンの接種可能年齢を16歳以上から12歳以上に引き下げ、公費負担の対象とすることを発表し、一部の自治体では中学高校に通う生徒を対象に集団接種を始めました。
しかしながら、「副反応の懸念があるワクチンを未成年に接種するのは危険」といった住民からの抗議が寄せられ、取りやめた事例が出ているというものであります。
不安や悪い事態を想定することは当然あってしかるべきであり、その気持ちに共感はできますが、不安を煽る一方の報道や、それだけがクローズアップされると、多くの国民を新型コロナへの正しい理解から遠ざけることになります。
過剰な反応と同調圧力を生み、ひいては患者への差別などを助長することになっているのではないでしょうか。
日々の情報の洪水に多くの人々が戸惑い、目に見えない恐怖に怯え、真実が伝わりづらくなっていると思われ、せっかくの注意喚起も意味をなさなくなります。
私は、感染を防ぐのは、行政による「自粛要請」や「経済活動の停止」ではなく、一人一人の感染予防の意識と行動こそが、新型コロナに向き合う鍵であると思います。
そのためには、行政からの、正しく適切な行動を促すための情報発信が重要になってまいります。
「GoToトラベル」なども感染拡大の槍玉にあがっていましたが、肝心なことは「どこに行くか」よりも「何をするか」であります。
これまでクラスターが発生した飲食店やジム、ライブハウスといった特定の場所が悪いわけではありません。
しかしながら、公表し報道されるのは、「何処どこでクラスターが発生した」ことだけであります。
本来的には、どういう状況においてクラスターが発生したのか、そして、あるべき感染予防対策は何かを伝えることが重要ではないでしょうか。
県内でも多数のクラスターが発生しましたが、それぞれでの事案を検証し、その発生要因と講ずべきであった対策を発表すべきだと思います。
自粛要請についても、「家族以外での会食は控えましょう」という「してはいけない」ことだけではなく、同時に、「家族での会食はできますよ」ということを併せて発信するなど、日本特有の集団主義、同調圧力による過剰な自粛をなくす視点、ウィズコロナ時代で社会・経済活動を動かす視点が求められると思います。
この1年余り経済活動を止める強い対策を講じたことで、県民の我慢の限界が囁かれています。
願わくは、二度と経済活動を止めることなく、感染拡大を防止していくことであります。
そのためには、ヘルスリテラシーの観点から、新型コロナの特性を正しく学び、適切な行動を促すための取組を一層推進し、この感染症と共存しながら、日々の暮らしや地域経済の再活性化に向けた道筋を示していただきたいと思いますが、クラスター発生要因の分析などの情報や、自粛要請の発表の在り方を含め、知事の御所見をお伺いいたします。
【答弁】健康福祉局長
感染拡大防止に当たっては、県民一人ひとりの新型コロナウイルス感染症に対する正しい理解と、それに基づく感染防止対策の徹底が何より重要であり、こうした県民の行動変容に繋がる適切な情報提供が大きな意味を持つと考えております。
このため、PCR検査や積極的疫学調査等を通じた感染状況やクラスターなどの的確な実態把握や分析、国との連携による変異株等に関する情報の収集を受けて、これらに関する情報の迅速かつ適切な発信に努めていく必要がございます。
今回の集中対策においては、人出を抑制する強い対策である、外出の半減等の効果をモニタリングし、繁華街などポイントごとの日々の人出の状況をホームページやマスメディアを介して、県民の皆様へ分かりやすく情報発信し、注意喚起を行ってまいりました。
こうした取組により、県民の皆様が呼びかけに応じていただいたことで、感染拡大を抑えることができていると考えております。
また、今回の感染拡大期である4月からこれまでの67件のクラスターについて分析したところ、飲食店や医療機関、社会福祉施設等のほか、事業所や会社等の職場、学校、屋内スポーツ施設など、前回までの感染拡大期と比較して、発生場面の多様化が特徴となっております。
これは、若年層による県外往来者との接触や屋外バーベキューなど会食によるもの、マスクを外す場面での会話や屋内の不十分な換気などに要因があったものと考えられ、今後、更に感染力が強いとされるデルタ株の流行に備え、専門家の御意見もいただきながら、注意すべき点を分かりやすく情報提供してまいりたいと考えております。
今後とも、一人ひとりが対策の意味を理解し、行動に着実につながるよう、引き続き、県民の皆様をはじめ、事業者、行政が一丸となった取組を進めてまいります。
(2)集中対策期間中における県立施設の休館等について
次に、集中対策期間中における県立施設の休館等について、お伺いいたします。
この度の緊急事態宣言を受け、県では、特措法に基づき、民間の運動施設や博物館等に対して営業時間短縮を要請しました。
一方で、広島県対策本部の方針では,不特定多数の集客が見込まれる県立の屋内施設は原則「休館」、屋外施設は入場整理等を徹底した上で「開館」することが基本になっていました。
しかしながら、なぜか、自然公園や運動公園等の屋外施設では、この方針に沿わずに休業、または施設を一部使用休止としていました。
人流の抑制を図る観点から、県自らが範を示すことは理解できますが、県立施設が休館、休業などすることで、本来は時短営業ができた類似の民間施設が同調圧力により休館せざるをえず、また、指定管理と違って減収補填もない苦しい現状をどれだけご存じでしょうか。
結果として、休業したことによる指定管理者への減収補填の予算案がこの度提案されていますが、屋外施設に関しては、県対策本部の方針に沿って開業しておけば、この予算案は一定程度縮減できたのではないでしょうか。
ウィズコロナ時代にあっては、感染拡大防止対策を講じ、いかに休業を回避するかの範を示すのも県の役割ではないでしょうか。
そこで、緊急事態宣言下における県立施設を休館、休業することに伴う類似の民間施設への影響に対する認識をお伺いいたします。
また、県立の屋外施設について、県対策本部の方針に沿わずに休業等とした施設数と割合、その理由について併せてお伺いいたします。
【答弁】知事
この度の緊急事態宣言を受けた集中対策におきましては、人と人との接触機会を減らすため、県民の皆様に対する外出半減の要請とともに、飲食店の外、多数の方が利用する集客施設に対しても幅広く、休業や営業時間の短縮の要請を行ったところでございます。
こうした中で、行政も率先して人流の抑制に取り組む必要があることから、県所管の公の施設について、
・ 屋内施設の原則、休館、
・ 屋外施設では、感染防止対策の徹底と入場整理等による混雑回避
を基本としたところでございます。
また、施設の運営に当たりましては、感染防止対策に係る業種別のガイドラインを示し、その徹底をお願いしているところであり、そうした中で、民間の類似施設においても、同様に休業されたことにつきましては、各施設設置者の御判断により、感染拡大防止に御協力いただいたものと認識しております。
なお、県立の21ある屋外施設につきましては、統一的な対応として、
・ 密な状態での活動を伴うスポーツ施設や、宿泊や会食を伴うキャンプ施設 など、屋内施設に準ずる措置が必要となる一部のエリアを使用休止とする一方で、
・ 芝生広場や遊歩道などその他のエリアは利用可能
としていたところでございます。
県といたしましては、引き続き、感染の拡大を最小限に抑えながら、社会・経済活動を継続することを基本とし、感染拡大防止対策に取り組んでまいりたいと考えております。
終わりに
以上で質問を終わります。
ご清聴いただき、ありがとうございました。