令和3年2月定例会
予算特別委員会
質 問 要 旨
1 朝ごはん推進モデル事業について
(1)平成30年度モデル事業の予算について
(2)令和元年度モデル事業の予算について
(3)モデル事業の評価と全県展開について
2 運輸業人材確保・育成モデル支援事業の成果と
他業界への波及について
3 イノベーション・ハブ・ひろしまCampsの取組について
4 県内の民間住宅の耐震化促進について
5 広島叡智学園の取組について
6 ローカル線を核にした適散・適集な地域づくりについて
自由民主党広島県議会議員連盟
出 原 昌 直
(あいさつ)
皆さん、こんにちは。自由民主党広島県議会議員連盟の出原昌直でございます。
本日は、予算特別委員会におきまして質問の機会を与えていただき、委員長をはじめ、先輩、同僚議員各位に厚く御礼申し上げます。
さて、昨年10月に策定した「安心▻誇り▻挑戦 ひろしまビジョン」の初年度となる令和3年度の予算編成をみますと、新型コロナ対策として,感染拡大防止対策や医療提供体制の確保、事業の継続や雇用維持などの経済活動を支える事業に取り組むこととされております。
一方で、新型コロナの影響などによる県税の収入の大幅な減少が見込まれるなど、厳しい財政状況であることから、一般財源の確保に向け、見直しをはかり、25億円を捻出されています。
また、今後は、高齢化の進展等による社会保障関係費の増加などに加え、新型コロナの影響による経済の低迷により、県税収入が大幅に減少することが予想されます。
県が今年度示した「今後の財政収支見通しについて」におけるリスクシナリオでは、県税収入等の見込みが令和元年度の水準まで回復するまで、8年間かかるとの見通しを示されており、財政状況は更に厳しさを増すことが見込まれています。
こうした厳しい中においても、新たなビジョンに掲げる「目指す姿」を実現していくために、施策や事業等のプライオリティや費用対効果の検証・評価を行い、県勢発展に必要な施策に対して、限りある経営資源を集中的に投下しなければなりません。まさに、湯﨑知事が言われている「最少の経費で最大の効果を挙げる」という基本方針のもと、「選択と集中」を図りながら、施策を推進していくことは、待ったなしの状況になっています。
そこで、これから質問する施策に関しては、最小の経費で最大の効果を発揮できたのかどうかを検証した上で、「選択と集中」を図る取組がなされるべきであると思います。本日はその視点で質問をしたいと思いますので、執行部の皆様には明瞭な答弁をお願いいたします。
(808文字)
1 朝ごはん推進モデル事業について
(1)平成30年度モデル事業の予算について
最初の質問は、「朝ごはん推進モデル事業について」であります。
県では、県内の全ての子供たちが朝食を食べることができる環境を整備し、子供の能力と可能性を高める基礎となる生活習慣を身に付けてもらうため、平成30年度からこのモデル事業に取り組まれています。
現在、この事業では、モデル校での朝食提供を継続し、運営体制や遅刻の状況、児童の学校生活での変化などを調査し、成果の検証を行うとともに、市町社会福祉協議会と連携して、全ての子供が朝食を食べることができる環境を整えるための仕組みの構築、いわば、全県的に効果を波及させる取組が進められております。
平成30年度の当初予算額は、4000万円と大きかったことから、議会の中でもいろいろと賛否がありましたが、この事業の実施により、いずれは全県的に効果を波及させるといった、取組の方向性を掲げられたこともあって、私は、「最小の経費で最大の効果を発揮できる事業だ」と思い、この取組に賛成したところです。
しかしながら、平成30年度の最終予算額は650万円程度と大幅に減額され、さらに、執行額としては450万円余となっております。当初予算の約1/10の執行額です。
そこで、平成30年度の予算額と執行額に大幅な乖離が生じているが、その理由について、健康福祉局長に伺います。
(534文字)
(答)
朝ごはん推進モデル事業につきましては,平成30年度の当初予算では,県内3か所でモデル事業を実施するに当たり,必要となる人件費をはじめ,食材の購入・運送に係る費用などの運営費を補助対象とすることを想定し,4千万円を計上しておりました。
しかしながら,事業を開始するに当たり,運営費を全て県で補助するよりも,自立運営が可能な仕組みを構築した方が,その後の事業の継続や他地域への波及につなげられると考え,持続可能な事業スキームの検討を進めました。
具体的には,市町や学校,地域のボランティア団体等と協議を重ね,実施手法について検討を進めるとともに,企業に対して食材の無償提供を働きかけ,実施主体となるボランティア団体等が,企業から無償で提供を受けた食材を学校の敷地内において提供する現行のモデル事業の実施方法を構築いたしました。
その上で,県は,事業立ち上げ時に必要な施設の改修や備品整備など,一定のイニシャルコストについてのみ,補助対象とすることとし,平成30年度は,県内2校におけるモデル事業の開始に必要となる経費の補助を行ったことから,執行額としては450万円余となったところでございます。
(2)令和元年度モデル事業の予算について
令和元年度の当初予算額は、平成30年度の事業の検証を行った上で、2500万円余の予算の組み立てを考えられたと思いますが、最終予算額は750万円余、執行額も300万円程度と低くなっております。
そこで、令和元年度の予算額について、平成30年度の執行額に対して多額となっているが、どのような取組を考えられていたのか、また、令和元年度の予算額と執行額の乖離の理由についても、併せて健康福祉局長に伺います。
(189文字)
(答)
朝ごはん推進モデル事業は,平成30年11月に1校目,平成31年2月に2校目の取組みが開始したところであり,令和元年度の予算計上時には,さらにモデル事業の実施校を8校増やし,その立ち上げ費用を補助することを見込んでおりました。
しかしながら,この事業を実施するためには,まずは地域のボランティア団体に,主体的に活動いただく必要があることに加えて,市町の福祉部門や教育委員会,学校現場の連携・協力が不可欠であることから,調整に時間を要する面がございました。
また,子供たちにどのような変化が表れているのか,成果が見えない中では,新しい取組に賛同を得にくい面もあり,令和元年度は,新たに1か所でのモデル事業開始にとどまったため,乖離が生じたものでございます。
(3)モデル事業の評価と全県展開について
今年度の当初予算額は、570万円余と、対前年度の当初予算額と比較して大幅に減少し、来年度の予算額も550万円程度と更に少なくなっております。事業の位置付けも、重点事業から一般事業に変わっています。
また、現在の進捗状況を見ても、3年間でモデル校が3箇所と少なく、このような状況で、果たして全県的に波及させていくといった事業効果がうまれていくのか疑問であります。地域全体を巻き込んだ効率的な運営や事業の持続可能性及び全県に波及させるといった、取組の方向性を変えたのでしょうか。これでは、最小の経費で最小の効果をうむ事業であると言えるのではないでしょうか。
そこで、この事業の進捗状況をどう評価し、また、この事業をいつまでに県内全域に展開しようと考えているのか、今後の方針について健康福祉局長の所見を伺います。
(347文字)
(答)
令和2年度の朝ごはん推進モデル事業におきましては,コロナ禍の影響によって,昨年3月に,3校ともモデル事業を一時中断しており,成果検証には至っていない状況でございます。
一方,この事業におきましては,協力企業から頂いた食材を,各市町の社会福祉協議会を通じて,個別の子育て家庭に提供する取組も行っており,こちらの取組は,コロナ禍においても継続して実施しているほか,2月からは,取組を9市町から14市町に拡充したところでございます。
こうした取組を通じて,県内全ての子供たちが朝食を食べられる環境を整え,子供たちが能力と可能性を高めるために必要な生活習慣を身に付けることがこの事業の目的であることから,来年度は,その目的の達成に向けて現在の3校でのモデル事業を継続し,事業全体の成果検証を行った上で,今後どのようなやり方で,その効果を全県に波及させていくことができるか,検討してまいりたいと考えております。
2 運輸業人材確保・育成モデル支援事業の成果と他業界への波及について
続きまして、質問の2番目は、「運輸業人材確保・育成モデル支援事業の成果と他業界への波及について」です。
運輸業界では、人手不足が深刻な状況であることから、県では、(公社)広島県トラック協会と連携して、業界イメージの向上に向けたプロモーション活動と女性ドライバーの入職促進を図るとともに、この取組を、運輸業界以外の他の業界に波及させることを目的として、平成30年度から、2年間、国の制度を活用して「運輸業人材確保・育成モデル支援事業」を実施されました。
一方で、この事業の開始にあたり、多種多様な業界で人材不足が起こる中で、運輸業界という特定の業種に限定して行うことについて、常任委員会でも質問をし、この事業の成果を人手不足が課題となっている他業界にも取組を波及させる狙いもあるとのことで、この取組に期待しておりました。
事業を開始した平成30年度の当初予算額は、1400万円、令和元年度では、約2400万円と多額であったことから、運輸業界団体においても、この事業への期待は大きかったのではないでしょうか。
しかしながら、平成30年度の執行額は630万円余、令和元年度も、執行額が820万円余と、当初の見込みどおりの執行とはなっておりません。
また、実績としても、令和元年度は、新規雇用創出が5名に留まり、国における事業継続要件である目標20名の7割の14名以上に達しなかったことで、令和元年度で事業は中止となったと聞いています。この事業では、最小の経費で最小の効果すら生まれなかったといえるのではないでしょうか。
そこで、この事業について、平成30年度・令和元年度の2年間の取組をどのように分析しているのか、また、この事業を通じて、人材不足をかかえる業界に対して今後どの様な施策に取り組んでいくのか、併せて商工労働局長の所見を伺います。
(746文字)
(答)
運輸業人材確保・育成モデル支援事業につきましては,人手不足が顕著な運輸業界を取り上げ,女性の人材確保を進めていく計画のもと実施をいたしましたが,就職者数が目標に達しなかったため,2か年で終了することとなりました。
就職者数が目標に達しなかった主な要因といたしましては,勤務時間や就業エリアなど勤務条件面が,折り合わなかったことなど,柔軟な勤務条件の設定が課題となったと受け止めております。
一方で,業界イメージアップ,合同での業界入門セミナー・面接会,採用者へのスキル等獲得支援のパッケージ化が人材確保を図る上で一定の効果を上げたという評価の声も参加した企業からいただいております。
今回の取組を通じて,人材不足を抱える業界については,業界や業種に対するイメージアップ戦略,企業における人材育成支援の充実や働く人の状況に応じた就労しやすい勤務条件や業務の設定が重要であると考えております。
このため,求職者に対しましては,働き方改革実践認定企業における
・働きやすい職場環境づくりの具体的な取組内容や,
・そこで働く社員の声など,
業種ごとの優良事例を県のホームページであるHintひろしまやSNSなどを活用して,積極的に発信していくほか,キャリアコンサルティングによる就職支援を行う中でも,積極的に紹介していくことで,業界等に対するイメージアップを図り,人手不足業種等への労働力移動を促進してまいります。
また,企業に対しましては,働き方改革や女性活躍の推進において,経営者層向けのセミナーや専門家によるアドバイスを行うことで,従業員の確保・定着に向けて必要な取組の理解促進を図ってまいります。
3 イノベーション・ハブ・ひろしまCampsの取組について
質問の3番目は「イノベーション・ハブ・ひろしま Campsの取組について」です。
平成29年3月に設置した新たなビジネスや地域づくりなどにチャレンジする多様な人が集まるイノベーション創出拠点、「イノベーション・ハブ・ひろしま Camps」においては、多様な人材、資金、情報等を集積・結合し、新たなつながりやイノベーションが次々と生まれる好環境を形成することを目指しており、開設してもうすぐ4年が経過するところであります。
これまでの4年間にかかった経費をみると、広島市の紙屋町に所在する事務所の賃料に約7800万円、その他、起業・新事業展開に関する相談や会員同士のネットワーク構築などを促進するためのコーディネーターの配置に係る費用に加え、交流イベントなどを含めた経費に、当初予算ベースで約2億7300万円となっています。
先輩起業家と起業を目指す人との交流などを通じて、平成30年度では10件、令和元年度においては、20件の事業が創出されておりますが、具体的な経済効果は、どの程度うまれているのか分かりません。
また、この取組で、県が目指すべき最大の効果が発揮される状態とは、ひろしま Campsの様なイノベーションの創出を目指すハブ拠点が全県的に設置されることだと私は考えますが、取組の最終的なゴールがどういう状態になることをイメージされて、また、終了時期をいつ頃と考えているのでしょうか。
そこで、これまでの取組をどう評価し、また、この取組を県がいつまで継続して実施していくつもりなのか、今後の方針について商工労働局長に伺う。
(648文字)
(答)
イノベーション・ハブ・ひろしま Campsにつきましては,開設後
約4年を経過し,会員数は約2,000人となっております。
また,企業経営者や起業家による講演会や,新規事業のアイデア創出,マーケティングを支援するプログラムや相談などに,延べ約35,000人の利用者があり,本県のイノベーション創出の好循環を形成するためのハブ機能を果たすとともに,そこで生まれたつながりから,新たな事業も創出されているところでございます。
さらに,
・Campsへの相談をきっかけに,海外スタートアップ企業が日本での拠点を広島に置くこととなったことや,
・昨年7月に内閣府が全国8か所を選定したスタートアップ・エコシステム拠点都市に広島県が選ばれた際には,Campsが設置されていることが,評価の理由の一つであったことなど,
Campsが本県のイノベーション推進に寄与していると考えております。
一方で,本県のイノベーション・エコシステムの形成に向けましては,新たなアイデアや価値が創造されてはいるものの,イノベーションが次々と生まれる状況とまでは言えず,こうした活動やコミュニティをより活発で持続的なものにしていくことが課題であると認識しております。
そのため,本県において,次々とイノベーションが創出される好循環を生み出していく上で,さまざまなつながりの創出や,高い志を持つ人材の集積・交流などが生まれる拠点機能をもつことが重要であると考えており,今後,アクションプランの期間である5年間において,イノベーション・エコシステムの形成に向けた取組の進捗状況を勘案しつつ,Campsのあり方について,検討してまいります。
また,こうしたCampsの取組が地域の取組にも波及し,例えば,東広島市が設置している「東広島イノベーションラボ ミライノ」や,福山市や尾道市での,民間の交流施設の取組などにもつながっており,こうした県内のイノベーション関連施設などとも効果的に連携しながら,県内全体のイノベーション・エコシステムの構築につなげてまいりたいと考えております。
4 県内の民間住宅の耐震化促進について
質問の4番目は、「県内の民間住宅の耐震化促進について」でございます。
先月、2月13日に福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震があり、最大震度6強を観測しました。
本県においても、南海トラフ地震等の発生が懸念される現状を踏まえ、危機感を持ちながら積極的に、居住者の生命、身体及び財産の保護に重要な住宅について、耐震化を進めていく必要があると考えております。
現在、県では、大規模な地震発生時に倒壊して多数の死傷者が発生するおそれのある大規模建築物などについては、所有者による耐震改修や建て替え、解体を支援する市町に対して補助を行っていますが、それ以外の民間の建物の耐震改修等に対する支援では、本県は全国で相当遅れている状況であります。
この問題に対して、早期に対応するため、私は、昨年2月定例会の一般質問においても、市町に耐震化補助等の制度の創設を働きかけるというのではなく、県が率先して早期に制度を創設するよう、これまで要望してきたところですが、来年度から新たに、「民間住宅の所有者による耐震改修を支援する市町への補助」を行う予算が計上されており、大変感謝しているところであります。
そこで、来年度計上されている、予算額2500万円の事業スキームや、その内容について都市建築技術審議官に伺います。また、今後の民間住宅の耐震化促進に向けて、どのように取り組んでいくつもりか、併せて都市建築技術審議官に伺います。
(598文字)
(答)
民間住宅の耐震化につきましては,これまで,広島県耐震改修促進計画の第2期計画に基づく県と市町の役割分担を踏まえ,各種イベントや技術講習会の開催など地震防災に対する県民意識の向上に取り組むとともに,市町における補助制度の活用により耐震化の促進を図ってまいりました。
こうした中,
・所有者の経済的負担が大きいことや,
・耐震化を要する住宅の多くが建替更新時期を迎えている
などの理由により,補助制度の活用が進んでいなかったことから,第3期計画の策定と合わせて,所有者のニーズを的確に捉えた,より利用しやすい制度の創設について検討してまいりました。
その検討結果を踏まえ,来年度実施する「建築物耐震化促進事業」においては,耐震性が不足する木造戸建て住宅を対象に,市町と同額の25万円を県が支援することにより,国の支援と合わせて1戸当たり最大100万円まで補助することが出来る新たな制度を創設することといたしました。
さらに,建替更新時期の住宅の耐震化を促すため,建替や除却についても補助対象に追加し,災害リスクが低く,利便性が高いエリアに居住が誘導された持続可能なまちづくりの実現に向けて,居住を誘導する区域内の住宅を重点的に支援することとしております。
来年度は,2500万円の予算を計上しており,まずは補助件数100戸を目標に,市町と連携しながら事業の推進を図ってまいります。
また,今後の取組といたしましては,現在,策定を進めている第3期計画で掲げる今後5年間で住宅の耐震化率を84.5%から92%に引き上げることを目標に,引き続き,市町など関係団体と連携しながら,県民の安全・安心の確保に向けて,民間住宅の耐震化を促進してまいります。
5 広島叡智学園の取組について
質問の5番目は、「広島叡智学園の取組について」でございます。
この度の定例会において、県立高等学校の再編整備ということで、広島県立高等学校等設置条例改正の議案が提出されていますが、その議案では、安芸高等学校と呉昭和高等学校の廃校が示されているところであります。
教育という分野において、「選択と集中」という取組が馴染むかどうかは分かりませんが、今回の再編整備について、教育委員会では2つの高等学校の廃止という「選択」をしたのではないかとも思います。
一方、広島叡智学園については、平成31年度に開校し、「社会の持続的な平和と発展に向け、世界中のどこにおいても地域や世界の「よりよい未来」を創造できるリーダーを育成する」というビジョンを掲げております。この広島叡智学園の教育実践の取組を県内全域に広めていくということで、まさに「学びの変革」の目指すべきモデルとして位置付けられ、「集中」的な取組がなされているところです。
具体的な取組をみると、海外大学に進学した場合でも通用する英語力を身につけるために、段階的に他の教科の授業も英語で行うなど、工夫されたカリキュラムが組まれているそうです。また、少人数で生徒のレベルに合わせながら英語を学べることなど、生徒一人一人に向き合った「個別最適な学び」を進めることができるようです。さらに、多様性を育むため、高校の段階から留学生を受けいれる予定となっています。
また、広島叡智学園は、多島美や自然の豊かさから、海外からも注目を浴びる瀬戸内海のほぼ中央に位置する大崎上島に所在しております。恵まれた自然に囲まれ、ゆったりとしたキャンパスは、生徒の知的好奇心や感性を育むのではないでしょうか。
一方で、広島叡智学園は、「学びの変革」を先導的に実践するという役割を担っているとはいえ、学校施設や外構等の建設工事費や備品や施設の維持管理などの学校運営費に多額の予算がかかっているのも事実であります。限られた予算を「選択と集中」により配分されていると思いますが、県民の皆様にも納得いただけるような効果を示す必要があると思います。今後、どのようにして、「学びの変革」を県内他校へ波及させていくのかといった見通しを目に見える形で示す必要があると考えます。
そこで、これまでの取組をどう評価し、今後、他校に展開しようとしている取組の成果とは、具体的にどのようなものを考えており、その成果をどのように県全体の教育水準の向上につなげるつもりなのか、教育長に伺います。
(1035文字)
(答)
広島叡智学園は,本県の学びの変革の取組を先導的に実践して,その成果を県内に広く普及させることで,県全体の学びの変革の早期実現につなげることを目的に設置した学校であり,昨年10月には,国際バカロレア機構から西日本の公立学校で初となるMYP,ミドル・イヤーズ・プログラムの認定を受けたところでございます。
昨年度の開校以来,大崎上島の豊かな自然や開放感あふれる学習環境を生かし,地域の課題を解決するプロジェクト学習や,効果的なデジタル機器の活用などを通して,主体的・協働的に学ぶ生徒の姿が見られるようになっており,学びの変革の取組を先導的に実践することができていると評価しております。
広島叡智学園では,例えば,プロジェクト学習として,循環型社会の形成に向けて地元の水産会社に働きかけ,かき殻の再利用に取り組んだり,生徒自身が学校のウェブページをプログラミングにより作成したりするなどの先進的な取組を行っており,こうした成果について,公開授業研究会の実施や授業動画を視聴してもらうなど,多くの教職員に発信しているところでございます。
引き続き,授業動画の公開や教職員の研修会など様々な機会を通して,学びの変革を先導的に実践した成果の普及に努め,県全体の教育水準向上につなげてまいります。
6 ローカル線を核にした適散・適集な地域づくりについて
質問の最後は「ローカル線を核にした適散・適集な地域づくりについて」です。
新たなビジョンにおいては、「適切な分散」と「適切な集中」を創造する「適散・適集社会」のフロントランナーとして、「適散・適集」な地域づくりを掲げられています。新型コロナ危機を契機とした「空間」に対する価値観は、本県の強みである「密過ぎない都市」と「美しく自然豊かな中山間地域」による「都市と自然の近接性」と合致するものであり、この地理的特徴を最大限に活用するチャンスであるとまで言われています。
果たして、本当にそうでしょうか。コロナ禍で生まれた「適散・適集」という、都合の良い言葉を使用して、本県の置かれている厳しい現状を肯定しているのではないかとも感じられます。
特に、中山間地域では、若年層を中心とした人口の流出を背景に、集落の小規模化や高齢化が大きく進み、生活交通の縮小など、地域コミュニティを維持していく上で、深刻かつ厳しい状況に直面しています。
このような厳しい状況は、ローカル線の沿線地域でも見られてきております。
先日、「JR西日本が新型コロナの影響で、利用者が落ち込むことにより、経営が悪化し、低収益のローカル線は廃止も含め、今後の在り方を見直し、地元と議論を進めていく」との記事が出されました。
平成30年春には、三江線が廃止されたところであり、コロナ禍の状況に加え、中山間地域の厳しい現状を踏まえると、私の地元を走る福塩線や芸備線などのローカル線がいつまで存続できるのか心配であります。現に、福塩線の無人駅では、駅にあったトイレすら廃止されるなど厳しい状況となっています。一方、都市部では、広島駅や福山駅において駅前開発が進められているなど、新たな賑わいの創出に向けた取組、まさに「適集につながる取組」が、実施されています。
そのため、ローカル線を存続させるためには、沿線市町と連携し、県において、日常生活の交通手段としてだけではなく、それぞれの地域の核となる駅を守っていく取り組みを民間であるJRに任せるのではなく、行政として真剣に考えていく事が適集に向けて必要であると思います。
平成29年の予算特別委員会において、私が、駅及び駅周辺の地域の賑わいの創出について質問したところ、「まちづくりの観点も踏まえながら、鉄道駅の交通結節点としての機能向上を図ることで、利用者の増加と、駅及び駅周辺の賑わいの創出の好循環が形成されるよう、鉄道事業者や市町とともに取り組んでまいります。」との答弁もありました。
そこで、現在、ローカル線の駅及び駅周辺の取り巻く現状についてどう捉えているのか、また、それぞれの地域の核となる駅を守るため市町と連携してどう取り組んでいこうとされているのか地域政策局長へお伺いします。
(1137文字)
(答)
鉄道駅は,バス,タクシー等との交通結節点であり,その周辺には,商業施設や集客施設,住宅が多く立地するなど地域の核となってまいりました。
しかしながら,モータリゼーションの進展や,人口減少により,いわゆるローカル線の利用者は長期にわたって減少傾向が続いており,また,郊外型大型商業施設の立地などによって人の流れに変化が生じた地域もございます。
こうした中,市町においては,
・三次駅や備後庄原駅における高速バスや路線バス等との交通結節点としての機能強化や,地域交流施設の整備
・向原(むかいはら)駅における駅舎へのコワーキングスペースの開設
など,拠点性を高める駅周辺整備が行われ,今後,府中市においても,府中駅周辺地域を「にぎわいと交流のエリア」と位置づけ,拠点機能の強化に取り組む予定とされております。
県では,今年度,新たに 「鉄道ネットワークを活かした中山間地域の魅力向上事業」を開始し,芸備線や福塩線を対象に交流の拡大や利便性の向上に取り組む市町や沿線協議会に対する支援を行っているところでありまして,例えば,芸備線沿線4市の拠点駅とその周辺で開催されたマルシェを周遊するイベントでは,多くの方々に御参加いただいたところであります。
県といたしましては,今後とも,こうした事業により,沿線市町と連携して,
・鉄道を核とした地域交通の利便性向上
・駅舎を活用したイベントによる魅力発信
・鉄道を利用した広域観光の促進
に取り組み,地域の核である鉄道駅やその周辺の活性化を目指してまいります。