活動報告

活動報告:一般質問答弁実録

令和6年6月定例会 一 般 質 問 《6月27日(木)3番手》答弁実録

 

令和6年6月定例会

一 般 質 問

《6月27日(木)3番手》

1 広島県の将来の羅針盤となる新たな成果指標について【知事】

2 協業と競争の両立を目指した政策実現について

(1)地域の特性を生かした地域づくりの実現について

(2)県域を越えた連携体制の構築について      【知事】

3 空き家の耐震化と活用の一体的な取組について

4 当たり前の視点からの業務プロセスの改善について 【知事】

5 世界バラ会議を起点とした県内全域への周遊促進について

                            【知事】

6 持続可能な地域コミュニティの実現について

 

 

 

自由民主党広島県議会議員連盟

出 原 昌 直

 はじめに 

皆さん、こんにちは。

自由民主党広島県議会議員連盟、福山市選出の出原昌直でございます。

今次定例会、最後の質問者となります。

質問の機会を与えていただいた中本議長、緒方副議長をはじめ、先輩、同僚議員の皆様に、心から感謝を申し上げます。

おかげさまで、10回目の一般質問を迎えることができました。

一回目は地元から傍聴に来ていただいた方が67名、今回は44名と右肩下がりの状況ではありますが、一生懸命がんばって参りたいと思います。

振り返ってみますと、一般質問などでの共通するテーマとして、人口減少や転出超過対策、JR沿線のまちづくり、瀬戸内DMOをはじめとした観光事業、地方創生と一極集中、伝統産業や地場産業の継承と発展、空き家や耐震化の問題について質問を行ってきました。

中には、一定の成果があらわれているものもありますが、なかなか改善していないものや、さらに状況が悪化しているものも多くあります。

10回という節目を迎えたいま、改めて、広島県の現状を踏まえた課題認識について質問したいと思いますので、知事をはじめ、執行部におかれましては、簡潔かつ明瞭な答弁をお願いし、質問に入ります。

(420字)

1 広島県の将来の羅針盤となる新たな成果指標について 

質問の第1は、広島県の将来の羅針盤となる新たな成果指標について、お伺いいたします。

 

ひろしまビジョン

昨日の一般質問でも、我が会派の林議員から、折り返し地点を迎えた「安心・誇り・挑戦ひろしまビジョン」の見直しについて質問が行われました。

ビジョンの取組によって、県内経済活動の成果である県内総生産や一人当たり県民所得を向上させることは、県内事業者や県民の誰もが求めるところではありますが、いずれの指標も令和3年度には少し持ち直したものの、平成29年度から令和2年度まで右肩下がりの状況にあります。

現在広島県では、デジタル技術やデジタルサービスを活用して、様々な分野においてデジタル化を強力に推進しています。デジタル化が人手不足の解消や業務の効率化による生産性の向上に資することは言うまでもありませんが、生産性の向上を実現することによって、県民所得等の増加に繋げていくことが重要になります。

これまでも委員会などの場で繰り返し質問してきましたが、本県では、県内総生産や県民所得といった経済指標を目標に掲げていないため、ビジョンに掲げる取組を進めることで、県内総生産や県民所得といった指標にどのような効果があったのかといった施策の成果を知ることができません。

ビジョンでは、観光や産業、農林水産業などの各分野における182のKPI、いわゆる重要業績評価指標を掲げており、令和4年度の達成率は56%となっています。

県が施策を進める上で大きな目標を掲げることは大変重要なことであり、KPIの達成率がたとえ100%であったとしても、県内総生産や県民所得が向上していなければKPIの設定目標が正しかったとは言えず、取組の方向性を見直す必要がある一方で、達成率が50%であってもこれらの指標が向上していれば施策の成果が現れていると言えるのではないかと思います。

他県等の取組

宮城県では、平成19年3月に県政運営の基本方針である「宮城の将来ビジョン」を策定し、県内総生産10兆円を達成することを最重要目標に掲げて取組を進めた結果、自動車関連産業や高度電子機械産業などのものづくり産業における企業誘致や雇用創出が実を結び、平成30年度に県内総生産が初めて目標の10兆円を突破し、県民所得も増加しました。

そのほかにも、群馬県、長崎県、山梨県など多くの県で県内総生産や県民所得といった指標について目標値を掲げています。

さらに、産学官民一体の組織である福岡地域戦略推進協議会は、域内の総生産成長率を地域戦略に掲げ、福岡都市圏の成長に繋がる様々な取組を展開しており、先日、視察で訪れた際にお話を伺ったところ、こうした経済指標を戦略に掲げることは民間の感覚では当然のことだそうです。

成果指標の策定

国は以前、名目国内総生産を600兆円に増やす目標を掲げておりましたが、今年1月に閣議決定された「令和6年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」によると、令和6年度の国内総生産は600兆円を超えて、過去最高になると見込まれています。

広島県の令和3年度の県内総生産は約12兆円となっていますが、国が目標値を掲げたように、本県でも目標値があれば、県が順調に成長したかどうか県内事業者や県民がわかりやすく理解できるのではないでしょうか。

広島県の将来の目指すべき姿を数値目標として掲げることで、県がどのような目標で施策を推進していこうとしているのか、また、各施策を進めることで、県内総生産や一人当たり県民所得といった極めて重要な指標にどのような効果があるのかといったことを県内事業者や県民にしっかりと示す必要があるのではないかと考えます。

そこで、お尋ねをいたします。県が施策を進める上で、県内総生産や一人当たり県民所得の向上を実現していくことは極めて重要なことであることから、「安心・誇り・挑戦ひろしまビジョン」の見直しに当たっては、県内事業者や県民が施策の方向性や実効性を判断するための成果指標を設定するなど、経済成長目標を掲げることも検討してはどうかと考えますが、知事の御所見をお伺いいたします。            (1,654字)

(答弁者:知事)

 「安心・誇り・挑戦 ひろしまビジョン」では、県民の皆様一人一人が「安心」の土台と「誇り」により、夢や希望をあきらめることなく「挑戦」できる社会の実現を目指し、17の施策領域ごとに10年後の目指す姿と指標を設定しており、PDCAサイクルによる施策マネジメントを通じて、目標達成に向けた取組の軌道修正や加速を図っているところでございます。

 経済成長に関する指標につきましては、

 ・ 「産業イノベーション」の領域における「県の取組による付加価値創出額」や、

 ・ 「農林水産業」の領域における「農業生産額」、

 ・ 「観光」の領域における「観光消費額」

などのビジョン指標に加えて、ビジョンの実行計画であるアクションプランにおきまして、

・ 「健康・医療関連分野の付加価値額」や、

・ 「環境・エネルギー分野の付加価値額」

など、様々な指標をKPIとして設定しているところでございます。

 議員御指摘の県内総生産や県民所得につきましては、景気動向や社会情勢など、県の施策以外の外部環境に大きく影響されるものであり、県の施策等の寄与度を測定することが困難であるため、PDCAを着実に回す観点から、目標値としては設定しておりませんが、ビジョンに掲げる基本理念や目指す姿に近づいているかを検証するための指標として重要なものと認識しており、毎年度、その推移も注視しながら、施策を推進しているところでございます。

 今後、ビジョン策定後の様々な情勢変化に対し、柔軟かつ適切に対応していくため、これまでの成果と課題も反映させながら、ビジョンの見直しを行うこととしており、その中で、ビジョンの目指す姿の実現に向けて、県内事業者や県民の皆様に分かりやすく、施策の効果をより適切に測ることができる指標につきましても検討してまいりたいと考えております。
2 協業と競争の両立を目指した政策実現について 

質問の第2は、協業と競争の両立を目指した政策実現について、2点お伺いいたします。

(40字)

(1)地域の特性を生かした地域づくりの実現について

1点目は、地域の特性を生かした地域づくりの実現について、お伺いいたします。

 

人口減少の加速

総務省統計局が今年4月に公表した令和5年10月1日現在の日本の総人口は、約1億2千万人と、前年に比べて59万5千人減少し、13年連続の減少となりました。

将来的には日本の総人口が1億人を下回るのではないかと懸念される中、今後は、地域社会の担い手が減少することによって、単独の自治体で全ての行政サービスを提供していくことが困難になることが予想されます。

各自治体では、人口減少や人口流出を喫緊の課題と捉えて、様々な対策を実施していますが、他の自治体との差別化を図ることは困難であり、結果として、どの自治体も似たような取組となる傾向にあります。

県は施策を進める上で、選択と集中という言葉を繰り返し使用されていますが、選択と集中とは端的に言えば「諦める」ということであり、地域を越えた取組には「諦める」という考え方も大切ではないかと感じています。

備後地域振興協議会の取組

福山市など備後地域の4市2町の自治体では、備後圏域全体の一体的な発展を図るため、広島県備後地域振興協議会を発足し、港湾・空港・道路といったインフラ整備や地域産業の活性化に向けて取組を進めています。

とりわけ、人口減少や人口流出への対応は、地方共通の喫緊の課題であるという共通認識のもと、県に先んじて、人口流出対策プロジェクトチームを立ち上げており、私はそのプロジェクトリーダーとして、地元議員や関係市町と一緒になって取り組んでいるところです。

プロジェクトチームでは、各自治体の強みに特化した取組を進めることによって地域の価値を高めることとしており、例えば、福山市は交通や物流の拠点性が高く企業活動しやすいという利点を生かした仕事や産業を中心とした施策に特化し、尾道市は歴史情緒あふれる町並みを生かした移住施策、神石高原町は恵まれた自然環境を生かした農業や畜産業のほか、子育て世代に向けた施策に特化するなど、他の地域と差別化を図ることで、備後地域全体の持続的な発展を実現させることについて、今後検討していきたいと考えています。

特性を生かした地域づくり

県内の各市町では、地域が有する地形や豊かな自然環境、美しい景観、伝統文化といった地域の特性を生かした地域づくりに取り組んでおられますが、地域の特色や既存の地域資源を十分に生かし切れているとは言えません。

各市町が、県内外の多様な価値観やニーズを持つ方々から選ばれるには、地域の特性や地域資源の価値に応じた施策を推進していくことはもとより、地域の魅力を最大限に生かしながら、他の地域と連携し個性豊かで多様な地域づくりを目指していく必要があります。

そこで、急激な人口減少社会を迎える中、各市町が、県内外の多様な価値観やニーズを持つ方々から選ばれる地域となるためには、地域の特性や既存の地域資源を十分に生かしていくことが重要だと考えますが、現状の課題をどのように認識し、今後、市町を支援していくためにどのような取組を推進していこうとされているのか、知事の御所見をお伺いいたします。                           (1,252字)

(答弁者:地域政策局長)

 人口減少や少子高齢化の急速な進展など、社会経済情勢が大きく変化する中、

市町におきましては、個性ある、豊かで持続可能なまちづくりの実現に向けて、

各市町が持つ豊かな自然や歴史・文化、スポーツ資源、産業集積など、

多様な魅力や特性を生かした取組が行われているところでございます。

しかしながら、こうしたまちづくりを進めるに当たり、

多くの市町に共通する課題といたしましては、

・ 若年層を中心とする人口の流出、

・ 人口減少に伴う地域経済の縮小や担い手の不足、

・ 地域資源の魅力の発信力の不足

などがあると認識しているところでございます。

このため、県といたしましては、 知事と、市長・町長による

「行政懇談会」など、様々な場面において、市町の現状や課題について

意見交換を行うとともに、地域における具体的な課題の解決に向けて、

・ 都市と自然の近接性という地域特性を生かした移住促進の取組、

・ 中山間地域に根差した活動を行う人材の育成に向けた「チーム500」の取組、

・ 地域の特色あるスポーツ資源を活用した「わがまちスポーツ」の取組

などについて、今後も取組を進めていくこととしております。

引き続き、県と市町の施策の方向性を合わせ、緊密な協力関係を

構築しながら取り組んでいくことが重要であると認識しており、

市町の主体性・独自性を尊重しつつ、内外から魅力ある地域として選ばれるよう、

市町と連携し、取り組んでまいります。
(2)県域を越えた連携体制の構築について

2点目は、県域を越えた連携体制の構築について、お伺いいたします。

 

瀬戸内ブランドの成果

知事は就任以来、瀬戸内ブランドの確立に尽力されてこられました。

広島県が生産量日本一を誇る瀬戸内広島レモンのブランド化や、瀬戸内全体の観光産業の活性化を推し進めるせとうちDMOの創設のほか、瀬戸内しまなみ海道のサイクリングロードなど、知名度の向上に加えて、国内外から多くの方々が訪れる観光地づくりが実現しています。

他の都道府県でも観光施策や観光振興を重点的に打ち出している中、差別化を図ることは容易ではない取組であり、県域を超えた大きな成果であったと思います。

福岡半導体リスキリングセンター

本県では、他県に先駆けてDXやデジタル化の推進に取り組まれており、これまでのノウハウが蓄積されています。

同様に、他県においても、各分野において様々なノウハウを蓄積されていることから、本県の先進的な研修を他県に提供し、それ以外の分野においては、他県の先進的な取組を相互に活用することで、より効果的で効率的に施策を推進することができるのではないでしょうか。

他県の取組例でいえば、福岡県は令和5年8月に、半導体人材を育成するための「福岡半導体リスキリングセンター」を開設し、開校初年度に県内外から4,000人を超える受講があるなど、福岡県内に限らず、全国から注目を集めています。

この施設では、福岡県内の中小企業に補助金を出して受講料を無料にしているほか、講座の7割をオンラインで実施することによって、県内外から多くの方が参加しやすい環境を整備されておられます。

施設を設立した福岡県産業・科学技術振興財団は、半導体人材の育成に20年以上に渡って取り組まれており、蓄積されたノウハウを生かして環境を整備されましたが、広島県で同様の施設を20年かけて作り上げることは容易ではありません。

半導体人材育成のための研修をゼロから作りあげるには多くの人手とコストが必要となるため、他県では、福岡半導体リスキリングセンターに補助金を拠出するなどして施設を活用することを検討しているところもあるようです。

本県では、半導体大手のマイクロンの進出もあり、半導体人材の育成に向けて産学官が連携して取り組まれていますが、他県での取組を活用することも不足する半導体人材の育成のためには有効な手段となりうるのではないでしょうか。

県域を越えた連携

これまでの研修は現地に行くことが一般的でしたが、オンラインが進んだからこそ、あらゆることが地域や県域を超えて共有できるようになりました。

本県としても、人材の有効活用とコスト削減に向けて、県域を超えた連携に積極的に取り組んでいただきたいと思います。

そこで、お尋ねをいたします。広島県では人材育成のための様々な研修等を実施していますが、本県が他県に先駆けて取り組んできたDXやデジタル化の推進については、そのノウハウや研修を他県にも開放するとともに、福岡半導体リスキリングセンターなど、他県の素晴らしい取組については、積極的に活用することを検討してはどうかと考えますが、人材育成を進める上で、県域を越えた連携にどのように取り組まれていこうとされているのか、知事の御所見をお伺いいたします。               (1,299字)

(答弁者:知事)

 イノベーション立県の実現に向けましては、社会・経済の急激な変化に対応することができる多様な人材が集い、つながることが重要であることから、本県におきましては全国に先駆けた様々な人材育成に関する取組を行ってきたところでございます。

 具体的には、企業の経営戦略を実現するための人材育成であるリスキリングの推進に向けて、全国初となる県内公労使で構成する「広島県リスキリング推進検討協議会」を設置し、その報告書に基づく、企業向けのリスキリング推進ガイドラインを策定・周知するとともに、県独自の宣言制度等を通じた理解促進を実施しております。

 また、デジタル人材を県・市町が共同で採用・育成・活用する新たな枠組みとして、「DXShipひろしま」を構築しており、本県の取組を参考とし、総務省とデジタル庁が連携し、全ての都道府県での推進体制構築を支援することとされております。

 これらの取組は、県内で実施するのみならず、先進的な取組として、他の地域の団体に対しても、取組状況や成果、課題などを提供しております。

 さらに、半導体人材の育成につきましては、広島大学を中心に、産学官による「せとうち半導体コンソーシアム」を設立し、県内の企業のみならず首都圏を始めとした全国の企業が参加するなど、県域を越えて、高度半導体人材の育成に取り組んでおります。

 一方で、他地域の取組の積極的な活用も行っており、例えば、産学官が連携して高校生がAIを学ぶ環境を構築する山形県の取組を参考にしながら、広島版のAI人材育成モデルとして、今年度から高校生を対象に「ひろしまAI部」をスタートさせたところであり、若い世代がリードしているAIの分野で将来活躍する人材を輩出してまいりたいと考えております。

 このように、本県の取組を他地域に開放し、そこからの意見や成果を本県の施策に還元するとともに、他地域の優良事例を積極的に活用することで、本県の人材育成施策を強力に進め、イノベーション立県の実現につなげてまいりたいと考えております。
3 空き家の耐震化と活用の一体的な取組について 

質問の第3は、空き家の耐震化と活用の一体的な取組について、お伺いいたします。

 

木造住宅の耐震化

知事は地震防災対策の強化のためのハード・ソフト一体となった取組を進めていく必要性について言及されており、特にハード面では、能登半島地震で木造住宅の低い耐震化率が被害拡大の一因であったとも指摘されていることから、木造住宅の耐震化をしっかりと進めていかれるとのことです。

県は、地震による住宅の倒壊等の被害を防止するため、令和3年度に県と市町共同の補助制度を創設し、市町の協力を得ながら、民間の木造住宅の耐震化促進に向けて取組を進めています。

補助制度に参画する市町は、令和3年度が5市町にとどまっていたものの、県主導で取組を進めたことによって、令和5年度には13市町まで広がりを見せており、一定の成果を上げられました。

しかしながら、予算の執行額に目を向けると、昨年度は予算額7,500万円に対して執行額はわずか700万円と活用が進んでいません。

要因の一つとして、実際の工事費が補助上限額の100万円を大きく超過するため、所有者の持ち出しが多くなってしまうことが挙げられていますので、所有者の負担軽減のためにも、補助上限額の引き上げを検討していただきたいと思います。

空き家の耐震化

また、居住実態のない空き家は補助の対象に含まれておらず、空き家を活用したいと考える個人や事業者のニーズに答えるためにも、補助対象の見直しが必要ではないかと考えます。

本県では、空き家の活用を促進するため、空き家物件の情報を掲載した空き家バンクの充実や、市町や地域団体が取り組む空き家対策を支援するための専門家の派遣など、市町や関係団体との連携を図りながら、様々な空き家対策に取り組んでおられます。

一方で、総務省が令和6年4月末に公表した住宅・土地統計調査によると、広島県の空き家の割合は全国平均の13.8%を上回る15.8%であり、その割合は今後も増加する見通しです。

増え続ける空き家を有効に活用するためには、これまでの取組に加えて、空き家の耐震化についても積極的に支援するなど、空き家の耐震化対策と空き家の有効活用を一体的に取り組まなければなりません。

そこで、空き家を有効に活用するためには、空き家の耐震化と一体的に取り組んでいく必要があることから、民間住宅の耐震化を促進するための補助制度について、居住実態のない空き家であっても今後の活用が見込まれる場合には補助対象に含めるなど、弾力的な運用に向けた見直しが必要だと考えますが、補助制度の見直しを含めて、空き家の耐震化にどのように取り組んでいかれるのか、知事の御所見をお伺いいたします。

                                (1,086字)

(答弁者:都市建築技術審議官)

 地震による住宅の倒壊等の被害を軽減するためには、住宅の耐震化は急務であると認識しており、木造住宅の耐震化を行う県民の皆様の負担を軽減するため、関係市町とともに補助制度を創設するなど、「災害死ゼロ」を目指して、住宅の耐震化率の向上に重点的に取り組んでいるところでございます。

 耐震化の目的といたしましては、まずは、居住する方が倒壊した建物の下敷きになることを防ぎ、人的被害を最小限に抑えることであるため、この補助制度におきましては、「現に居住の用に供する住宅」の耐震化を支援の対象としているところでございますが、今後の活用が見込まれる空き家につきましても耐震化の完了時に居住が確認できれば、支援の対象として取り扱っております。

 県といたしましては、住宅の耐震化の促進に向けて国に対して耐震改修等への財政措置の拡充や効果的な施策の取組について働きかけていくとともに、県民の皆様への補助制度の普及・啓発などに引き続き、市町と連携して取り組んでまいります。
4 当たり前の視点からの業務プロセスの改善について 

質問の第4は、当たり前の視点からの業務プロセスの改善について、お伺いいたします。

 

県条例の見直し

令和6年2月定例会において、条例の点検や見直しに伴う関係条例が提出され、約400件ある条例のうち、14件の条例が時代の変化に合わせて廃止や規定の整理が行われました。

令和2年度の予算特別委員会で、我が会派の緒方議員から、条例の規定が時代遅れになっているものや、社会情勢の変化に対応できていないものについて、総点検を実施した上で見直しを行っていくべきではないかとの質問がありましたが、その後、執行部において条例の点検と見直しに取り組まれた結果によるものだと理解しています。

他県では、制定した条例がその後の社会状況に適しているか、定期的な見直しを義務づけている自治体もあり、本県においても見直しのルール化が必要ではないかと考えます。

また、本来であればもっと早くに改善しなければならなかったことが、何かきっかけがないと見直しができないということにならないよう、足元を見つめ直して、あらゆる角度から施策を講じていくことが必要ではないかと思います。

業務プロセス改善

本県では、令和2年12月に策定した行政経営の方針において、行政のDXを推進することによる行政サービスの利便性の向上や、デジタル技術の活用等による生産性の高い働き方改革に取り組むことを掲げておられます。

県庁のデジタル化を推進していくことは大事なことですが、同時に、県庁内の業務でこれまで当たり前に行われてきたことが本当に正しいのかといった検証や、時代にそぐわなくなっているものであったり、デジタル化以外で業務の効率化ができる部分がないのかといった仕事の棚卸しを進めていく必要があります。

たとえば、コロナ禍ではテレワークが推奨され、県庁に出勤しなくても業務が円滑に進められることが証明されたにも関わらず、現在の実施率は少しずつ低下してきているように感じます。

職員の中には福山から広島まで通勤している方も多く、移動時間を考えると、Web会議やテレワークを活用して生産性の高い働き方を定着させていくことが、業務の効率化を図る上でも効果的ではないでしょうか。

日常の業務にある些細な見直しを行うという当たり前のことを当たり前に実行することで、県庁の皆様が日々行っている業務プロセスの見直しに繋がり、本当の意味で業務の効率化という大きな成果に結びついていくのだと考えます。

そこで、県は令和2年12月に行政経営の方針を策定し、県庁の業務の効率化などに向けた取組を推進していますが、これまでの取組に加えて、新たにどのように業務の効率化を進めていくのか、また、日々の業務を当たり前の視点からどのように見直しているのか、知事の御所見をお伺いいたします。

また、県庁の業務の効率化を進めていく中で、知事ご自身の働き方はどのように変わっていったのか、併せて、お伺いいたします。             (1,182字)

(答弁者:知事)

 社会経済情勢の変化の中で増大する行政需要に適切に対応しつつ、「ひろしまビジョン」に掲げる目指す姿を実現していくため、本県におきましては、「行政経営の方針」に基づき、「最少の経費で最大の効果を挙げる」という基本原則に立ち、行政サービスの価値向上を目指した業務プロセスの再構築を推進するとともに、デジタル技術の利活用などによる生産性の高い働き方への改革に取り組んできたところでございます。

 具体的には、業務プロセスの再構築として、

・ 業務のスクラップ・アンド・ビルドの徹底、

・ 内部協議資料の簡素化や協議回数の縮減、

・ ワード様式からエクセル様式への変更による集計業務の省力化、

・ ペーパーレスの推進

など、日々の業務の見直しを進めるほか、デジタル技術の利活用などによる生産性の高い働き方への改革として、Web会議やテレワークの利用促進を図るとともに、RPAを活用した業務の自動化による

・ 作業時間の縮減や、

・ 手作業によるミスの軽減

など、業務の効率化に努めてまいりました。

 これまでの取組につきましては、職員一人一人が、業務の見直しや効率化を図ることを常に意識するとともに、全庁的にも、押印の廃止や事務の電子化など改善を重ねることにより、一定程度、定着してきており、今後は、こうした取組の継続・徹底に加えて、デジタル技術を活用した更なる業務改善などに引き続き取り組んでまいります。

 また、私自身といたしましても、出張の際に、国内外を問わず、オンラインでの協議や、決裁を行うなど、場所や状況にとらわれない働き方をすることで、より効率的な業務遂行ができていると感じております。

 今後とも、議員御指摘の視点も含めた、日々の業務の不断の見直しに加えて、デジタル技術の更なる利活用などにより、業務プロセスの再構築の推進に取り組んでまいりたいと考えております。
5 世界バラ会議を起点とした県内全域への周遊促進について 

質問の第5は、世界バラ会議を起点とした県内全域への周遊促進について、お伺いいたします。

 

世界バラ会議

福山市は100万本のばらが咲き誇る「ばらのまち」として広く知られており、令和7年5月には世界バラ会議が開催されます。

世界バラ会議は3年に1度開催されるバラに関する国際会議であり、ばらの研究家や生産者など、世界中のばら関係者が集い、ばらの研究や普及等について延べ7日間にわたって議論や交流が行われる予定です。

その他のイベント

福山市近郊では同時期に大規模なイベントの開催が予定されており、令和7年4月には大阪・関西万博のほか、岡山・香川の両県で現代アートの祭典である瀬戸内国際芸術祭が開催され、5月には広島市でフラワーフェスティバルが開催されます。

大規模イベントの開催は多くの集客が見込まれ、大阪・関西万博で想定される来場者が約2,820万人、コロナ禍の令和4年度に開催された瀬戸内国際芸術祭の来場者が約72万人、今年のフラワーフェスティバルの来場者が過去最多の約182万人となっています。

また、大規模イベントの開催に合わせて、プレイベントや開催気運を高めるための様々な企画が検討されていますので、そこに集まった来場者や国内外の観光客をどのようにして世界バラ会議に呼び込むのかといったことは大変重要な課題です。

また、第20回という節目の大会でもありますので、国内外を問わず多くの観光客に訪れていただけるよう、県としてもしっかりと福山市を支援していただきたいと思います。

県内全域への周遊促進

その上で、昨年6月の一般質問でも申し上げたとおり、広島市内から遠い、尾道市、福山市など県東部や、三次市、庄原市など県北部といった、県内全域に観光客の周遊を促進していくことが重要となります。

県はこれまでにも、観光客の県内全域への周遊促進に取り組まれてきましたが、県内周遊の状況をどのように調査しているのか、例えば、G7広島サミットで増えた観光客がどの程度県内を周遊したのかを把握されているのでしょうか。

現在検討している宿泊税の導入に当たっても、県内での広域周遊につなげていくと言われていますが、平和公園から宮島といったルートならまだしも、県内全域を周遊させることはハードルも高く、それほど簡単なことではありません。

来年度、世界バラ会議と同時期に大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭といった大規模なイベントが開催されるという絶好のチャンスを生かし、広島県内に観光客を呼び込むことはもちろんのこと、県内全域への周遊促進につなげていくなど、確かな実績を残すことができなければ、今後県が行う観光施策において集客や周遊の効果を期待することはできません。

そこで、来年4月に開催される大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭の来場者をどのようにして本県への集客につなげていこうとされているのか、また、同時期に福山市で開催される世界バラ会議に訪れる方々をどのようにして県内全域への周遊につなげていくのか、知事の御所見をお伺いいたします。

併せて、県内全域への周遊促進を図る上では、県内周遊の状況を把握し分析していく必要があるのではないかと考えますが、御所見をお伺いいたします。   (1,289字)

(答弁者:知事)

 来年開催される大阪・関西万博と瀬戸内国際芸術祭は、日本のみならず、世界各国からの集客が見込まれる大型イベントであり、また、同年5月に開催される世界バラ会議福山大会は、世界中のバラの愛好家が福山へ集まることから、こうした機会を本県への誘客や県内での周遊に生かしていくことが重要であると考えております。

 こうした認識の下、大阪・関西万博の開催に向けましては、これまで、大阪観光局との連携により、大阪観光局のホームページにしまなみ海道や三段峡、大久野島など県内各地の魅力的なスポットをめぐるモデルコースを掲載しており、今後は、JR西日本と連携し、大阪から広島に来訪される外国人観光客が多く使用する大阪‐広島間の周遊チケットの更なる販売促進に取り組んでいくこととしております。

 また、西日本や九州の関係自治体と連携し、関西から九州に繋がる新たな西のゴールデンルートの形成やWEBメディア等を活用した海外向けプロモーションなどに取り組むこととしており、大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭等に訪れる多くの観光客を本県へ誘客してまいりたいと考えております。

 さらに、大阪・関西万博では、8月6日を含む5日間、本県のブースを出展し、「被爆からの復興と広島の多様な魅力」をテーマに、来場者に印象に残る体験等を提供することで広島ブランドの価値を高めるとともに、広島ファンの増加や、本県への来訪につなげてまいりたいと考えております。

 世界バラ会議の開催につきましては、本県も実行委員会に参画し、福山大会の開催告知などに取り組んできたところであり、今後は、県内各地の情報発信を始め、随行者などを対象とした開催期間中のオプショナルツアーの造成や会場における観光案内などに、福山市と連携して取り組んでまいります。

 次に、県内周遊の状況把握につきましては、県内の主要観光地約20箇所における年4回の対面アンケート調査などにより、その旅行で訪問するその他の観光地や、移動手段の把握を行ってまいりましたが、本県への更なる誘客に向けた情報発信や、県内周遊につながる観光プロダクトの造成などに取り組むため、現在、スマートフォンの位置情報を用いた人流把握サービスの活用などにより、県内約1,700の地点における時間帯別の滞在状況や、各観光地間の移動者数等の把握に取り組んでいるところでございます。

 今後、そうしたデータを基に、本県を訪れる国内外の観光客の周遊状況等について、これまで以上にしっかりと分析を行い、大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭、世界バラ会議福山大会の開催なども見据え、関係団体等と連携し、より効果的な施策を実施していくことで、本県への更なる誘客や県内全域への周遊促進につなげてまいります。
6 持続可能な地域コミュニティの実現について 

質問の第6は、持続可能な地域コミュニティの実現について、お伺いいたします。

 

消滅可能性自治体

民間団体が本年4月に公表した令和2年からの30年間で消滅する可能性がある自治体は、全国1,729の自治体の約4割にあたる744自治体にのぼるとされ、「消滅可能性自治体」と名指しされた関係自治体や地域住民の心境は想像に難くありません。

10年前に行われた同様の分析と比較すると、広島県における「消滅可能性自治体」は12市区町から6市町に減少したものの、今後も人口減少に歯止めがかからない状況です。

それぞれの地域においては、住民が自治体と協力しながら創意工夫によって地域コミュニティに必要不可欠な機能を維持する取組を進めていますが、地域コミュニティの継続に向けて県や市町が一層支援を強化していかなければなりません。

人口減少という側面だけを捉えると、消滅可能性自治体という結果が導き出されるのかもしれませんが、そこに暮らす人々が地域や人との繋がりを失うことで地域が消滅してしまうのだと思います。

これまで以上に、県や市町が一丸となって人と地域を紡いでいくことで地域の持続性を確保していただくよう強く要望いたします。

常金丸交流館

私の地元の福山市においても、人口は10年前から約1万5千人減少し、4月末時点で約45万6千人となるなど、人口減少という課題に直面しており、古き良き時代から受け継がれてきた地域コミュニティの衰退を懸念する声は後を絶ちません。

こうした中、本年4月には、常金丸小学校と常金丸交流館の複合施設が開校し、小学校と交流館が一体となった福山市内で初めての施設として、児童の学びの場としてだけではなく、地域の交流やまちづくりの拠点施設としての役割を担うことが期待されています。

4月に開催された落成式に私も来賓として参加させていただきましたが、当日の式典には地域の方々が700人も来場されるなど、地域住民の関心の高さと期待の大きさを目の当たりにすることができました。

開校して数ヶ月しか経過していませんが、地域の方々が小学校の音楽教室を借りて歌を歌っていると、休憩時間中の子どもたちも参加をし、一緒になって歌を歌い始めることもあるようです。

子どもたちが高齢者などの地域の多様な世代と交流を深めたり、お互いに活動する様子を目にしたりすることで、学校と地域の連携がこれまで以上に深まるだけではなく、子どもたちが地域との繋がりを感じることで地域に愛着を感じるなど、人と人とのつながりを重視した持続可能な地域づくりが実現しています。

今後の体制づくり

学校は地域にとって欠かすことのできない施設ですが、地域コミュニティを持続可能なものとしていくためには、自治会や町内会の運営をはじめ、清掃や防災活動、お祭りなどの伝統行事のほか、民生委員といった社会福祉活動など多岐に渡った活動を維持していかなければなりません。

人口減少による地域の担い手不足によって、地域に根付いた活動が縮小や廃止を余儀なくされたり、一部の住民の地域活動における負担感が増大したりするなど、地域コミュニティの機能を維持していくことが困難になりつつあります。

地域を支えるために頑張っていただいている担い手の負担を軽減し支えていくのが行政や政治の役割ではないでしょうか。

そこで、今後も人口減少に歯止めがかからない状況が続いていく中、地域に求められる新たな担い手を確保していくためには、例えば、これまで地域に寄り添ってきた県や市町の退職職員が、培った知識と経験を生かして地域活動等に協力することができる体制の整備を検討するなど、新たな人材を供給する仕組みづくりについて検討していく必要があると考えますが、地域コミュニティの機能を維持していくために県としてどのような支援を行っていこうとされているのか、知事の御所見をお伺いいたします。

                                 (1561字)

(答弁者:環境県民局長)

 本県におきましても、

・ 人口減少や少子高齢化の進展による担い手不足に加え、

・ 個人の価値観やライフスタイルの多様化

などにより、地域コミュニティ機能の維持が一段と厳しい状況になっているものと受け止めております。

 このため本県におきましては、これまでも、県民の皆様の地域コミュニティへの参画や地域活動への参加を促進するため、

・ 住民主体の地域活動の支援及び関係福祉機関のネットワーク構築などの地域づくり推進の担い手の育成、

・ 学校との協働による地域課題解決に向けた取組への支援、

・ コミュニティ助成金による地域活動支援、

・ 県職員退職者向け説明会の機会を活用した民生委員就任の働きかけ

などの取組を進めているところでございます。

 こうした中、とりわけ、中山間地域におきましては、これまでの集落実態調査などから人口減少や高齢化の進展により将来的に存続が危ぶまれる集落の増加などが明らかになっており、地域の持続可能性を高める取組への着手が喫緊の課題であると認識しております。

 このため、昨年度設置した有識者検討会議におきましては、地域の持続可能性を高め、安心して暮らせる生活環境の在り方などが議論され、本年2月に、「広島県における今後の集落対策 最終とりまとめ」として、

・ 住民自治機能の維持に向けた担い手の確保、

・ 住民自治機能の見直しなど、機能の再構築、

・ 住民自治活動などをサポートする中間支援組織の確立

などの取組方針が盛り込まれております。

 現在、この最終とりまとめを踏まえて、あらゆる主体が一体となった集落対策の取組を早急に取りまとめているところでございます。

 引き続き、市町や関係機関などと広く連携し、新たな人材を供給する仕組みづくりなど地域コミュニティの機能が維持されるよう取り組んでまいります。

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