平成28年9月定例会一般質問
答弁実録
1災害対策について
(1)6月東部豪雨災害への対応について
ア被害の復旧時期の見通しについて
イ被害の発生要因と対策について
(2)災害危険箇所及び避難場所・避難経路の周知について
2鞆地区の観光振興の今後の方向性について
3本県の観光施策の展開について
(1)せとうちDMOについて
(2)県内の観光振興について
4繊維産地等の将来を見据えた振興方策について
5備後イグサの再興について
6地方創生の実現について
自由民主党広島県議会議員連盟
出原昌直1
【前文】
みなさん、おはようございます。
自由民主党広島県議会議員連盟の出原昌直でございます。
今次定例会におきまして、初当選以来2回目の質問の機会を与えていただき、宇田議長をはじめ、先輩、同僚議員の皆様に、心より感謝を申し上げます。
昨年12月定例会において初質問をさせていただいてから9か月、広島県議会議員となってから1年半が経とうとしております。
この間、地域の皆様の声を伺い、また、先輩議員の皆様の御指導をいただきながら、頑張ってまいりました。
本日は、1年半のこれまでの経験に基づいて、質問を行ってまいりたいと思います。
本日は傍聴者も多数お越しをいただいております。
初質問では65名、今回は66名と1名増でございます。
着実に増えております。
執行部の皆様には、簡潔・明瞭な答弁をお願いをいたしまして、早速、最初の質問に入らせていただきます。2
1災害対策について
(1)6月東部豪雨災害への対応について
ア被害の復旧時期の見通しについて
質問の第1は、災害対策について、2点お伺いをいたします。
1点目は、6月東部豪雨災害への対応についてであります。
平成28年6月22日からの大雨により、私の地元、福山市においては、市内を流れる芦田川の支流を含む6つの河川が氾濫をし、市内全域で多くの家屋に浸水被害が発生をいたしました。
取りまとめによれば、家屋の被害は、床上浸水・床下浸水あわせて約300戸にのぼり、このうち芦田川の支流である猪子川では堤防が決壊をし、およそ17ヘクタールが浸水する事態となりました。
このほか市内では、土砂崩れによる県道の全面通行止めや、各地で道路が冠水をし、寸断されるなど、多数の被害が発生したほか、ため池の堤体の決壊をはじめ、農林水産関係でも大きな被害が発生をして、市民生活や経済活動に多大な影響が生じることとなりました。
こうした状況を踏まえ、県は、このたび、9月補正予算において、総額約48億円にのぼる事業費を計上し、被災した道路や河川、砂防、農地などの復旧に係る事業を実施をすることとされました。
災害の早期復旧に向けて、積極的な対応がなされたものと、評価をしております。
今後は、被災箇所に対し着実に復旧工事を進め、早期に事業効果を発現させることが求められており、引き続き、福山市をはじめとする関係市町と連携・協力して、対応を行っていただきたいと思います。
一方では、長年にわたる公共事業抑制の影響で事業者数が減少をしており、災害復旧事業が一斉にこなせるだけの余力は業界にはないのではないかと懸念をしております。
そこで、このたびの豪雨に伴う、河川や道路などの公共土木施設災害及び農林水産関係の被害について、今後、復旧時期をどのように見通しているのか、知事にお伺いをいたします。3
【答】土木建築局長
今年6月の豪雨等に伴う災害では、県東部を中心に、河川、道路などの公共土木施設災害や農地・農業用施設などの被害が多数発生し、それらへの対応に必要な約48億円を9月補正予算として提案させていただいたところです。
主要地方道福山沼隈線や一級河川猪之子川など、緊急的な対応が必要な箇所につきましては、既に応急復旧工事を完了いたしました。
また、本格的な災害復旧工事につきましては、早期完了に向けて、順次発注手続きを進めており、特に住民の生活に重大な影響を及ぼす箇所につきましては、来年出水期までに完了することとしております。
なお、災害復旧工事の発注に当たりましては、一時期に工事発注が集中することから、近接する複数工事の一括発注により発注件数を抑えるとともに、建設事業者が受注計画を立てやすいよう10月に工事の発注見通しを公表するなど、円滑な工事発注に向けて、様々な取り組みを実施してまいります。4
1災害対策について
(1)6月東部豪雨災害への対応について
イ被害の発生要因と対策について
当面の災害復旧については、このたびの補正予算により一定の見通しが立ったと思いますが、住民の皆さまの安全・安心を将来にわたって確保していくという観点からすれば、この度の災害の発生要因を的確に把握・分析した上で、再発防止策を確実に講じる必要があることは言うまでもありません。
そして、我が会派の下森議員、上田議員から質問がありました河川の堆積土等の問題は、広く県内各地で共通する喫緊の課題であります。
私も市内各地の皆様から、「近所の川に土砂が溜まっていて、いつ氾濫するか分からないと思いながら暮らしているが、実際に6月に氾濫が起こって、ますます不安である」とお聞きをしています。
県が対策を強化すると4月に発表し、今月の新聞でも報道され、地域の方々の期待は高まっており、一刻も早い事業開始が望まれるところですが、このたびの豪雨災害についても、的確な対策を講じて、住民の不安解消に努めていただきたいと思います。
そこで、豪雨に伴って発生した様々な被害、とりわけ、瀬戸川流域における浸水や、福山市内に2千か所以上ある農業用ため池の1つが破堤したことについて、発生要因をどのように捉えており、同様の災害の再発を防ぐために、今後どのような対策が必要であると考えているのか、知事にお伺いをいたします。5
【答】知事
6月の豪雨災害につきましては、福山観測所において6月としては観測史上1位の時間雨量となるなど、記録的な豪雨により、県東部地域を中心に浸水や土砂崩れ、山腹崩壊などによる被害が発生いたしました。
特に甚大な被害のありました福山市の瀬戸川流域につきましては、再度災害の防止を図るため、学識経験者等からなる治水対策検討会を設置し、具体的な検討を進めているところでございます。
浸水被害の発生要因といたしましては、記録的な豪雨に伴いまして、河川の流下能力を超える水位の上昇や、内水の氾濫が起こったものでございます。
このため、当面の対策といたしまして、瀬戸川の河道掘削を行って6月と同規模の降雨に対する河川の流下能力を確保することや、福川への水位計設置による避難誘導体制の強化などについて早急に着手してまいります。
あわせて、抜本的な対策として、河川整備計画に基づきます河川改修や排水機場の着実な整備に取り組むこととしております。
一方、ため池破堤の発生要因といたしましては、豪雨による急激な水位上昇に伴いまして、放水路から流下する際に跳ね上がった水が、土の部分の堤体を浸食いたしまして、それが、決壊に至ったものと考えております。
このため、梅雨や台風時期の前には、ため池管理者に対し、水位を下げるということ、また、漏水や異常箇所の有無の確認などにつきまして、引き続き、周知徹底するとともに、危険と判断されましたため池につきましては、ため池管理者、市町と連携して、早期の改修に取り組んでまいります。
今後とも関係機関と連携して、こうした取り組みを進めることによりまして、住民の方々の安全・安心の確保に努めてまいります。6
1災害対策について
(2)災害危険箇所及び避難場所・避難経路の周知について
質問の2点目は、災害危険箇所及び避難場所・避難経路の周知についてであります。
梅雨入り前となる6月8日、地元新市町で地域の皆さまを対象にした防災講演会を開催をいたしました。
土砂災害・防災研究の第一人者である、広島大学の海堀教授をお招きをし、御講演をいただくことを通じて、土砂災害についての理解を深め、県民の皆様の防災力向上を目指して実施したものでございます。
その中で海堀先生からは、広島県のハザードマップは早くから作成・公開が進んでおり、その精度も高いものができている、とのお話があり、全国でもいち早く平成14年には各世帯へ配付だけでなくネットでの閲覧もできる体制が整っていたとのことでした。
また、平成26年8月の広島市における土砂災害を踏まえて、県は土砂災害警戒区域等の指定を加速をさせていますが、それをどう住民に周知していくかが大事であるとのお話があり、強く同感をいたしました。
6月の県東部における豪雨でも、これまでに経験のない地域が被災をしており、いつどこで起こるか分からない災害に備えるためには、危険箇所等の周知徹底が必要であると改めて痛感をしたところです。
県は、住民の方々へ「土砂災害警戒区域等」の具体的な周知について、基礎調査が終了した段階で速やかに結果を公表するとともに、指定に関して、県・市町が同席して地元説明会を開催をしているほか、市町に対しては、区域指定の前後にかかわらず土砂災害に関するハザードマップを作成・公表し、基礎調査結果を住民へ周知をすることや、避難計画の早期策定などを要請していると伺っております。
また、今年度からは新たに、「みんなで減災」県民総ぐるみ運動をさらに浸透をさせるために、県内企業にも協力をお願いし、従業員とその御家族に対して「住んでいる場所の危険箇所や、避難場所・避難経路の確認」をしていただくという取り組みを進めています。
「災害死をゼロにする」という目標の達成に向けた、こうした県の取り組みは、もちろん評価をしておりますが、地域の皆さまの声を聴くと、ハザードマップや指定された避難場所などについて、「知らない」とおっしゃる方々が、まだまだ多くおられます。
県民総ぐるみ運動では、すべての県民が「身の回りの災害危険箇所等を知る」という目標を立てて、様々な取り組みに相当な力をかけているはずですが、昨年4月に運動がスタートしてから1年半、住民への浸透が十分とは実感をされていません。
避難場所や避難経路を把握している県民の割合を平成32年に60%にする目標を置いていますが、いつどこで起こるか分からない災害による死亡者ゼロを目指すからには、一刻も早く100%を目指すべきであり、もちろん我々議員としても取り組むべきではありますが、県としても、抜本的に対策を見直して取り組む必要があると考えます。
さらに、災害危険箇所等の情報はホームページで提供されていますが、災害弱者と言われる高齢者に、これらの情報は確実に届いているのでしょうか。
そこで、ハザードマップをはじめ、災害危険箇所及び避難場所・避難経路の県民への周知について、いつ起こるか分からない災害へ備えるという観点から一刻も早く住民ひとり一人へ浸透を徹底するため、今後、どのように取り組んでいくのか、知事にお伺いをいたします。7
【答】危機管理監
県民の皆様に、災害から命を守るための適切な行動をとっていただくためには、身の周りの危険性や、避難場所・避難経路を知っていただくことが極めて重要であり、昨年4月から、「知る」取り組みを集中的に進めているところでございます。
こうした中、昨年10月の県民意識調査では、災害種別ごとに避難場所や避難経路を確認している人の割合は27%で、確認していない人のその理由の多くは、「確認の方法が分からないから」ということでございました。
そうした調査結果も踏まえ、「知る」取り組みを加速化していくため、
・全県民を対象とした一斉防災教室の継続的な実施
・ハザードマップや避難場所の確認も容易に行うことができるポータルサイト「広島県『みんなで減災』はじめの一歩」による情報提供
・普段、防災情報に触れる機会の少ない高齢者などに対する、テレビ等の報道機関と連携した広報
などに努めているほか、地域においては、自主防災組織における防災教室の実施等にも取り組んでいるところでございます。
さらに、本年度からは、県内企業を直接訪問し、従業員とその御家族に、避難場所の確認などを実践していただくよう、働きかけを行っているところであり、これまで訪問した60社以上において、積極的に取り組んでいただいているところでございます。
今後とも、本年8月に実施し、現在、集計している県民意識調査の結果をしっかり分析した上で、取り組みの優先順位の見直しや、新たな取り組みの検討などを行い、県民一人一人へ広島県「みんなで減災」県民総ぐるみ運動が着実に浸透していくよう、取り組んでまいります。8
2鞆地区の観光振興の今後の方向性について
質問の第2は、鞆地区の観光振興の今後の方向性についてお伺いをいたします。
鞆地区振興推進については、今年度の当初予算において総額12億円を超える事業費が計上され、町中の交通対策や防災対策などに取り組むこととされております。
また、昨年度においても、鞆地区のまちづくりを進めるための市の基金に5億円を拠出しているなど、鞆地区の再生・活性化という課題は「待ったなし」の状況であるとの認識に基づいて、福山市と連携・協力して、地元の意見も汲みながら、取り組みが進んでいるものと受け止めております。
そうした中で現在、福山市においては、鞆のまちづくりの課題の解決に向けて、新しい枠組みで住民の皆様と議論を始めており、来年度には鞆町の「まちづくりビジョン」の取りまとめを目指しています。
一方で、県と福山市は、鞆の浦の価値ある資産を活用して、観光振興を進めていくこととしており、せとうちDMOが進める「海の道」広域観光ルートでも、主要な観光資源に位置付けられております。
しかしながら鞆地区は、古くからの住民の方々の日常生活の場そのままが維持されてきたことから、観光地としてのインフラ整備が十分整っていないのが実情であり、そうした所に、やみくもに観光客が押し寄せるようなプロモーションを仕掛けるだけでは、観光客数や消費額は向上をするかもしれませんが、せっかく訪れた観光客の満足度や住民生活に、悪影響が生じるのではないかと懸念をしております。
そうならないためには、福山市と連携・協力して住民の意見を聞きながら、前回の質問でも指摘をしたように、重要伝統的建造物群保存地区の選定を目指し、歴史的港湾都市としての地域の将来像についてしっかりと共有を図り、その下で、交通対策や防災対策などのまちづくりと調和のとれた形で観光施策を推進していく必要があると思います。
そこで、鞆地区の観光振興の今後の方向性について、福山市との連携・協力の下、どのように進めていくのか、知事にお伺いをいたします。9
【答】知事
鞆地区につきましては、風光明媚な景観や旧跡・神社仏閣、歴史的な町並みを有しておりまして、本県の東部地域を代表する観光地であり、鞆地区を来訪する観光客は増加しているところでございますが、現状では観光地としての受入環境は必ずしも十分でないと考えております。
こうした受入環境の整備は、地域のまちづくりと密接に関連するものであることから、住民生活との調和にも配慮しながら、進めていくことが重要でございます。
このため、福山市が住民の皆様と協議を進められております「まちづくりビジョン」を踏まえつつ、鞆地区の歴史的な町並み等の保全・活用に、引き続き、福山市と連携して取り組んでいくとともに、現在、県が進めております、
・「町中の交通処理対策」や
・「防災対策」
等の事業の着実な推進を図りながら、トンネル案を含む県の方針につきましても、適切な時期に住民の皆様へ説明を行い、御理解いただくよう、取り組んでまいります。
県といたしましては、こうした取り組みとあわせて、鞆地区における観光振興の方向性についても、住民の皆様と共有を図るとともに、鞆地区の暮らしと歴史及び伝統を守りながら、観光地としての魅力が高まるよう福山市とも連携・協力して観光振興に取り組んでまいります。10
3本県の観光施策の展開について
(1)せとうちDMOについて
質問の第3は、本県の観光施策の展開について、2点お伺いいたします。
まず、1点目は、せとうちDMOについてであります。
せとうちDMOは、マーケティング、プロモーションを策定実行する「一般社団法人せとうち観光推進機構」と、『せとうち観光活性化ファンド』を活用してプロダクト開発支援を行う「株式会社瀬戸内ブランドコーポレーション」で構成をされ、瀬戸内が有する幅広い観光資源を最大限活用しながら、多様な関係者とともに情報発信・プロモーション、効果的なマーケティング、戦略策定などを行い、世界レベルの観光地経営を目指していく組織として創設をされました。
瀬戸内海を、観光資源として一体的に捉え、魅力を打ち出していくという考え方自体は、国立公園に指定された当時からあったものと思いますが、地域が一丸となって取り組む体制は、これまで実現してこなかったと思います。
そうした中で湯崎知事は、「瀬戸内海の道構想」を具体化する「せとうちDMO」の設立を実現され、同じ瀬戸内海に臨むとはいえ、属する地域ブロックや経済圏が異なることから、政策の方向性も様々である7県を取りまとめ、目指す姿を一つにし、こうしたステージまで到達をされたことは、ひとえに、知事のリーダーシップあればこそであったものと考えております。
せとうちDMOでは、平成32年に到達すべき具体的な数字として7項目からなる指標を掲げており、「外国人観光入込客」は180万人、「外国人の延べ宿泊数」は360万人泊、「外国人観光消費額」は1210億円、「来訪者満足度」と「住民満足度」を共に90%に引き上げ、この地域を訪れたいという「来訪意向度」と「リピート率」を50%にするという目標を定めています。
しかしながら、設立されて以降この半年、DMOの動きは具体的なものが見えてこないままであり、5年後の目標達成に向けた具体的な道筋や取り組みも、明確にはなっておりません。
表だって見えているのは、先般報道もされましたクルーズ船事業に対する支援や、英国の旅行会社に対するプロモーションぐらいではないでしょうか。
具体的に取り組むことが見えてこない今の状況は、ビジネスチャンスを掴もうとする事業者にとって、参入する手がかりが見いだせない状況となっており、プロモーションの不足感は否めません。
そこで、設立されてからの半年、せとうちDMOにおいて、どのような取り組みを行ってきたのか、また、例えば、宿泊数360万人という目標達成に向けて課題となる受け入れ体制の充実への対応など、DMOが掲げた7項目の目標達成に向けて、今後どのように取り組みを進めていこうとしているのか、知事にお伺いをいたします。11
【答】商工労働局長
一般社団法人せとうち観光推進機構と株式会社瀬戸内ブランドコーポレーションからなりますせとうちDMOは、瀬戸内ブランドの確立を通じた交流人口の拡大によります地域産業の活性化を図るため、マーケティングによる戦略に基づき、戦略的プロモーションやプロダクト開発支援などの取り組みを進めていくことといたしております。
これまでの間、プロモーションにつきましては、自社メディア「瀬戸内ファインダー」や地元メディアによる情報発信を行いますとともに、
・台湾やフランスの旅行博などへの出展
・英語圏富裕層マーケットに実績を持ちグローバルに事業展開する旅行会社の招へいなど、誘客ターゲットに応じた形で実施してまいっているところでございます。
また、「せとうち観光活性化ファンド」を活用いたしました新規クルーズ船事業への支援などプロダクト開発支援を行いますとともに、しまなみ海道エリアをはじめといたします広域観光周遊ルートの各拠点地区における二次交通や多言語化など受入環境の整備に向けた取り組みの支援などを始めているところでございます。
今後は、こうした取り組みを一層推進いたしますとともに、まずは広域観光周遊ルート「せとうち・海の道」の形成促進に向けまして、海外のDMOの手法を参考にしたマーケティングやプロモーションの機能強化に取り組んでいくことといたしております。
また、瀬戸内らしいプロダクト開発に向けては、
・企業間交流の促進によりますプロダクト開発へ参画する企業の掘り起し
・クルーズ、サイクリングなどテーマに応じ部会を通じた参画企業の事業化支援
などにも取り組むこととしております。
さらに、受入体制の強化に向けまして、自治体、民間事業者、地域住民など観光地づくりに携わる様々な主体の取り組みをサポートする機能の強化などに取り組んでいくことといたしております。
県といたしましても、関係県やせとうちDMOと一層の連携を図り、これらの取り組みを加速させることによりまして、外国人観光客や観光消費額などを増加させ、「瀬戸内海の道構想」の実現を目指してまいりたいと考えております。12
3本県の観光施策の展開について
(2)県内の観光振興について
2点目は、県内の観光振興についてであります。
DMOが設立され、せとうち観光の推進母体ができましたが、県では観光課で観光振興に取り組んでおり、DMOと観光課それぞれでやろうとしていること、あるいは棲み分けや連携をどう図っていくのかといった戦略が、どうも今一つハッキリと見えないと感じております。
県として、観光を1つの基幹産業として立脚させていくためには、県内の周遊という視点から施策を打つ必要があると思いますが、一方ではDMOにおいて瀬戸内海沿岸の周遊を目的とした取り組みも推進しており、どちらにどうウェイトを置いていくのでしょうか。
DMOと県観光課が対象地域で分担しているといったことであれば分かりやすいのかもしれませんが、2つの組織の取り組みの方向性や考え方が不明確で、県の観光施策の全体像を分かりにくい印象にしていると思います。
また、観光消費額の増加を図るためには、広島県に入ってきた観光客を、いかに県内で滞在をしてもらうかが大事ではないかと考えております。
我が県が誇る2つの世界遺産は、既に観光資源として知名度も高く、誘客効果も大きいことから、本県として取り組むべきは、これらに続く観光資源の掘り起こしであります。
これまでも定例会で重ねて指摘されてきたところではありますが、改めて、取り組みの状況についてお示しいただきたいと思います。
そこで、観光客の県内周遊の増加に向けた各地域における魅力ある観光地づくりの戦略をどのように描いているのか、併せて、せとうち観光推進機構と県観光課の棲み分けをどう考えており、それをどう分かりやすく県民や事業者に示していくのか、知事にお伺いをいたします。13
【答】商工労働局長
観光振興におきましては、各観光地の周遊促進により滞在時間を延ばし、観光消費額の増加につなげていくことが重要でございまして、そのためには、観光資源そのものをブラッシュアップし、周遊の拠点となる観光地を育成していくことが必要でございます。
このため、県におきましては、旅行の第一目的地や周遊の拠点となる魅力ある観光地を形成するため、
・瀬戸内の多島美や中国山地の自然・景観、
・神楽、鵜飼などの伝統文化や、歴史的町並み
など、県内の豊富で多彩な観光資源を市町それから地元関係者等と一体となってブラッシュアップするとともに、これらを特色あるストーリーで結びつけ、効果的に情報発信することで、より広域的な周遊を促進し、滞在時間の延長と観光消費額の増加につなげてまいりたいと考えております。
せとうちDMOとの関係におきましては、せとうちDMOは、まずは広域観光周遊ルート「せとうち・海の道」の形成に向けまして、マーケティングに基づく戦略を策定し、統一的なブランディングによるプロモーションやプロダクト開発支援などの取り組みを進め、国内外から誘客を図りますとともに、瀬戸内地域での広域的な周遊を推進することといたしております。
一方、県におきましては、せとうちDMOの取り組みの効果を県内全域へ波及させるため、ルート上の拠点地区をはじめといたします県内各地の観光資源のブラッシュアップや受入体制の整備などの取り組みを進めているところでございまして、双方の取り組みが連携することにより、相乗効果を発揮してまいりたいと考えております。
こうしたせとうちDMOと県の連携いたしました取り組みにつきましては、ホームページやメディアなどを通じまして広く県民の皆様に情報発信いたしますとともに、会議等を通じまして関係団体や事業者の方々へ情報提供するよう努めてまいりたいと考えております。14
4繊維産地等の将来を見据えた振興方策について
質問の第4は繊維産地等の将来を見据えた振興方策についてお伺いをいたします。
福山市の北部地区は、古くから縫製業が盛んであり、繊維の町として栄えてきましたが、現在では、縫製の現場は海外実習生に頼っている現状にあります。
その理由を、人件費の問題であると誤解をされている向きもあるようですが、実際には、3年間確実に働いてくれることが経営の安定につながること、また、祖国で技術習得して来日するので即戦力であること、この2点が理由なのであります。
ところが今や、頼りすぎた結果として日本人の若者の就業者が少なく、実習生は3年経てば手に付けた技術ごと帰国してしまうため、その結果、現場で継承されるべき技術が残らず、産地として立ち行かなくなる事態に直面をしています。
そうした中で最近、業界全体の将来が立ち行かなくなるという余りに大きい危機感のために、地元の縫製業者の中からは、各社お互いに競争する関係ながらも、共に産地を維持していくために何ができるかを考えていこうと、勉強会を始めるというたいへん嬉しい動きが出てきております。
民間事業者は、互いに厳しい競争環境の中で生き残りや発展をかけて経営を行っていますが、民間の競争原理に任せた結果、いわば淘汰されてしまったと言えるのが、今、伝統産業と言われている、備後畳表や備後絣であります。
これらは、県東部の繊維産業が近い将来に直面しかねない例を示しており、もはや伝統産業化する前に手を打つべき、待ったなしの状況にあります。
先般、かばんの産地で有名な豊岡市を視察をしてきましたが、そこはかつて、県東部の繊維産地と同じ問題、すなわち職人や鞄産業従事者の減少・高齢化が進むと同時に、まちの人口減少への対策も迫られているという課題に直面していました。
そこで豊岡市は、官民によるまちづくり株式会社を立上げ、地場産業のブランド化を進めることにより、人の流れや消費を生み出し、地場産業に携わる若者を着実に呼び寄せ育成することを通じて「かばんを核にしたまちづくり」を目指し、まち全体として産地を残そうとする機運が醸成をされ、地域の活力がよみがえりつつあるとのことでした。
繊維産業に従事する人材の確保という課題、この産業を将来にわたって維持していくという課題に対する、県の覚悟が問われていると思います。
地元において既に自主的に、産地・地域の将来を考えていこうという動きが立ち上がっている中、県も福山市と連携して、繊維産業の産地維持・技術継承に向けた後継者の確保・育成と、まちの活性化に向けた、知恵を絞っていただきたいと考えます。
そこで、繊維の産地をはじめ、県内の地場産業の将来を見据えた振興方策について、どのように取り組むべきと考えているのか、知事の御所見をお伺いをいたします。15
【答】知事
県東部地域は、織布や染色、アパレル業等繊維の産地として、古くから繊維産業が発展し、これまで、地域の雇用を守り、地域経済の発展を支えてきたところでございます。
しかしながら、繊維産業など地場産業を取り巻く環境は、
・生活様式の変化に伴います市場の縮小や
・安価な海外製品の流入などによる売上の減少
・職人の高齢化や後継者不足による技術継承の危機
など、厳しい状況にあり、さらに、今後、人口減少に伴う国内市場の一層の縮小など、より一層、厳しい状況も想定されるところでございます。
こうした中で、本県の地場産業を担う県内中小企業が、将来にわたって成長していくためには、イノベーションを生みながら、
・時代のニーズにあった新商品開発や海外を含めた新たな市場の獲得
・新分野・新事業への展開による新たな市場の創出
・産業を担う人材の確保や技術・技能の継承
などが重要であると考えております。
こうしたことに対応するため、県では、
・マーケティングから新たな市場獲得までそれぞれの専門家がチームを組んで一貫してサポートを行います、我々チーム型支援と呼んでいる支援、あるいは、
・「イノベーションインストラクター塾」による、企業の日々の業務改善と中長期的な成長をともに指導できる人材の育成、あるいは、
・イノベーションの創出やグローバル化に対応した人材の育成確保
・また東部工業技術センターによる技術相談への対応などに取り組んでいるところでございます。
そうした中で、繊維産業につきましては、
・チーム型支援を活用して、ムダや不備を見つける生産管理手法の導入によって、生産性を向上させた事例や
・インストラクター塾に参加をしていただきまして、品質管理や製造管理を現場で牽引する人材に育った事例
などの具体的な成果も出てきているところでございます。
今後とも、繊維産業を始めとする地場産業を担う県内中小企業の様々な取り組みを地元自治体とも連携しながら、しっかりと支援することによって、県内地場産業の振興を図ってまいりたいと考えております。16
5備後イグサの再興について
質問の第5は、備後イグサの再興についてお伺いいたします。
備後地方は、古くから畳表の生産が盛んで、「備後畳表」は安土桃山時代の武将から現代の迎賓館まで、畳表の最高級品として納められており、原料であるイグサの栽培も600年の歴史を持っていますが、現在、福山市内では、わずか1.3ヘクタールが栽培されるのみとなっています。
こうした中で、県東部の特産で備後畳表の原料となるイグサに関して、備後の貴重な文化である地域の伝統産業を引き継いでいこうと、イグサの栽培や畳表を織る技術を若い世代に伝承し、絶やさず後世へ継承するため、伝統的な技法を受け継ぐ活動を地域と共に行い、普及・振興させることを目的とした取り組みが始まっております。
これまでに、イグサの栽培の体験会などのワークショップを実現してきたほか、最近では、自ら栽培したイグサを用いたアクセサリー作りなど、ワークショップの活動の幅も広がりを見せ、今後は地元や京都のデザイナーとの協働による商品化も予定をされているなど、畳表の原料としての復活にとどまらず、栽培から新たな製品・プロダクトの開発・発売までを行おうという、イグサを次の世代へ繋いでいく取り組みへと発展をしつつあります。
また、教育現場においても、地元高等学校で、後継者不足に悩む備後畳表の600年にわたる歴史を途絶えさせまいと、古くは安土城にも用いられ信長や家康に愛用されたという輝かしい歴史を学びながら、原料となるイグサの栽培にも乗り出し、生徒たちは、備後畳表の歴史と技術の継承をするという使命感を抱いているとのことです。
伝統産業であるイグサの継承を図っていこうという取り組みは、県東部において数十年先には他の産業でも伝統産業化する恐れがあるという危機感を持つ中で、今後、必ず役立つ知恵であり、この動きを途絶えさせてはならないと強く感じております。
そこで、イグサ栽培や畳表を織る技術の若い世代への継承など、備後イグサの再興に向けた様々な取り組みについて、県としてどう支えていくのか、知事にお伺いをいたします。17
【答】農林水産局長
県東部地域で古くから生産されてきました「備後畳表」につきましては、独特の色を出すための泥染めや、材料を厳選した丹念な手織りなどを一貫して行うことにより、高級な伝統工芸品として評価されているところでございます。
「備後畳表」は、手作業を中心にこうした伝統技術により品質最優先で生産・加工されてきましたが、生産者の高齢化などにより労働力の確保が難しく、本県のいぐさの作付面積は、現在2ヘクタールまで減少しております。
また、国内のいぐさの生産につきましても、生活様式の洋風化や、安価な中国産畳表の輸入量増加により、国産畳表の需要や価格が低迷し、全国の作付面積は、10年間で約4割に減少している状況にございます。
再び備後いぐさの生産を拡大するためには、新たな需要の確保が必要であり、また、移植機や収穫機などいぐさ専用の高価な機械の購入や、畳表を織る技術の習得なども必要であるため、生産から加工を行う担い手の確保が課題であると認識いたしております。
こうした中、地域が誇る伝統産業の「備後畳表」を途絶えさせないためには、県といたしましても、学校教育やものづくりの振興に携わる関係部局と連携し、その魅力や歴史を若い世代に継承できるよう対応してまいりたいと考えております。18
6地方創生の実現について
質問の第6は、地方創生の実現について、お伺いをいたします。
県の人口移動統計調査によれば、近年、本県からの転出超過数は、平成25年の4,202人を底に改善を続けており、昨年は265人にまで減少して、いわゆる「社会減」の解消も目前に見えています。
一方で、「就職」による転出超過は、平成25年に1,362人だったのが、26年は1,458人、27年には1,741人と加速をしております。
地方創生が打ち出された一昨年12月以降、本県でも関係する施策を強化し、例えば定住促進では、移住希望地ランキングが上位にアップをいたしましたが、東京一極集中の打破は、依然、高い壁のようです。
県内へ本社などを移転させる企業へ、転勤してくる社員と家族の人数に応じて助成する制度は、「都道府県初」ということで、今年2月に報道されましたが、まだ実績は上がっておらず、一過性の移住対策でもあるとも感じられます。
また、国による地方創生の掛け声に応じて、全国各地で似通った事業が行われていく今の状況は、果たして地方創生の実現につながるものと言えるのでしょうか。
私は、地方創生の4文字に魂を込めるためには、各地域に根差した特徴ある施策を立案をしていくこと、すなわち、地域における資産や宝あるいは課題を見極めて、どう掘り起こしていくかを考えていくことが必要であると強く思っています。
施策効果を測るための客観的指標や毎年の評価も、進行管理と改善のためには欠かすことはできませんが、そういったテクニカルなマネジメントはあくまで手段に過ぎません。
地方創生は、5年間の計画期間だけのものではないはずであり、そうであるならば、真に地方創生が目指すべきものは何であり、その実現に向けて、地域が必要としている施策を正しく立案するためには何を行うべきなのか、いま一度、深く考えるべきではないでしょうか。
我々議員は、土日ともなれば地域の催しに参加させていただく機会が数多くありますので、できる限り伺っておりますが、それは、議員となり、そうした催しに伺う際に、地域課題の把握はもとより、地域の方々の想いを肌で感じることのできる場でもあると分かったからであります。
先ほど、鞆の浦に関する質問を述べましたが、その鞆の浦では、地域の祭りや催しに、県の東部建設事務所をはじめ多くの職員の皆様が参加をされており、地域の住民の方々も嬉しく受け止めておられるとお聞きをするとともに、職員の方からは、「地域の声を聴く機会となっている」とお聞きをしています。
真に地域が必要としていることを掘り起こすためには、常に地域と接点を持ち、触れ合っていく必要があるはずで、実際、他県では、平成の大合併を期に住民・地域・市町との距離が遠くならないよう、数十名の常勤職員を役場や公民館に駐在させる仕組みを導入をした例もあると聞いております。
地域の動きを肌で感じられるぐらい深く地域に入って始めて出るアイデアこそが、地方創19
生になると確信をしています。
私もUターンをした一人でありますけれども、自分自身を振り返ると、故郷での友達や近所の方々との触れ合い、行事の一つ一つの思い出が、地域愛へとつながったように思います。
先人たちのたゆまぬ歩みを経て受け継がれ、こうして今、残していただいている広島県、そして各地域の資産に心より感謝をし、その上で一歩踏み出していくことこそが、心の通った地方創生に繋がっていくと強く思っております。
そこで、この2年間の県における地方創生の取り組みについて、どのように評価をしているのか、また、地域毎の資産や宝あるいは課題を見極めて掘り起こし、地域に根差した施策として立案をし、広島県ならではの地方創生を図るためには、どのような仕組みを実現すべきと考えているのか、知事にお伺いいたします。20
【答】知事
国におきましては、平成26年に、まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立などに向けて、総合戦略を策定したところですが、本県では、これに先んじて、人口減少問題を克服するために、平成22年に策定いたしました「ひろしま未来チャレンジビジョン」で、「新たな経済成長」、「人づくり」、「安心な暮らしづくり」、「豊かな地域づくり」という4つの分野の政策を相互に連関させて展開し、相乗効果をもたらしながら好循環する流れを創り出してまいりました。
これまでの取り組みによりまして、
・総観光客数や観光消費額が4年連続で過去最高を更新、
・ひろしま創業サポートセンターを利用した約1,000件の新たな創業、
・企業立地の進展等による4,000人を超える新規雇用、
・有効求人倍率が1.6倍台へ改善、
・一人当たりの県民所得が300万円台に回復、
・合計特殊出生率が1.5台で全国平均を大きく上回って推移、
・県外からの移住世帯数も増加する
など、様々な成果や変化が現れてきております。
しかしながら、依然として、就学や就職を契機とする東京圏や近畿圏などの大都市圏への人口移動など、若年層の転出超過が続いていることから、御指摘のように、今後も、引き続き、更なる成果が出せるよう、人口の社会減対策に集中的に取り組み、若者を含めた多様な人材の集積を図る必要があると認識しております。
また、この地方創生を実効あるものとするためには、国において、東京一極集中の是正という日本全体の構造的な問題を変えていくとともに、地方においては、それぞれの地域が直面している課題を踏まえて、創意工夫に満ちた、魅力ある地域づくりに取り組むことが重要であると考えております。
県政運営に当たりましては、地域の実情に即した施策の推進のため、「県民起点」や「現場主義」などの三つの視座を徹底することとしており、私自身も知事に就任して以来、県内各地域で「地域の宝チャレンジ・トーク」などを開催して、地域で活躍されている方々から、自らの夢を実現する素晴らしい発表のほか、地域の実情や御意見をお聞きしております。
加えまして、来年3月からスタートする「ひろしまさとやま未来博2017」に向けて、地域づくりに取り組まれる皆様の多様な活動を後押しするココロザシ応援プロジェクトの募集に際して、中山間地域を有する全19市町に職員が出向いて、御意見をお伺いしているところでございます。
今後も、引き続き、私も含め、職員が、直接現場に出向き、このような場を通じて、皆様から寄せられた御意見や、積極的なアイデアなどを参考に、地域の宝や課題を掘り起すとともに、市町とも連携しながら地域に根差した取り組みを進めることによって、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環の確立と、その好循環を支える「まち」づくりなど、魅力ある広島県を目指してまいりたいと考えております。21
【まとめ】
以上で質問を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。