活動報告

活動報告:広島県議会協議内容

令和3年度決算特別委員会総括審査 「実録」

令和3年度決算特別委員会

総括審査 「実録」

《11月21日(月)午後3番手》

 

 

1 本県の財政運営について

 

(1)財源調整的基金残高の現状認識

について

 

(2)今後の経済対策について

 

 

2 施策マネジメントの在り方について

 

 

 

自由民主党広島県議会議員連盟

出 原 昌 直

 

 



はじめに

自由民主党広島県議会議員連盟の出原です。

10月17日から始まった部局別審査では、県民・事業者の皆様の暮らしや事業活動を支えるための貴重な財源が有効に活用されているのかという観点から、主要事業の予算執行状況や、成果目標の達成状況などについて、主に質問をさせていただきましたが、執行部の答弁の中には、予算の立て方や施策マネジメントの進め方について、十分検証されていないと感じるものもありました。

ひろしまビジョンに掲げる「目指す姿」や「指標」を実現していくためには行政経営の不断の見直しが必要ですが、この総括審査では、その根幹をなす、

本県の財政運営と、施策マネジメントの在り方について、お伺いします。

(残り19分00秒)

 

1 本県の財政運営について 

(1)財源調整的基金残高の現状認識について 

 

質問の一つ目は、本県の財政運営について、2点お伺いします。

 

はじめに、財源調整的基金残高の現状認識について、お伺いします。

 

【財源調整的基金残高の状況】

財源調整的基金は、災害などの不測の事態に備え、年度間で生じる財源の不均衡を調整するために積み立てておく基金であり、財政調整基金と減債基金の一部で構成されています。

財政調整基金は、地方財政法の規定に基づき、毎年度、前年度決算剰余金の2分の1以上を積み立てていますが、令和3年度決算では、約137億円の決算剰余金が生じており、先般の令和4年度9月補正において、69億円の財政調整基金を積み立てています。

先月の新聞報道で、「令和3年度末の自治体全体の基金残高は、令和2年度末から1.7兆円増の8.6兆円となり、平成以降で最大となっている。」との記事を拝見しました。

本県においても同じような状況であり、財源調整的基金の残高は、令和元年度末残高が303億円、令和2年度末が358億円、令和3年度末が466億円と積み上がっている状況です。

 

 

 

【中期財政運営方針】

本県では、県勢発展に必要な施策を安定して推進できる財政運営に向けて、

令和2年12月に「中期財政運営方針」を策定されました。

運営方針では、目標の一つとして、平成30年7月豪雨災害のような大規模災害の発生への対応を念頭に、財源調整的基金について、当初予算編成時点において100億円以上の残高を確保するとされています。

中長期的な県政運営のためには、一定規模の基金残高の確保は必要であると思いますが、現在の基金残高は、既に目標である100億円を優に超えています。

 

【社会経済情勢】

その一方で、現在、長期化する新型コロナの影響により、県民をはじめ、多くの県内事業者が苦境に陥っています。収入が減った人に対する、国の生活資金貸付制度を巡っては、低所得などの理由で返済を免除された人は、全国で約39万人、金額にして1、295億円にも上るとの調査結果が報道されていました。

新型コロナ関連で、実質無担保・無利子の融資を受けられた中小事業者の多くの経営者も、これから返済開始期限が迫ることに不安を抱えており、資金繰りが苦しく、事業経営の悪化に伴う倒産件数が更に増加しないか心配です。

加えて、ロシアによるウクライナ侵略の影響もあり、国際的な物価高騰や円安が、県民生活や事業活動に追い打ちをかけています。

今後、実質所得の低下や、消費者マインドの低下による消費支出の減少、

企業収益の低下などにより、地域経済の後退も懸念されます。

 

【質 問】

このような社会経済情勢を踏まえると、現在取り組むべき施策は、県民の安心な暮らしづくりや、県内事業者の成長を後押しできるような経済対策ではないでしょうか。

本県の持続的な経済成長を促していくことが、結果として、県税収入の安定的な確保や、バランスの取れた財政運営に寄与していくものと思います。

そこで、苦境に陥っている県民・事業者の切実な声を踏まえ、財源調整的基金を積み上げるよりも、もっと積極的な経済対策を推進していくべきであると考えますが、財源調整的基金が積み上がっていることについて、どのように認識をされているのか、総務局長にお伺いします。

(残り14分50秒)

 

 

 

【答弁】

令和3年度末の財源調整的基金の残高につきましては、国の交付金などの活用や、県税収入の増加、経費節減による歳出不要などにより、必要な政策的経費を確保しつつ、可能な限り、取崩しを抑制した結果、前年度末から、約108億円増加し、約466億円となったところでございます。

令和4年度におきましては、地方財政法に基づき、令和3年度決算剰余金の一部である69億円を積み立てる一方、当初予算及び補正予算における財源として、約202億円を取り崩すこととしていることから、9月補正予算後の残高見込みは、約334億円となっております。

この基金残高につきましては、平成30年7月豪雨災害の際には、あらゆる財源確保を図った上でも、予算ベースで、約100億円の取崩しが必要となったことから、こうした災害に備えておく必要があること、経済の低迷による税収の減少などのリスクにも、備える必要があること、新型コロナウイルス感染症対策、物価高騰対策、広島サミットの推進など、新たな課題や変化にも、的確に対応していく必要があることを踏まえると、財政的に余裕がある状況にはないものと考えております。

財源調整的基金につきましては、これまでも、県勢発展に必要な施策の財源として、有効に活用してきたところではございますが、今後も、社会・経済情勢の変化に対し、時機を逸することなく、必要な対策を講じていくための財源として、有効に活用し、本県の持続的発展につなげてまいりたいと考えております。

(残り12分20秒)

 

 

 

(2)今後の経済対策について 

 

次に、今後の経済対策について、お伺いします。

 

【質 問】

決算資料によると、令和3年度の県税収入は、3、374億円余であり、

米中貿易摩擦や新型コロナの影響で大きく減少した令和2年度の県税収入と比較すると3%増加しています。

これから令和5年度の予算編成に向けた作業が本格化してくると思いますが、県税収入は、県民や事業者が収めた貴重な財源であり、県勢発展に向けて、最大限有効に活用していただきたいと思います。

新型コロナ臨時交付金など国の予算の配分額にかかわらず、県民や事業者の声をきめ細かく把握し、戦略性を持った本県独自の経済対策が必要ではないでしょうか。

そこで、お尋ねをいたします。今後の経済対策については、年内に策定される県政運営の基本方針において示されると思いますが、どのような考え方の下、本県の経済対策を進めていこうと考えられているのか、総務局長にお伺いします。

(残り11分10秒)

 

 

【答弁】

新型コロナウイルス感染症に加え、ウクライナ情勢などを背景とした、エネルギーや食料品等の物価高騰が、県内産業や県民生活に、幅広く影響を及ぼしていることを踏まえ、本県では、6月補正予算及び9月補正予算において、「原油価格・物価高騰対策」として必要な予算を計上し、国や市町との連携の下、切れ目なく、対策を講じてきたところでございます。

今後とも、県内の事業者や県民の皆様の声や、県議会の御意見も伺いながら、必要とされる支援を的確に把握し、物価高騰による影響の緩和と、エネルギーコストの節減に向けたネットゼロカーボン等の取組の後押しの外、アフターコロナを見据えた社会・経済の発展的回復の面からも検討を進め、国や市町とも連携し、迅速かつ的確に、対策を講じてまいりたいと考えております。

 

 

2 施策マネジメントの在り方について 

質問の二つ目は、施策マネジメントの在り方についてお伺いします。

 

【部局別審査の質問内容】

部局別審査では、

・ 主要事業における当初予算額と執行額との乖離要因 や、

・ 令和3年度の成果目標と実績がかけ離れている場合の今後の対応方針

・ 新型コロナウイルス感染症対策に関する3年間の総括

などについて、質問させていただきました。

 

【令和3年度決算に対する受止め】

また、令和3年度「主要施策の成果に関する説明書」を確認させていただくと、一定の成果があがっている事業がある一方で、必ずしも効果的・効率的な施策マネジメントが実践できているとは言えない事業も多く見受けられました。

例えば、地域政策局の主要事業では、

・ 住民自治組織協働連携モデル推進事業は、当初予算額1、000万円に対して、執行額は50万円

・ 国際平和拠点ひろしま構想推進事業は、当初予算額約2億200万円に対して、執行額は約9、600万円

となっており、これは一例ですが、このような執行額や執行率で、ひろしまビジョンの推進を担う主要事業と言ってよいのか疑問に感じる事業もありました。

当初予算額と執行額との乖離要因として、答弁では、新型コロナの影響などを挙げられていましたが、令和2年度であればまだしも、令和3年度予算編成の際には、新型コロナの影響は、ある程度想定できたと思います。

つまり、PDCAサイクルのうち、事業戦略の立案段階となる「Plan」の部分と、実行・進行管理の段階となる「Do」の部分が、十分に検討・管理できていないと言えるのではないでしょうか。

 

また、新型コロナウイルス感染症対策に関する総括として、ここ3年間の取組と課題について質問した際には、行動制限がないなか感染拡大した第7波では「死亡者数が相当数にのぼったことについて、残念である」との答弁をいただきましたが、課題について十分深掘りを行い、次年度事業の改善につなげられているとは決して言えず、点検・評価段階となる「Check」の部分と、施策の再構築段階となる「Action」の部分について、見直しが必要であると感じました。

 

本県では、「予算志向から成果志向への転換」という視座に基づき、成果目標の達成に向けて、ビジネスプランやEBPMの考え方・手法を取り入れるとともに、ワーク単位でのモニタリングなどを通じて、施策の見直しを行うなど、PDCAサイクルによる施策マネジメントの改善を進めてこられました。

しかしながら、部局別審査を通して感じたことは、民間企業と比べて、予算の立て方や、施策マネジメントの実践が十分ではないということです。

 

【質 問】

ひろしまビジョンに掲げる成果目標を達成していくためには、どの程度予算を投じ、どのような取組が必要なのか、事業戦略の立案段階から、一年間の事業内容を具体的にイメージすることはもとより、ひろしまビジョンアクションプランの計画期間である令和7年度までを見据えて、もっと真剣に施策内容を詰めていくことが必要です。

そこで、令和3年度決算の状況を踏まえ、施策マネジメントが上手く機能していると言えるのか、また、今後、どのように改善を図っていくのか、知事の御所見をお伺いします。

(残り4分30秒)

 

【答弁】

本県では、「何にいくらお金を使うか」という予算志向から、「何を達成し、それがどのような成果を生んでいるのか」という成果志向への転換を目指して、施策の成果獲得の確度をより高めるため、PDCAサイクルによる施策マネジメントを実施しているところでございます。

この施策マネジメントにつきましては、これまで、職員一人一人が常に意識して徹底するとともに、ビジネスプランやEBPMの考え方・手法を取り入れるなど、仕組み自体のPDCAを回し、その質の向上を図ることで、一定程度、組織文化として定着し、機能してきているものと考えております。

しかしながら、近年における新興感染症の流行、原材料やエネルギー価格の高騰、急激な円安の進行などを考えますと、予測することが困難な社会経済情勢等の変化の兆しを的確に捉え、迅速かつ柔軟に施策の見直しにつなげることが今後ますます重要になってくるものと考えております。

このため、今年度から、四半期毎など、画一的な形ではなく、施策ごとのライフサイクルや社会経済情勢等の変化に応じてモニタリングを行うなど、施策マネジメントの更なる改善を図っているところでございます。

今後も、こうした取組を通じて、PDCAサイクルによる施策マネジメントを着実に実施し、成果につなげてまいりたいと考えております。

 

 

要望

ご答弁のとおり、ビジネスプラン、EBPMの考え方や手法というのは、組織文化として浸透しつつある中で、予測困難ななかで、さらに職員の皆さんに高みを目指していただく必要があるのだと思っています。

 

今年お亡くなりになった、京セラの創業者であり、また、2010年、戦後最大の負債額を抱えて経営破綻し、誰もが不可能と断じたJALの再建を見事成し遂げられた、稲盛氏の逸話を聞く機会がありました。

稲盛氏は、毎月の売上げ・利益等をチェックする中で、下振れした場合はもちろんだが、上振れした場合にも社員に厳しく指導されたということです。いかに予算どおり事業をすすめるかを重要視されていました。

通常、民間企業では、売上げ・利益をクリアすれば良いように思われがちですが、稲盛氏は、いかに予算どおりに事業を進めていくかを重要視されており、事業戦略の立案段階から、それだけ厳密に、時間と手間をかけていく必要がある、ということでした。

この話を聞いたとき、売上が上振れすればいい、例えば、事業も計画したものがある程度効果が出ればいいというような考え方でいましたが、それほど予算を立てるとき、時間をかけ、手間をかけて、一年間どういうことをやっていくのかイメージを作ることが大事という話でした。

 

本県においても、成果志向型の行政経営を目指して、PDCAサイクルの導入などによる施策マネジメントを推進されていますが、稲盛氏が重視されていたように、PDCAサイクルでは、やはり、PDCA全体の方向性を決定する「Plan」の部分が極めて重要です。

「P」の段階で、精度をできるだけ高め、成果目標の達成に向けて実行可能な内容まで練り上げられていかないと、いくら残りの「DCA」に力を入れても、得られる成果は低いものとなります。令和5年度当初予算の編成に当たっては、各施策・事業の選択と集中を徹底するとともに、県民・事業者の皆様に

成果を実感していただけるよう、施策マネジメントを深化させながら、

効果的な施策の推進につなげていただくことを要望して質問を終わります。

(残り0分00秒)

 

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