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令和7年6月定例会 一 般 質 問 答弁実録

令和7年6月定例会
一 般 質 問
《6月26日(木)3番手》

1 日本トップ3の観光県に向けて目指す街の姿について【知事】
2 宿泊税の使途と今後の予定について
3 県全域への周遊観光の現状と市町による周遊促進について
【知事】
4 せとうちDMOによる周遊観光の促進について
(1)せとうちDMOの役割や収益構造について【知事】
(2)NFTを活用した観光振興策について
5 観光拠点づくりによる広島県版地方創生について
(1)スポーツ観戦からの県内周遊について
(2)23市町における観光拠点づくりへの支援について【知事】

自由民主党広島県議会議員連盟
出 原 昌 直

はじめに

皆さん、こんにちは。
自由民主党広島県議会議員連盟、福山市選出の出原昌直でございます。
今次定例会、最終の質問者となります。
質問の機会を与えていただいた中本議長、沖井副議長をはじめ、先輩、同僚議員の皆様に、心から感謝を申し上げます。
16年前、知事はマニュフェストに「瀬戸内・海の道1兆円構想」を掲げて、知事当選後は「瀬戸内 海の道構想」を事業化をし観光振興に取り組んできた結果、2023年の本県観光消費額は4,726億円まで増加をしています。
さらに、安心 誇り 挑戦 ひろしまビジョンにおいて、2030年には観光消費額8,000億円を目指して様々な観光振興策に取り組んでいます。
観光消費額8,000億円のインパクトですが、令和7年3月に広島県が公表した、令和4年度広島県県民経済計算結果では、実質県内総生産12兆2,306億円のうち、県の主要産業である自動車等の輸送用機械が9,963億円でしたので、県の主要産業に匹敵する規模となります。本県にとって、いかに観光産業が重要な産業かが分かります。
13年前、私は民間の立場でしたが、海の道1兆円構想に共感をして、2012年に地元の先輩や同級生、後輩と観光事業をスタートいたしました。
特にものづくり産業の工場が海外移転する中で日本、広島県の雇用を創出できる、雇用を支える1つの手段として「観光を手段に事業と雇用を創出をする」という目的で様々な事業を展開をいたしました。
その後、私自身も県議会議員になり、
・民間の立場での観光事業と、
・議員の立場での観光行政に携わる中で、
色々な地域、街の中で対話を重ねてきましたが、生活環境への影響や地域経済への不公平感、合意形成の不備等から、観光というのは地域になかなか受け入れられない現実も体感をいたしました。当初は地域の事業と雇用を創出するために観光事業を進めましたが、6年ほど事業を展開して、振り返ると、本当にこれが地域のためになっているのか、自問自答し反省する時期があり、そのタイミングで、会社の目的自体を「まちが失ってはいけないものを事業を通して表現し、せとうちの未来を育てる」に変更し、再スタートを切りました。
そこから、そもそも観光とはどういうことなのか、考えさせられるようになり、観光庁の「住んでよし、訪れてよし。」という理念に触れたときに、「観光とは、まさにこれだ」と思いました。
まずは、住んでいる人たちに良い街づくり、「住んでよし」が先にあること、そして、その次に、「訪れてよし」であれば、間違いなく地域にも観光が受け入れられます。
観光庁の試算では、定住人口1人当たりの年間消費額と同等の経済効果が、日本人の宿泊客だと23人分、インバウンドだと8人分で得られます。広島県でも人口減少、転出超過が課題になっていますが、観光産業の育成により、雇用や関係人口も増加をし、人口減少対策にも寄与します。
私は県議会議員になった当初は、観光に特化した質問をしてきましたが、地域の中で観光が受け入れられていない現状もあり、観光関係の質問は徐々に減少していきました。
今回、11回目の一般質問に当たり、改めて、「住んでよし、訪れてよし」の観光を推進できるように、観光関係に特化して質問をしたいと思いますので、知事をはじめ、執行部におかれましては、簡潔かつ明瞭な答弁をお願いして、質問に入ります。
(1,369字)

1 日本トップ3の観光県に向けて目指す街の姿について
質問の第1は、日本トップ3の観光県に向けて目指す街の姿について、お伺いいたします。
今年の4月に、県は関係者とともに「世界トップ10・日本トップ3の観光県を目指す事業構想プロジェクト研究」の発足を大々的に発表をしました。
この「世界トップ10・日本トップ3の観光県を目指す」という宣言自体は、「海の道1兆円構想」にも通じる、将来を見据えた大変意欲的なフレーズだと思います。
先ほども申しましたが、広島県は安心 誇り 挑戦 ひろしまビジョンで、5年後の観光消費額8,000億円を目標に掲げています。
さらに、日本トップ3の観光県ということは、北海道や沖縄と同等かそれ以上の観光客を受け入れるということなので、具体的に何をどう実現するのか、例えばいつまでに観光消費額をどこまで引き上げて実現をさせるのか、十分な説明が必要になります。
5年後の観光消費額8,000億円、更には日本トップ3の観光県が実現するには、相当な数のインバウンド、国内観光客が広島に来ることになりますが、県はそうなった時の街の姿を示せておらず、住民の生活を犠牲にしない、持続可能な街の将来像が、共有できておりません。
だからこそ、観光が街に受け入れられていないのです。
本県では、広島市や廿日市市を中心にオーバーツーリズムが問題となっている観光地がある一方で、まだ観光客が少ない市町も多くあります。
県が日本トップ3の観光県を目指すためには、人口減少や過疎化が進む地域にも観光が根付く将来像、観光により県内各地域がどのように潤っていくのか、県は23市町と一緒に議論して、同じ方向を向いて、街の姿を示す必要があります。

そこで、お尋ねをいたします。4月に広島県が立ち上げた、「世界トップ10・日本トップ3の観光県を目指す事業構想プロジェクト研究」について、県が掲げている5年後の観光消費額8,000億円に加えて、日本トップ3の観光県とは具体的に何をどう実現することなのか、知事の御所見をお伺いします。
また、人口減少や過疎化が進む地域にも観光が根付く将来像、観光により県内各地域がどのように潤っていくのか、県は23市町と一緒に議論して、街の姿を示す必要があると考えますが、県はどのように街の将来像を描いていくのか、知事の御所見をお伺いいたします。
(937字)

【知事答弁(商工労働局)】

「日本トップ3の観光県」とは、本県が、北海道や沖縄、京都などの日本を代表する観光地に匹敵するブランド力を持つ観光地となることを表現したものであり、こうした観光地になることによって、観光が、本県経済の成長を支える産業の一つとして定着するとともに、地域に暮らす人々の生活の質が高まり、持続可能な形で地域全体が発展することを目指すものでございます。
本県におきましては、厳島神社と原爆ドームといった二つの世界遺産の認知度は高いものの、県全体の観光地としてのブランド力はまだ十分でないことから、「安心・誇り・挑戦 ひろしまビジョン」の観光領域に掲げる三つの柱である
・ ブランド価値向上につながる魅力づくり、
・ 誰もが快適かつ安心して楽しめる受入環境整備、
・ 広島ファンの増加
に、関係者と一丸となって全力で取り組むことで、観光地・広島としてのブランド力の強化を図ってまいりたいと考えております。
次に、県がどのように街の将来を描いていくかについてでございますが、将来に向けた持続可能な観光地づくりをオール広島で進めていくためには、県民や市町等の関係者と街の将来像を共有できていることが、大変重要であると考えております。
県内の各市町が抱える地域課題は異なることから、23市町それぞれと丁寧に対話を重ね、議論していくことでしっかりと目線を合わせ、人口減少や過疎化が進む地域においても光が根付き、潤う街の将来像を市町とともに描いてまいりたいと考えております。
このようなプロセスを通じて、その地域ならではの魅力的な観光資源を磨き上げ、多彩な観光プロダクトを開発し、観光客が何度も訪れたいと思う観光地とすることにより、地域の賑わいと活力につなげるとともに、住民が誇りを持ちながら住み続けることができる地域を数多く創出してまいりたいと考えております。

2 宿泊税の使途と今後の予定について
質問の第2は、宿泊税の使途と今後の予定について、お伺いをします。
本県は、令和6年12月定例会において広島県宿泊税条例案を可決し、令和8年4月1日から徴収を開始する予定です。約9ヶ月後からの徴収開始に向けて、県は宿泊事業者へのシステム整備に係る補助金の交付や説明会の実施、使途の検討を進めているところです。宿泊税の導入に当たっては、納税をお願いする宿泊者、宿泊者から宿泊税を徴収する宿泊事業者等に加えて、すべての県民に、県が宿泊税を導入する目的や意義について理解してもらうことが重要です。
そして、県民に理解してもらうためには、宿泊税の使途を明確にしなければいけません。
特に、本県は
・県内外のビジネス客や、観光地が集積して観光客が多く宿泊する都市部の地域と、
・故郷の行事や帰省など観光目的以外で県民が多く宿泊する中山間地域や離島などの地域、
両方があります。
そのため、一部の観光地だけに宿泊税の使途が限定をされると、県が掲げている周遊観光には、つながりません。
広島県宿泊税条例の第一条には、
「県は、地域資源の魅力向上、旅行者の受入環境の充実その他の観光の振興を図る施策に要する費用に充てるため、宿泊税を課す」と規定をしています。
地域資源の魅力向上を実現させるためには、住みやすい街づくりを推進することが必要不可欠であり、単に観光地化して生活の質を低下させては魅力向上の実現は不可能です。
「住んでよし、訪れてよし」の考え方が重要です。
そのため、宿泊税の使途に、住みやすい街づくりの推進も含めるべきだと考えます。
県がホームページで公表している、宿泊税の導入に関する説明資料では、一部を各市町へ交付することは明記をされていますが、市町交付金等の対象事業は具体的にはなっておりませんし、そして既に6月ですから、今後のスケジュールを早急に示さなければいけません。

そこで、お尋ねをいたします。来年度から徴収を開始する宿泊税の使途として、一部を各市町へ交付金等として配分をしますが、地域資源の魅力を向上するためには、住みやすい街づくりを推進することが必要不可欠であり、23市町が実施する地域資源の魅力向上に資する住みやすい街づくりを推進する事業も対象に加えてはどうかと考えますが、知事の御所見をお伺いします。
また、県は対象となる事業を、いつ頃に明確にして、各市町はいつまでにどのような事業提案を行わなければいけないのか、今後のスケジュールを早急に示す必要があると考えますが、併せて知事の御所見をお伺いします。
(1,045字)

【商工労働局長答弁】
住みやすい街づくりと観光振興は、相互に密接に影響しあう関係にあり、観光地としての魅力を高めていくためには、まずは住民が住みやすいと感じる環境が整っていることが重要であると認識しております。
また、宿泊税の使途につきましては、県は、広域的な視点から、県内全域への周遊を促していくための施策に主体的に取り組むとともに、市町に対し、県の施策と連動して計画的かつ一体的に進めていくべき取組や、各市町独自の地域課題の解決に向けた先進的な取組などを支援することとしております。
こうしたことから、各市町において、観光振興を進めていく上で必要となる場合は、住みやすいまちづくりにもつながる地域独自の課題解決や地域特有の資源の魅力向上を図るための取組なども支援の対象に含める方向で検討してまいりたいと考えております。
次に、今後のスケジュールにつきましては、まずは来月市町への説明会を開催し、市町交付金などの支援の対象事業、配分規模、配分方法の考え方についてお示しした上で、市町の意見を伺い、宿泊税の使途のうち市町への支援の方針について、早急に明確にしていきたいと考えております。
その方針に基づき、9月中には、予算規模を含めた事業内容を市町から県に提案していただき、その後、県が実施する事業も含めた宿泊税の使途全体について、県議会と十分な議論を行ってまいりたいと考えております。

3 県全域への周遊観光の現状と市町による周遊促進について
質問の第3は、県全域への周遊観光の現状と市町による周遊促進について、お伺いいたします。
私の地元である福山市は「ばらのまち」として広く知られています。
先月18日から24日の一週間、世界中のばら関係者が集う第20回世界バラ会議も福山で初開催され、世界的な認知度も高まりました。
さらに、現在は大阪・関西万博と瀬戸内国際芸術祭という、日本のみならず、世界各国からの集客が見込まれる大型イベントが開催されており、本県を訪れる国内外の観光客の更なる増加を期待しています。
昨年6月定例会の一般質問において、私が世界バラ会議について質問をした際、知事は開催期間中のオプショナルツアーの造成等に取り組むことや、スマホの位置情報を活用した人流サービス等により国内外の観光客の県内周遊状況等を把握、分析して、より効果的な施策を実施して本県への更なる誘客や県内全域への周遊促進に繋げると答弁をされました。
県が世界バラ会議や万博といった千載一遇(せんざいいちぐう)のチャンスを生かして観光客を呼び込み、県内全域への周遊促進に繋げた実績を国内外にPRすることで、更なる周遊観光の促進に繋がることができるのではないでしょうか。
また、私の民間の経験からも、大々的なPRに加えて、人の口伝え、人から人へ地域の良さが伝わり、拡散することが、最も息の長い観光戦略になることを実感しています。
そのため、国内向けに周遊観光をPRする際には、県内の市町が連携して、お互いの市町の良さを売り込むことも重要です。
例えば、尾道市長が県外を訪問した際に三原市や福山市の魅力も一緒にPRしたり、福山市長が県外の方に、「福山市も良い場所ですが、隣の尾道市や神石高原町も素晴らしいので、ぜひ訪れてみてください。」とPRすれば、宣伝効果は非常に高まります。
そして、周遊観光をすれば滞在期間も延びますし、自分の街にも何度も訪れてくれる可能性が高まります。周遊観光のPRは各市町にとってもメリットがあります。
この周遊観光の促進に、せとうち7県を巻き込みながら取り組み続けているのが、「せとうちDMO」です。せとうちDMOの活動を通じて得られた知見は、各市町が観光施策を実施する際にも、非常に参考になると思います。
県がリーダーシップを発揮して、各市町の季節毎の魅力的な訪問場所を集約したり、せとうちDMOの知見を取りまとめて、各市町にフィードバックすることで、各市町の観光施策が強化されるとともに、各市町も周遊観光のPRに取り組みやすくなり、結果的に更なる周遊観光の促進に繋がるのではないでしょうか。

そこで、お尋ねをいたします。県は世界バラ会議や大阪・関西万博という千載一遇のチャンスを生かすため、県内全域への周遊促進に取り組んでいますが、人流データなどの情報をもとに具体的にどのような周遊促進策を行うことで、どれだけの観光客が県内全域への周遊促進に繋がり、その成功事例を積極的にPRをしているのか、また得られた課題はどういったものがあるのか、知事の御所見をお伺いします。
さらに、県がリーダーシップを発揮して、各市町の季節毎の魅力的なイベントや訪問場所を取りまとめたり、せとうちDMOの知見を取りまとめたうえで各市町にフィードバックすることで、各市町が観光施策を強化しながら周遊観光のPRにも取り組みやすくなり、結果として県全域の周遊観光の促進に繋がると思いますが、知事の御所見をお伺いします。
(1,416字)

【知事答弁(商工労働局)】
5月に開催されました世界バラ会議や、現在開催中の大阪・関西万博などの世界各国からの注目が集まるイベントなどを契機として、本県への誘客や県内全域への周遊促進につなげていくためには、人流データなどから得られた情報をしっかりと分析し、新たな観光ニーズや旅行者の動向等を踏まえたより効果的な施策を実施していくことが重要であると認識しております。
こうした認識の下、本県を訪れる観光客から得られた情報や新たな観光ニーズ等を踏まえ、
・ 本県の豊かな自然やありのままの文化・伝統などをじっくりと楽しめる観光プロダクトの開発や、
・ 広島の食や平和などをテーマとした新たな周遊ルートの設定
などの取組を進めるとともに、観光ホームページやSNSなどによる情報提供に加え、観光アプリ等による位置情報や行動データに基づいたおすすめ情報の発信を行うことなどにより、県内全域への周遊促進に取り組んでいるところでございます。
こうした取組を進めることにより、令和6年は前年と比べ、二つの世界遺産から他の市町の観光地を訪れる観光客数が多くの市町で増加していることなどから、一定の成果につながっているものと考えております。
また、新たに開発した観光プロダクトのうち、観光客におすすめしたい熱狂プロダクトを選定し、表彰する「HYPP(ハイプ)アワード」を昨年度開催するなど、成功事例の積極的なPRも行っているところでございます。
一方で、これまでの取組を進める中で浮き彫りとなった課題といたしましては、
・ 主要観光地からの訪問者数の増加割合が低い地域があること、
・ 開発したプロダクトにおいて通訳ガイドなどの外国人対応が十分整っていないこと
などがございます。
次に、市町による周遊促進につきましては、県内各市町の、より一層の連携が必要なことから、県が取りまとめたイベント等の情報や人流データの活用策等について、市町との月例ミーティングなどにおいて共有を行っているところであります。
また、せとうちDMOにおきましても、
・ エリアごとの特色を生かした周遊ルートの造成や、
・ 高付加価値旅行客をターゲットとした誘客
などに関する取組や知見について定期的に市町にフィードバックしているところでございます。
引き続き、県内の周遊状況等についての、より詳細な情報や、これまでの取組により浮き彫りとなった課題などを踏まえ、県がリーダーシップを発揮して、より効果的な施策を実施していくとともに、県がとりまとめた情報や知見の共有などにより、市町における観光施策の強化を図っていくことで、本県への更なる誘客や県内全域への周遊促進につなげてまいります。

4 せとうちDMOによる周遊観光の促進について
質問の第4は、せとうちDMOによる周遊観光の促進について、2点、お伺いいたします。
県の東部地域における観光振興においては、地理的にも広島県だけでなく、隣県の岡山県や、しまなみ街道で繋がる愛媛県との連携が必要となります。
そのためには、せとうちDMOを通じた瀬戸内7県の連携が非常に重要です。
せとうちDMOは、知事のリーダーシップにより設立をされ、2016(H28)年4月1日から事業を開始しており、既に9年が経過をいたしました。設立当初から、国内外での、せとうちブランドの確立に取り組み、コロナ禍でもSNS等を通じてプロモーションを仕掛けたことで、インバウンドを「せとうち」に取り込むことにも、成果を挙げています。
せとうちDMOには、設立当初から大変期待をしており、来年で設立10周年を迎えるこの機会に、これまでの取組、今後の方針を総括する意味で、次の2点をお伺いします。
(381字)
(1)せとうちDMOの役割や収益構造について
1点は、せとうちDMOの役割や収益構造について、お伺いをいたします。
県は令和7年度当初予算において、「観光地ひろしま推進事業」として約7億8千3百万円、「おいしい!広島推進事業」、「瀬戸内さかなブランド化推進事業」並びに「広島和牛ブランド構築事業」として、約3億1千4百万円と、4事業だけでも10億円以上の予算を計上をしています。
せとうちDMO自体は、マーケティングやプロモーションを行う「せとうち観光推進機構」と、西山別館の事業承継などの具体的なプロダクト開発支援を行う瀬戸内ブランドコーポレーション等から構成をされており、県として、「おいしい!広島推進事業」等のブランド強化を目指す施策に、せとうちDMOと連携して取り組むことで、首都圏プロモーションや周遊観光の促進に相乗効果が期待をできると思います。
一方で、せとうちDMOには、国や広島県が毎年、補助金を出しており、今年度の県予算にも、せとうちDMOへの補助金等が含まれています。
県はこれまで、どれだけの金額を、せとうちDMOに投じてきたのでしょうか。
本来、せとうちDMOは自らの事業展開により収益を得る組織ですが、補助金頼みの運営になってしまうと、せとうちDMO設立の本来の趣旨から外れる恐れもあります。
県は、せとうちDMOと事業連携しつつ、役割分担は明確にすべきだと考えます。
約4年前に、広島県が宿泊税導入を検討し始めた時には、私は県の常任委員会において、瀬戸内7県で宿泊税を徴収して、その一部を、せとうちDMOに回すことを提案したこともありました。
「せとうち」という県域を越えるキーワードは、既に世界中で認知されており、ここまで強力なブランド力を持つキーワードは、日本中を探してもここにしかありませんし、実際にインバウンドの評価も高まっています。せとうちブランドの強化は、本県の周遊観光の促進につながり、県の持続的な経済発展や人口減少対策にもつながります。
そのためにも、県として、せとうちDMOが今後、自ら事業活動で収益を挙げるために、どのような事業に注力をしようとして、県としてどのように関与していくのか、明確にしたうえで、本県の観光施策を展開する必要があると考えます。
そこで、お尋ねします。せとうちブランドを強化して本県の周遊観光の促進に繋げるために、県は、知事のリーダーシップにより設立した、せとうちDMOとより積極的に連携して「おいしい!広島」といった観光施策に取り組む必要があると考えますが、知事の御所見をお伺いをいたします。
また県はこれまで、せとうちDMOにどれだけ補助金等を投じてきているのか、そして今後、せとうちDMOが自らの収益活動で利益を上げるために、どのような事業に注力をしていく方針であり、県としてどのように関与していくのか、あわせて知事の御所見をお伺いします。 (1,171字)
【知事答弁(商工労働局)】
せとうちDMOは、瀬戸内エリアのブランド価値向上や、瀬戸内7県の地域活性化を図るため、欧米豪の外国人旅行者をターゲットとした、戦略的なプロモーションの展開や、観光コンテンツの開発支援等に取り組んでいるところでございます。
具体的には、
・ 瀬戸内エリアへの送客意欲が高い海外旅行会社を対象とした招請ツアーの実施や、
・ 高付加価値旅行者層向けの海外商談会への出展、
・ 瀬戸内地域の食など、文化的・歴史的ストーリーを組み合わせたコンテンツの造成
などに取り組んでおり、「おいしい!広島」プロジェクトをはじめとした施策との連携により、「瀬戸内ブランド」や「広島ブランド」の強化を図ってまいりたいと考えております。
次に、せとうちDMOの収益構造についてでございますが、本県においては、DMOを構成するせとうち観光推進機構に対して、平成28年度の設立当初から昨年度までの9年間で、計3億4,840万円を負担金として支出しております。
また、せとうちDMOは、自主財源の確保に向けまして、
・ トラブル時の外国語電話通訳サービスなど観光関連事業者や団体を対象とした会員制のメンバーシップ事業や、
・ 自治体や企業等からの新規受託事業の拡大、
・ マーケティングにより得られたデータや知見等による知的財産収入の獲得
などの収益活動を進めているところでございます。
さらに、昨年度、国内全域において旅行企画やツアー商品の販売等が可能となる第2種旅行業の登録を行い、新たな事業ブランド「せとうちDMC」を立ち上げたことから、今後、令和4年度に、観光庁により選定された「地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりモデル観光地」事業において造成したコンテンツ等を旅行商品として販売することなどにより、外国人旅行者の瀬戸内エリア内での周遊を促進するとともに、せとうちDMOの収益の増加につなげていくこととしております。
県といたしましては、こうした収益活動を後押しするため、せとうちDMOによって造成された旅行商品について、県観光ホームページやSNS等を活用した戦略的な情報発信等を行うとともに、令和8年度に導入予定の宿泊税を活用したせとうちDMOと連携した取組についても検討を進めてまいります。

(2)NFTを活用した観光振興策について
2点目は、NFTを活用した観光振興策について、お伺いいたします。
NFTとは、非代替性トークンの略称であり、NFTによりデジタルデータのコピーや偽造を防ぐとともに、コレクター性も高まります。
日本国内でも既にNFTのテストフェーズから社会実装フェーズに移行をしています。
実際に、山形県西川町や山口県美祢市(みねし)、大阪府羽曳野市(はびきのし)等が、特権付きのデジタル住民票をNFTで発売し、ファンや訪問者数の増加に繋げています。
さらには、公共施設のネーミングライツNFTや、ふるさと納税NFT、福島県にあるJR只見線を支援するNFTなど、まさにNFTを活用して、地方創生2.0を実現に導く取組が全国各地で実装をされています。
そこで、本県における観光施策においても、NFTを活用してはいかがでしょうか。
例えば、せとうちDMOとも協力しながら、周遊観光を促進するため、「せとうちNFT」のようなNFTを発行して、瀬戸内7県全域で活用できるNFTを発行します。その「せとうちNFT」と連動する形で、瀬戸内地域の全体のデジタルスタンプラリーをNFTで発行すれば、コレクター性も高まり、何度も来たくなる仕組みになりますし、国内外への発信力も高まります。
例えば、福山のバラ祭りで記念NFTをもらった後、尾道のべっちゃー祭りのNFTも揃えると尾道ラーメンが1杯無料になる、更に松山城NFTを取得すれば温泉が無料になるなど、単発イベントだけでなく、中長期の周遊を促進することで、各関係者の瀬戸内での売り上げを確保しながら地域活性化に繋げることができます。
さらに、せとうちNFT保有者の動向を分析すれば、観光マーケティングに活用できますし、せとうちNFT保有者をメンバーにした自律分散型組織であるDAO(ダオ)を組織して、せとうち観光の企画・立案・フィードバックを得ることも可能になります。
具体的には、「おさかな だお長崎」は、「長崎のうまいサカナの未来をつくる」をテーマに、共感する仲間がオンラインで集まり、長崎の地場事業者とともに、魚種の勉強会や料理教室などを開催し、長崎の魚の魅力をブランディングする活動をDAOを通じて、対価をトークンで支払っています。
そこで、お尋ねします。国も骨太方針に明記しており、既に各地域で社会実装が進んでいる、ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOについて、広島県としてもせとうちDMO等とも連携し、例えば「せとうちNFT」を発行して積極的に周遊観光促進に活用することや、様々な観光マーケティングに活用することができると考えますが、知事の御所見をお伺いします。
(1,089字)

【商工労働局長答弁】
ブロックチェーン技術を基盤としたデジタル資産であるNFTの活用につきましては、近年、他の自治体において、コワーキングスペースの無料利用等の特典付きデジタル住民票の販売といった事例があり、観光振興施策での活用の可能性を有しているものと認識しております。
例えば、エリア内の各観光施設において特典を受けられるNFTを発行することで、エリア内での周遊を促進することが期待できるとともに、施設訪問時に訪問者の目的や属性などのアンケート調査を実施することで様々な分析等への活用も期待できるものと考えております。
一方で、NFTの活用に当たりましては、
・利用者数など普及の状況
・運用面における技術的な知識の習熟、
・自立分散型組織であるDAOなどの保有者をつなぐための仕組みの構築
といった課題も考えられることから、今後、他の自治体の先行事例も参考にしながら、せとうちDMOなどと連携して、NFTを活用した観光振興施策について研究してまいりたいと考えております。

5 観光拠点づくりによる広島県版地方創生について
質問の最後は、観光拠点づくりによる広島県版の地方創生について2点、お伺いをします。
(42字)
(1)スポーツ観戦からの県内周遊について
1点目は、スポーツ観戦からの県内周遊について、お伺いをします。
全国のプロスポーツチームのスタジアムやアリーナが街に賑わいを生んでおり、2024(R6)年に全国の主要施設を訪れた人数は延べ9,312万人、その中でも周辺人口に比べて来訪者が最も多かった、人口比の集客力全国一位の県が、先日の新聞でも報道されたとおり、我らが広島県であります。
人流ビッグデータを使った民間の調査によると、野球、サッカー、バスケットボールの県内3つのスタジアムに延べ599万人が訪れており、全県民が平均で年2回、足を運んだ計算になります。
周辺人口と比較した場合の来訪者は、広島県が全国一位ですが、実態は広島市への一極集中です。
サッカースタジアムの建設の際には、中四国全域をはじめ広域からの集客や、県内周遊のきっかけとなることが、県として投資する理由であると、県は繰り返し説明をされてきました。
では、実際にプロ野球やプロサッカー、プロバスケの観戦に広島市に来た人が、どれぐらい広島市以外に周遊観光をしているのでしょうか。
私の肌感覚では、広島市でのプロスポーツ試合日の前後で、少なくとも備後地域における観光客の増加は感じられません。
県としては人流データ等の客観的な指標を用いながら、広島市にスポーツ観戦で訪れた人がどれだけ県内周遊をしているのか、示していく必要があるのではないでしょうか。
そこで、お尋ねします。県は広島市一極集中となっているプロスポーツの観戦に訪れた人に県内周遊を促すため、どのような施策に取り組んでおり、実際にどれだけ県内の周遊観光に繋がっているのか、知事の御所見をお伺いします。
(676字)

【商工労働局長】
人流データを分析したところ、例えば、県外からマツダスタジアムに訪れる観戦者につきましては、岡山県、山口県など近隣県からの来訪が約31%を占めるものの、首都圏や近畿圏からの来訪もそれぞれ約19%となっており、遠方からの割合も高くなっております。
こうした状況を踏まえ、宿泊を伴う、首都圏等の県外からの来訪者に向けて、観戦日の前後での県内各地への周遊を促すため、宮島や呉、しまなみ海道などを訪れるモデルコースを県観光ホームページで紹介しているほか、観戦だけでなく、実際にスポーツを楽しむ方をターゲットとした、
・瀬戸内の穏やかな海でカヤックを体験するツアー
・グリーンシーズンのスキー場をバギーで駆け巡るツアー
・県東部の市街地を折りたたみ自転車で巡るガイドツアー
などの開発を行っているところでございます。
また、サンフレッチェ広島の公式サイト内に県観光ホームページのリンクを掲載するなど、プロスポーツチームと連携した観光情報の発信にも取り組んでいるところでございます。
一方、県内や近隣県からの来訪者につきましては、短期の滞在が主となることから、食に関心がある方をターゲットとし、スタジアム周辺の複数の飲食店の訪問を促すキャンペーンなどを行っております。
こうした取組により、スタジアム周辺のエリアにおいては試合開催日の前後に多くの来訪者で賑わいを見せているところでございますが、他のエリアへの周遊は未だ十分ではないと考えております。
こうしたことから、
・県内各地域でのプロスポーツ観戦者に訴求力のある観光プロダクトのさらなる開発や磨き上げ
・スポーツをテーマとした周遊ルートの形成
・スタジアム内外における観光情報の効果的な発信
などにより、スタジアム周辺エリアだけでなく、県内全域への周遊を促していくための取組を進めてまいりたいと考えております。

(2)23市町における観光拠点づくりへの支援について
2点目は、23市町における観光拠点づくりへの支援について、お伺いをします。
日本全体で人口減少や東京一極集中が加速している中で、本県でもプロスポーツの例を挙げたように、広島市一極集中は進んでいます。我々が東京に日本のダム機能を期待しないことと同様に、広島市にダム機能や各市町への波及効果を期待することは、広島県全体で人口減少、人口流出が続く中で、もはや現実味がありません。
私は過去の質問で、東京一極集中と同様に、広島市一極集中が進んでおり、国の機関の地方移転すら進んでいない中で、広島県として県内各地に部局を割り振ることを提案したこともあります。東京一極集中は、多くの会社や官公庁、娯楽施設等の拠点が集中をすることで、更に人が集まっているため、そこから分散、周遊させるのは難しいのが現状です。
県は、
・イノベーションの「ハブ」施設として「ひろしまCamps」に、
・全国トップレベルの医療提供と医師の「偏在解消」のため新病院建設に、
多額の投資を行っています。ただ、1か所の拠点だけでは全県への波及効果は限定的です。
観光においても、県は観光連盟を中心にプロダクト開発として地域資源の磨き上げを行っています。磨き上げ自体は重要ですが、それだけでなく、各市町が求める、観光客を集めることができる拠点作りへの支援も必要ではないでしょうか。
スタジアムという拠点があるので広島市にスポーツ観戦客が集まり、しまなみ海道という拠点があるのでサイクリング等の誘客に繋がり、人材も育っています。
スポーツの例で言えば、福山にカープの2軍練習場ができれば、周辺に人や関連施設が集まり、人材も育ちます。そうなれば、広島市にスポーツ観戦で訪れた人が、福山にも周遊するようになり、かつ、何度でも広島を訪問したくなります。
県として、23市町が求める観光拠点づくりへの支援を行い、それぞれの市町は観光拠点を中心に、地域の様々な人材、ノウハウ、資源を組み合わせて観光施策の磨き上げを行うことができます。そして、県は各市町の観光拠点を連携させながら、市町と協働して周遊の促進に取り組むことで、県全体で観光客の増加が期待でき、観光消費額8,000億円を達成しながら各地域も発展し、関係人口の増加や雇用促進、人材育成、郷土愛の育成等を通じて、人口流出の歯止めを実現できるのではないでしょうか。
各地域の発展は、当然、観光だけではなく県の全部局が取り組んでおり、かつ、未だに答えが見つかってはいない課題ではないでしょうか。
だからこそ、観光やスポーツで一極集中を是正して、各地域の拠点づくり支援や拠点同士の連携を県が行い、成果を挙げることができれば、この取組自体が、全部局の施策に大きなヒントになり、広島県版地方創生に繋がると考えます。
そこで、お尋ねします。県は広島市にダム機能を期待するのではなく、23市町における観光拠点づくりを支援して、観光拠点を中心に地域の様々な人材、ノウハウ、資源を組み合わせて観光施策の磨き上げを行うと共に、県が各市町の観光拠点を連携させながら、市町と協働して周遊観光の促進に取り組むことで、観光消費額8,000億円と人口流出の歯止めを実現することができれば、この取組自体が全部局の施策に大きなヒントとなり、広島県版地方創生に繋がると考えますが、知事の御所見をお伺いします。
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以上で質問を終わります。
ご静聴いただき、ありがとうございました。
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【知事答弁(商工労働局長)】
観光を、本県経済を支える産業の一つとしていくためには、二つの世界遺産などの主要観光地への観光誘客を引き続き図っていくとともに、中山間地域を含めた各地域に魅力ある観光プロダクトを数多く取り揃えることで拠点性を向上させ、市町と連携して県内全域への周遊促進に取り組むことにより、観光消費額の増加を図っていくことが重要であると認識しております。
こうしたことから、県観光連盟において、観光以外の異業種も含む幅広い事業者の連携を促すプラットフォームを形成し、様々な人材やノウハウ、観光資源などを組み合わせ、各地域の特色を生かした魅力的な観光プロダクトの開発や磨き上げを行っているところでございます。
また、市町と連携し、県が広域的な観点から、各地域の観光プロダクトを、自然、歴史・文化、食といった特色のあるテーマやストーリーで結びつけ、ターゲットに応じた効果的な手法で情報発信していくことにより、主要観光地から中山間地域を含めた県内全域への周遊促進を図っているところでございます。
今後、令和8年度から導入予定の宿泊税を活用し、県が行う広域的な視点による観光振興施策に加えて、市町が実施する
・ 各地域の独自課題への対応や、
・ 地域の特色を生かした観光資源開発、
・ 観光の視点に立った環境整備などのまちづくりの推進
等を支援し、一体的に進めていくことで、各地域の拠点性の向上及びそれらを結びつけた広域周遊の促進を加速してまいりたいと考えており、今後、市町への説明会などを通じて、支援の内容などを具体化してまいります。
引き続き、 県内各地の観光地の拠点性を高め、 それらをつなぎ、広域周遊の促進を図る取組をオール広島で進め、 多くの観光客が県内全域を訪れることで、観光消費額や雇用の増加、 関係人口の拡大などを実現してまいりたいと考えております。
こうした取組も含めまして、それぞれの地域が直面している課題を踏まえて、創意工夫に満ちた、魅力ある地域づくりに県と市町が一体となって取り組むことで、本県における地方創生の実現につなげてまいります。

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