活動報告

活動報告:一般質問答弁実録

令和2年2月 定例会一般質問答弁実録

令和2年2月定例会 一般質問
答 弁 実 録

1 人口減少対策について

2 県本庁組織の地方移転による地方創生の推進について

3 将来を見据えたデジタルトランスフォーメーションについて

4 建物の耐震化及び有効活用の促進について
(1)耐震化補助等の拡充について
(2)ファンドを活用した古民家再生について

5 製造業の振興について

6 人を呼び込む取り組みについて

自由民主党広島県議会議員連盟
出 原  昌 直
【前 文】
皆さん、おはようございます。
自由民主党広島県議会議員連盟、福山市選出の出原昌直でございます。
今次定例会におきまして、一般質問の機会を与えていただき、中本議長をはじめ、先輩、同僚議員の皆様に、心から感謝を申し上げます。
二期目を迎え、今回で5回目の一般質問となります。
これまでと同様、地域の活力を次世代に引き継ぎ、希望を持つことができる広島県を実現するための質問をさせていただきたいと思います。
それでは、早速、質問に入らせていただきます。

1 人口減少対策について
質問の第一は、人口減少対策について、お伺いいたします。
本県の人口は、平成10年の288万5千人をピークに減少が続いており、今年の4月には37年ぶりに280万人を割り込む見込みであると報道されています。
このことは、県が5年前に策定した「人口ビジョン」においても試算されているところですが、この人口ビジョンは、当時、国立社会保障・人口問題研究所が公表した、平成25年3月の推計を基に策定されたものです。
概要は、2010年に286万人であった本県の人口は、何の対策もしなければ、2020年には10万人減少して276万人となりますが、減少を抑える対策を講じれば、279万人までの減少に抑えられる、というものでありました。
県では、この間、出生率の回復や社会増に向けた取り組みなど、人口減少のスピードを抑えるための施策を進めてこられましたが、先月末に総務省が公表した2019年の人口移動報告では、本県の転出超過は8、018人と全国で最多となり、さらに東京圏への人口集中が加速しているとのことでありました。
また、一昨年の3月に国立社会保障・人口問題研究所が公表した県内市町の推計人口によると、2015年と比較して、2030年に人口が増加しているのは東広島市のみで、広島市はほぼ現状維持、その他の市町はすべて減少するという状況になっています。
県と同様に、県内の各市町においても、平成25年に公表された将来の人口推計に基づいて計画を策定し、人口減少対策に取り組んでいるものと思いますが、平成30年に行われた推計では、ほとんどの市町で、以前の推計よりも速いスピードで人口減少が進むとされています。
本県が全国ワーストとなる8、018人の転出超過であった今回の人口移動報告では、交通利便性の低い条件の不利な地域を抱えていることや基幹産業が不振であったことが人口流出の要因として挙がっておりますが、私は、特に中山間地域において、当初、市町が想定していた数字を上回るペースで高齢化と人口減少が進んでいるのではないかと危惧しております。
改めて申し上げるまでもなく、本県の人口減少を食い止めるためには、その基となる各市町における人口減少対策の効果が重要であることから、これまで講じてきた施策に思うような効果が出ていない市町に対しては、県として集中的に、最大限の支援を行っていく必要があります。
そこで、今後、人口の増加または現状維持が見込まれる東広島市と広島市以外の市町、特に転出超過の多い市町、また人口減少の予想と現実の乖離が大きい市町に対しては、県として、今後どのように人口減少対策を進めていくのか、知事の御所見をお伺いいたします。

【答】知事
本県の将来人口につきましては、2060年に214万8千人と推計されており、平成27年の国勢調査時の人口284万4千人に比べて、減少率は、25パーセント程度となっております。
同様に、県内23市町を個別に見てみますと、50パーセントを超える人口減少率が見込まれる市町は、8市町あり、これらの市町においては、転出超過の傾向が強まるなど、予想を超えるスピードで、人口減少が進んでいるものと認識しております。
こうした中、平成26年からの地方創生の推進にあたり、国は、地方自治体に対しまして、地方版の「まち・ひと・しごと創生 総合戦略」とあわせ、人口ビジョンも策定するよう求め、本県及び県内市町におきましても、策定しているところでございます。
県といたしましては、この総合戦略に基づき、
・ 東京圏等における地方移住の機運を取り込み、定住につなげる仕組みづくり、
・ 県内大学との連携した大学生の県内就職志向の醸成、
・ 結婚、出産、子育てなど
ライフスタイルにおける様々な場面で、安心して暮らすことができる社会の構築など、社会動態、自然動態の双方から人口減少対策に取り組んでまいりました。
また、市町におきましても、人口減少の克服と将来にわたる成長力を確保するため、地域資源を生かした魅力ある地域づくりを進めることとし、それぞれの市町の実情に応じた移住・定住施策や少子化対策などに取り組んでいるところでございます。
こうした市町の施策のうち、移住・定住の取組につきましては、市町と県が連携し、ふるさと回帰支援センターなどにおけるイベントの開催や、移住サポート体制の構築などにより、取組の開始以降、県内に移住した世帯数は増加が継続するなど、成果が現れております。
あわせて、地方創生に関する市町の施策に対しましては、各市町の総合戦略の取組の検証や、次期総合戦略の策定に係る検討会議に参画し、人口減少対策などの取組を支援しております。
さらに、私と市長、町長による「県・市町連携会談」におきまして、各市町の課題を踏まえた助言を行うなど様々な機会を通じて、各市町の地方創生に係る取組を積極的に後押ししているところでございます。
引き続き、県民一人ひとりが地域に愛着と誇りを持ち、国内外から魅力ある地域として選ばれ、住みやすく個性ある豊かな地域となるよう、それぞれの市町と連携した地域活性化に取り組んでまいります。

2 県本庁組織の地方移転による地方創生の推進について
質問の第二は、県本庁組織の地方移転による地方創生の推進についてであります。
再開発が進む広島駅の周辺では、マンションやホテルなど高層ビルが次々に建設され、中国四国地方の最大都市・広島市の陸の玄関口としてふさわしい整備が進んでいます。
一方で、都市部以外の地域では、少子高齢化と人口減少が著しく進み、空き家や耕作放棄地の増加など、深刻な問題に直面している状況にあります。
さて、県民に納めていただく個人の住民税には、県民税と市民税・町民税があり、それぞれに前年の所得金額に応じて課税される所得割がありますが、所得割の税率は、広島市とその他の市町で異なっています。
これは、県費負担教職員に係る給与の負担事務が、県から広島市へ移譲されたことに伴い、平成30年度分から税率が変更されたもので、具体的には、県民税は、広島市が2%、広島市以外は4%であるのに対して、市町民税は、広島市が8%、広島市以外は6%となっています。
これは、広島市が負担することとなった教職員給与の財源とするためのものであり、本県だけではなく、政令指定都市が存在する他の道府県においても同様の措置がされています。
県と政令指定都市の、本来あるべき関係に即したものであると思いますが、政令指定都市として、他の市町と比べ大きな財源、そして権限も持っている広島市でありますから、当然、他の市町と比べて、独自で取り組むべき事業は多いのではないかと考えます。
しかしながら、広島市内における大きなプロジェクトをはじめ、様々な事業に県も関与して、いろいろな形で経費を負担している事案が多々あります。
広島都市圏が、本県経済の持続的発展を牽引していることは事実であり、広島市の活性化が重要であることは十分理解しておりますが、県と広島市の関係を見ていると、結果として、県も広島市への一極集中を促進している部分があるように思えます。
国が平成27年度から始めた地方創生は、これまで総額8千億円を超える交付金が投じられおり、また、地方創生の目玉として、東京圏への一極集中の是正に向けた中央省庁の地方移転が打ち出されていました。
国は、省庁の地方移転を呼び水に、産業界に対しても本社や工場を地方に移すよう働きかけるなど、積極的に進めようとする姿を見て、私自身も大きな期待を寄せていたところです。
現実には、国会対応等を理由とする各省庁の根強い反対もあって、文化庁の京都への全面移転が決まっている以外は、消費者庁の分析研究機関が徳島県に設置され、職員の配置は13名、また、総務省統計局の「統計データ利活用センター」が和歌山県に開設され、職員の配置は13名のみです。
地方移転は進んでいません。
当初は2021年度に予定されていた文化庁の京都移転についても、2022年度の後半以降と先送りされることが決まりました。
さらに、国が政策として地方創生を打ち出した以降も、東京圏への一極集中に拍車がかかっています。
こうした中、地方が活性化しなければ地方創生はない、と国に訴えるとしても、同じような構図で、広島県内においても、人口はもちろん、国や県の行政機関も、広島市への一極集中といえる現象が起きているわけであります。
県として、国が実施しようとしていた地方創生に課題があると考えるのであれば、国が進めようとしていた省庁移転のようなことを本県で実施し、国に対して地方創生の覚悟を示す必要があると思います。
広島市内にある県庁を丸ごと他の市町に移転するのではなく、例えば、地域政策局は広島市内になくてもいいのではないかなど、県庁の組織や機能の一部を広島市以外の地域に移転することを検討してみてはいかがでしょうか。
また、来年度から、新たな観光振興体制として、これまで県の観光課が実施してきた観光施策のほとんどを一般社団法人広島県観光連盟に移管して、一元的に実施していくこととしていますが、こちらの事務所も広島市内であります。
平成の大合併によって以前の町役場が支所となったこと等に伴い、住民サービスの低下が指摘され、衰退が進んだ地域も少なくありません。
市町との連携を深めるというのであれば、市町の観光協会に県職員を派遣・配置する、といったことや、広島市内に集中している県の関係団体のオフィスを、広島市以外の地域に移転することができないか、検討すべきではないかと思います
また、県は現在、約75億円をかけて県庁舎の耐震化工事・リフレッシュ工事を進めており、耐震改修工事後20年程度は使用可能とされているところではありますが、いずれは建て替えも検討しなければならない時期がやってきます。
今後も人口が減少していき、その一方で、AIやIoTの技術が進展していく中で、県の業務や職員の数、庁舎の規模も、スリム化する必要が生じてくると思います。
こうした検討をする際に、広島市内の本庁になければならない機能のみを広島市内に残し、あとは市外に移すということも考えられます。
平成30年6月定例会の一般質問でも、東京圏への一極集中の是正に向けた県の取り組みなど、同じ趣旨の指摘をさせていただきました。
そのときの知事の答弁は、「市町と一体となって、県全体に県外から、より多くの人を呼び込めるよう地方創生の取り組みを更に加速させ、人口の転入超過を目指してまいりたい」というものでありました。
しかし、先ほどご紹介したとおり、本県の転出超過は全国で最多となるなど、転出が加速している状況です。
地方創生が叫ばれて5年が経過しても、なかなか成果が表れていない今、地方においても、東京圏への一極集中の打開策を本気で考え、実行していかなければならないと考えています。
そこで、広島市内にある県の本庁組織を、広島市以外の市町に移転すること、また、県職員が市役所や町役場などで、市町の職員と連携して業務を行うような組織や仕組みづくりについて、検討していただきたいと考えますが、知事の御所見をお伺いします。

【答】知事
地方創生を実効あるものとするためには、それぞれの地域が直面している課題を踏まえ、創意工夫に満ちた、魅力ある地域づくりに取り組むことが重要であり、都市と自然の近接性など本県が有する地域特性を活かしながら、都市圏の魅力向上と中山間地域の地域力強化などの施策に取り組んでおります。
 これらの施策を進めるに当たっては、「行政経営の方針」に基づき、戦略・組織・資源配分の全ての取組において、一貫して成果の獲得を追求することとし、「柔軟かつ機動的な組織体制の整備」などに取り組んでいるところでございます。
 このような取組の一つとして、地域の実情に即した施策を推進するための組織・体制の整備としては、商工労働総務課の東部産業支援担当の配置や、地方機関に、現場情報を収集し、これを政策に反映させていくための「政策監」を設置するなどの体制の整備を行ってまいりました。
 そうした中で、本庁組織、あるいは、本庁機能の一部などを広島市以外の市町に移転することについては、効率的・効果的な組織運営の在り方や現場主義の徹底といった移転の効果などを総合的に勘案しながら、慎重な検討が必要であると考えております。
 また、県職員が市役所等で勤務する取組につきましては、県の施策を進めていく上で、市町との連携は重要なものであることから、市町との人事交流や、大規模災害発生時に、被災した市町への県職員の派遣などを行っているところであり、引き続き、業務の目的や市町のニーズを踏まえ、県と市町との最適な連携手法について、検討してまいりたいと考えております。
 今後とも、県内全市町の発展のため、「最少の経費で最大の効果を上げる」という行政経営の基本原則に立ちながら、市町や県民の皆様のニーズに即応できる組織・体制の整備を進めてまいります。

3 将来を見据えたデジタルトランスフォーメーションについて
質問の第三は、将来を見据えたデジタルトランスフォーメーションについてであります。
ITの浸透が、あらゆる面で人々の生活をより良い方向に変化させるデジタルトランスフォーメーションを推進するため、47億円を超える予算が編成されています。
この施策は、急速に開発が進むデジタル化社会の到来に対応していくためのもので、庁内の各部局もデジタル技術を活用した課題解決に取り組んでいくとのことでありますが、私は特に、人口減少と地域産業の衰退が進む中山間地域において、大きな効果を発揮するのではないかと期待しています。
こうした中、光ファイバー回線のカバー率は、平成30年3月末現在で、全国が98.3%であるのに対し、本県は95.7%と、全国を下回っている状況にあります。
特に、住宅が点在する山間部や島しょ部などの地域の多くでは、光回線が整備されておらず、依然として通信速度が遅く不安定なADSLをやむなく利用している県民も多くおられます。
現在、国は、過疎地域における光回線の整備に対する市町への補助を行っており、さらに今後、次世代通信規格「5G」の基幹インフラとなる光回線を全国に整備するため、電気通信事業者に対する支援も検討されているとのことです。
このような制度も活用しながら、県内どこにいてもストレスなくインターネットが使える環境を整えることができれば、都市部であっても中山間地域であっても、仕事や勉強、趣味などに利用する機会を平等に得られることになります。
地域における光回線をはじめとする基盤の整備は、市町や電気通信事業者等が事業主体となって、国の支援を受けながら進めていることは承知していますが、光回線を利用できない地域の住民からは、早期の整備を求める声が上がっています。
そこで、デジタルトランスフォーメーションの推進を新たに掲げた県として、「誰ひとり置き去りにしない」という理念のもとで、国や市町、電気通信事業者等と連携しながら、早急に、県内すべての地域に光ファイバー回線が整備されるよう取り組むべきと考えますが、知事の御所見をお伺いします。

【答】総務局長
地域におけるデジタルトランスフォーメーションを推進するためには、中山間地域や離島等の条件不利地域における情報格差が生じることのないよう、県内すべての地域への光ファイバーの回線整備が重要であると認識しております。
 本県では、これまでも、光ファイバーの新設に対する支援に加えて、既存の情報通信回線を光ファイバーに更新することに対しても必要な支援策を講じるよう、中国地方知事会や全国知事会、さらに全国の情報主幹課長会議など、様々な機会を通じて国に対して働きかけを行ってまいりました。
 その結果、今年度、光ファイバーの整備について、既存の通信基盤の更新や民間事業者が整備を行う際にも国の補助を受けられることとなり、県内市町において、新たに来年度以降の整備計画が進んでいるところでございます。
 こうした取組みの成果により、他の都道府県に比べ、条件不利地域の多い本県においても、前年度は、全国を上回る光ファイバー整備の伸び率で、着実に整備が進んでいるところでございます。
 本県といたしましては、県内市町が最新の情報通信基盤の整備に向け、これらの事業を積極的に活用することができるよう、技術的な支援や助言を行うとともに、今後とも、国に対して、超高速ブロードバンド基盤の整備などを推進するために必要な措置を講じることなどについて、全国知事会等を通じて、働きかけを行ってまいりたいと考えております。

4 建物の耐震化及び有効活用の促進について
(1)耐震化補助等の拡充について
質問の第四は、建物の耐震化及び有効活用の促進についてです。
一点目は、耐震化補助等の拡充についてであります。
県では、大規模な地震発生時に倒壊して多数の死傷者が発生する恐れのある大規模建築物や、広域緊急輸送道路の沿道の建築物については、所有者による耐震改修や建て替え、解体を支援する市町に対して、補助を行っています。
しかし、それ以外の民間の建物の耐震改修等に対する支援では、本県は全国の中で相当遅れている状況にあります。
具体的には、47都道府県の中で、市町への支援を含め、住宅の耐震診断に対する補助制度を設けていないのは、本県と、山形県、群馬県、埼玉県、鹿児島県の計5県、また、耐震補強に対する補助制度を設けていないのは、本県と、埼玉県、鹿児島県の計3県となっています。
このように、本県を除くほとんどの都道府県において、耐震診断や補強等に係る支援を行っているわけです。
この問題は、昨年度の決算特別委員会でも指摘しましたが、その時の答弁は、「想定される地震被害や居住環境など、地域によって状況や課題も異なるため、市町の役割が重要で、市町に耐震改修制度の創設などを働きかけている」という趣旨でありましたが、ほとんどの都道府県では市町との協調した補助制度を設けています。
私は、県土の強靭化を進めるためには、市町に制度の創設を働きかける、というのではなく、県が率先して、積極的に対策を講じる必要があると考えます。
そこで、住宅の耐震診断や耐震補強等に係る支援について、本県も早期に、他の都道府県並みの補助制度を創設すべきと思いますが、知事の御所見をお伺いします。

【答】知事
地震による被害を軽減するための建築物の耐震化は急務であると認識しており、広島県耐震改修促進計画の第2期計画による県と市町の役割分担を踏まえ、県は、広域的な観点から、広域緊急輸送道路沿道建築物に耐震診断を義務付け、早期の耐震化完了を目指すため、独自に市町の負担を求めず耐震診断の補助制度を創設するなど、主体的に取り組んでいるところでございます。
 一方、住宅につきましては、県と市町の役割分担を踏まえ、市町に補助制度の創設を働きかけた結果、現在、耐震診断は全ての市町で、また、耐震改修は18の市町で補助制度が創設されております。
 しかしながら、この補助制度の活用状況は、県内では年間、耐震診断が50件、耐震改修は10件程度に留まっており、補助制度の活用は多くの都道府県においても低調であることから、この活用を促進するためには、地震防災に対する県民意識の向上や、安心して耐震診断や改修を行うことができる環境づくりが最も重要であると考えております。
 このため、県といたしましては、これまでも市町からの要望も踏まえ、県民の皆様の意識改革を図るため、 
・ 相談窓口の設置や、
・ 各種セミナーやイベントの開催、
・ 安価な耐震改修工法の普及を目的とした技術講習会であります「耐震リフォーム達人塾」の開催、
・ 住宅の耐震診断や耐震改修を実施する業者リストの県ホームページでの公表
などの環境づくりに取り組んできたところでございます。 
 今後は、これらに加え、広島県耐震改修促進計画の第2期計画が来年度に最終年度を迎えることから、第3期計画の策定に向け、第2期計画での住宅の耐震化の目標達成状況や市町の意見などを踏まえ、効果的な支援や環境づくりの在り方について検討してまいります。 
 引き続き、市町や建築関係団体などと連携して、補助制度などが効果的に活用され、住宅をはじめとした建築物の耐震化が促進されるよう取組を進めてまいります。

(2)ファンドを活用した古民家再生について
二点目は、ファンドを活用した古民家再生についてです。
総務省が5年に1回実施している「住宅・土地統計調査」の結果によりますと、2018年10月時点で、全国で空き家は約849万戸、空き家率は13.6%と、空き家の数、率ともに過去最高を更新しています。
一方、本県における空き家の数は約22万戸で、空き家率は15.1%と、全国的にみても空き家率が高い状況にあります。
特に近年は、隣地等に影響を及ぼすおそれのある、老朽化した空き家が大きな問題になっていますが、こうした空き家対策の1つとして、古民家の再生・活用が有効であると考えています。
本県で、平成23年に官民ファンドの運営会社として県が100%出資して設立した「ひろしまイノベーション推進機構」は、投資先企業の売上高や利益額を増加させるなど、地域経済に一定の貢献を果たしてきたと説明をされています。
そして先月、この機構は、民間資本のみで組成する新しいファンド「ふるさと連携応援ファンド」を設立して、後継者がいない企業などの事業承継や成長投資、また、人材を送り込んで経営に参画させるハンズオンなどの支援を行うとの説明がありました。
しかしながら、私は、既存の民間のファンドが行っている事業との違いを十分に理解をしておりません。
間接的とは言え、県が関与しているわけですから、民間のファンドでは行っていない、本県として特徴のある、集中した課題解決のための支援を行う必要があります。
例えば、奈良市では、地元の銀行と古民家再生を得意とする企業などが組んで、古民家をはじめとする歴史的建築物を利活用したまちづくりを支援する、総額15億円のファンドを設立し、特徴のある取り組みが進んでいます。
その地域の課題を、ファンドを活用して解決する取り組みです。
再生された古民家で、新たな商売が生まれ、人が集まり、雇用の発生が見込まれるような事業に対しては、耐震診断や耐震補強も含めて、本県独自の支援をしてはどうかと考えています。
そこで、県が100%出資して設立した「ひろしまイノベーション推進機構」により組成された「ふるさと連携応援ファンド」について、民間のファンドとの違いを明らかにするとともに、地域の経済に関する課題を解決するためにこのファンドを活用するお考えをお持ちかどうか、あわせて今後の展望について、知事の御所見をお伺いします。

【答】商工労働局長
地域経済に焦点を当てたファンドといたしましては、「ひろしまイノベーション推進機構」が今回組成した 「ふるさと連携応援ファンド」のほか、 
・ 瀬戸内地域の観光振興を図るため、せとうちDMOが行っている「せとうち観光活性化ファンド」、 
・ 平成30年7月豪雨災害からの復興を目指す企業を支援するため、地域経済活性化支援機構等が行っている「広島県豪雨災害復興支援ファンド」
等があり、それぞれが対象としている分野において、ファンドの仕組みを活用して、地域経済の課題解決に取り組んでいるところでございます。
この中で、「ひろしまイノベーション推進機構」が本年1月に民間からの資金により組成した「ふるさと連携応援ファンド」につきましては、広島を中心とする経済圏の企業を対象に、事業承継や新たな事業展開など、企業の課題を解決し、その成長を促進するファンドでございます。
広島県のファンド事業の特徴といたしましては、「ひろしまイノベーション推進機構」において、 県が投資対象として、
・ 地方経済の発展への寄与が期待できる企業、 
・ 新たな成長を目指す企業 
などと定めている投資原則に基づいて投資を行い、資金とハンズオンによる経営支援を提供することで、企業の成長を促進し、もって地域経済の活性化に寄与することを目的とする点にあります。
県といたしましては、ご指摘がございました古民家再生などの地域の課題や、それぞれのファンドの特徴を踏まえ、「ふるさと連携応援ファンド」のほか、民間のファンドなどとも連携を図ることが重要であると考えており、今後、地域経済の課題を解決するための手段としてファンドという仕組みが地域に定着し、集積するよう取り組んでまいります。

5 製造業の振興について
質問の第5は、製造業の振興についてであります。
今年度の4月から11月までの法人事業税の調定状況によりますと、製造業は全体で約212億円と、対前年度比で42億円の減収、17パーセントの減となっています。
これは、ものづくり県である本県の製造業は輸出関連の企業が多いことから、米中貿易摩擦の影響などによる輸出不振が大きな要因ではないかと考えられますが、新型コロナウイルスの問題も加わり、世界経済が不透明感を増している中で、今後、本県の製造業はどうなっていくのかと心配になる数字です。
本県の製造品出荷額は毎年、全国の中でも10位前後で推移しており、中国四国地方と九州地方の中ではトップの地位を守っております。
本県の経済は緩やかな拡大を続けておりますが、輸出については横ばいで、一部には弱めの動きがみられており、特に中小企業では、輸出の停滞や消費税率の引き上げなどにより景況感が悪化しているところです。
加えて、先般、日鉄日新製鋼呉製鉄所が、3年後を目途に全設備を休止することが発表され、今後の地域経済に与える影響が大変懸念されているところです。
さらに、県内の有効求人倍率は2倍前後と、全国に比べて高水準で推移しているなど、依然として人手不足が続いており、特に中小企業・小規模企業では後継者の問題とあわせて、事業の存続にかかわる深刻な事態となっております。
こうした中で、先ほどの質問で触れましたデジタルトランスフォーメーションを推進することも重要でありますが、とりわけ本県においては、見直されるべき仕事があります。
それは、やはり「ものづくり」です。
ある民間の調査結果で、AIやIoTの技術が進む中、これから給料が上がる仕事、下がる仕事のランキングが出ていましたが、それによりますと、これから給料が上がる仕事の第1位は「縫製業」でありました。
理由としては、アパレル業界は、現在の少品種・大量生産から、多品種・少量生産時代に大きく移行していく、そして、その担い手は技術力の高い国内の縫製工であり、需要が拡大していく、ということです。
こうした中、福山市では、市内の縫製工場や繊維企業が設立した「繊維産地継承プロジェクト委員会」が、「福山市担い手育成支援事業」の制度を活用して、繊維産業を次世代に継承する活動をスタートしました。
この活動を進める中で、これまでは産地である地元だけで考え、解決していこうとしていましたが、商品を販売してくれる東京の小売り業者に相談したところ、その人たちから、「産地がなくなれば、自分たちの商品を作る場所がなくなる。一緒に課題解決に取り組もう。」と言っていただきました。
遠く離れた東京の人たちも、福山の生産者とともに危機感をもって、産地を守ろうとしてくれるのです。
同じ製造業でも、例えば繊維産地の課題は地域によって異なることから、県全体で画一的な支援を行うのではなく、それぞれの課題に対応した、きめ細かな支援が望まれますが、そうした支援は少ないのが現状であり、他の製造業でも同様のことが言えるのではないかと思います。
そこで、本県製造業の振興に向けて、「ものづくり」そのものに対する支援に加えて、県境を越えた企業間連携の促進、すなわち、原材料の生産から商品の製造・販売まで一連の流れを支援する施策が必要であると思いますが、ものづくりに対する現状の課題をどのように認識されているのか、また、課題があるとすれば解決に向けてどのように対応していこうと考えておられるのか、知事の御所見をお伺いいたします。

【答】商工労働局長
本県の基幹産業であり、本県経済活性等に大きな役割を担う製造業の振興については、
・人口減少に伴う労働力不足や、 
・グローバル化に伴う国際競争の激化 
あるいは、
・AIやIoT等の変化し続ける技術など 
こうした社会経済情勢の変化に対する取組が必要であると考えております。
また、経済産業省のものづくり白書によりますと、我が国製造業の課題として、強みである、品質や製造工程を維持・強化しつつ、弱みであり、付加価値の高い領域である 企画・開発部分や流通・販売、付随するサービス部分を強化し、これらの「企画・開発」、「設計」、「生産」、「流通・販売」、「保守」といった一連の工程を通じた強化が必要とされております。
県といたしましては、社会経済情勢の変化への対応や一連の工程の強化に向けまして、
・イノベーションの原動力となる産業人材やものづくり現場を支える優秀な技能人材等の育成・集積、 
・国際競争やAIやIoT等の技術革新に対応したものづくりのプロセス全体におけるデジタル化の推進、
・公益財団法人ひろしま産業振興機構の新技術トライアル・ラボを通じた、付加価値の高い製品に繋がるサプライヤーの研究開発支援、
・県内企業が県内外を問わず連携して取り組む新たな挑戦を支援する中小・ベンチャー企業チャレンジ応援事業 
などに取り組んでいるところでございます。
今後とも、社会経済情勢の変化に対応したイノベーション力の強化やものづくりのデジタル化の更なる推進を行うとともに、ものづくりの「核」である製造工程の強化のみならず、企画・開発など含めた一連の工程の強化を図ることによって、製造業の生産性の向上と新たな付加価値の創出につなげるなど本県製造業の持続的発展に向け、より一層注力してまいります。
6 人を呼び込む取り組みについて
最後の質問は、人を呼び込む取り組みについてであります。
本県では、「観光立県」の実現を目指して、観光客の増加に向けた各種施策を推進し、また、UIターンなどの移住・定住に向けた取り組みを進めています。
しかしながら、私自身、8年前から民間企業で観光事業に携わり、5年前からは県議会議員として活動させていただく中で、こうした取り組みに対して若干の違和感を覚えるようになりました。
県をはじめ関係機関が連携して、「せとうち広島デスティネーションキャンペーン」などの機会も活用しながら、観光客を増やす取り組みを進めることは重要であると認識しております。
一方で、県が実施する観光振興施策や、企業誘致、Iターン・Uターンの促進など人口を増やすための、プロモーションをはじめとする取り組みは、外から人を呼び込むことに注力しすぎではないかと感じるところがあります。
先般、富山市にある観光地の一つ、人口約3、300人の岩瀬町を視察してまいりました。
そこで、20年前から古民家の修復・再生に取り組み、2004年に「岩瀬まちづくり株式会社」を設立した方からお話をお聞きしたところ、目的はただ1つ、「自分たちの住みたいまち」を作る、というものでした。
「自分たちは、ここから逃げることができないから、今住んでいるまちをよくしよう」というシンプルな考えで始めた活動は、20年経ったいま、改修された物件も増え、レストランや商店として、また陶芸家や彫刻家の活動拠点として活用されています。
さらに、電線の地中化・無電柱化も進んで、街並みの美しさも高まり、観光客が増えると同時に、視察の受け入れは年間500件にのぼるなど、全国的にも注目されています。
しかしながら、さきほどの社長は今でも「観光客は必要ない」と言っておられました。
まちづくりとは、地域の住民が自分たちで住みやすいまちをつくり、自然に人が来てくれるようになるという、基本的なことを、私自身、見失ってはいないか、と気づかされました。
大切なのは、当面の入込観光客数を増やすためではなく、長期的に考えて、原点に立ったまちづくり、いま住んでいる人たちが「住みやすいまちづくり」をしていくことです。
観光振興の施策は似通ったものが多い中で、県も市町も、地域振興の観点から、「自分たちが住みたいまちづくり」に向けて取り組んでいかなければならないと考えています。
そこで、県が実施してきた、観光振興をはじめ県外から人を呼び込むための施策について、これまでの取り組みの成果はどうなのか、また、転出超過が全国で最多となった中、反省すべき点も踏まえた上で、今後取り組んでいく必要があり、長い目で見ると、観光客や定住する人の増加が期待できる、富山市の岩瀬町で行われているような「自分たちが住みたいまちづくり」の取り組みを、県と市町が一体となって進めていく必要があると考えますが、どのようにお考えでしょうか、知事の御所見をお伺いいたします。

【答】知事
県では、すべての市町と連携し、それぞれの地域の強みや特色を活かして、地域の活性化に向け、観光振興や、東京圏をはじめとする県外から人を呼び込む取組を、積極的に展開してきたところでございます。  
 観光施策では、広島県の認知度を高めるためのプロモーションなどにより、総観光客数は平成23年から6年連続で過去最高を更新するなど、取組の効果が着実に現れております。
また、UIJターン就職につきましては、学生に対する県内企業の魅力発信や就職マッチング機会の提供などを行い、平成26年度に比べ平成30年度は、UIJターン就職者数が推計で約700人増加するなど、一定の成果を上げているものと考えております。  
 更に、移住に向けた取組につきましては、広島らしいライフスタイルの魅力発信や、AIを活用した移住相談システムの運用、きめ細かな移住サポート体制の構築などを市町と連携して展開することにより、ふるさと回帰支援センターによる移住希望地域ランキングでは、2位まで上昇いたしまして、県や市町の相談窓口を経て県内に移住した世帯数も継続して増加しております。  
 そうした中、現在、県内の一部の市町では、自分の生まれ育った地域に誇りと愛着を持てる子供を育てることを目標に掲げて、地元の魅力ある自然や歴史、特色ある産業などを学ぶ機会を設けるなど、具体的な対策に着手しており、こうした取組が就職等で地元を離れる若者の将来的なUターンの増加につながるのではないかと期待されております。  
 加えて、 
・ NPO法人がリノベーションした空き家・古民家等を商店等として活用する取組、 
・ 住民の出資団体による子育て世代をターゲットとした定住促進や地元食材を使った農村レストランの運営など、 
住民の皆様が主体となった地域活性化の取組が県内の多くの地域で行われております。   
 こうした、地域への愛着を育てるための取組や住民参加型のまちづくりの取組を県内各地で進めるとともに広く情報発信していくことが、首都圏等からの転入や交流人口の拡大にもつながり、それぞれの地域の活性化を促すなどの好循環をもたらすものと考えております。  
 このため、県といたしましても「自分たちの住みたいまち」づくりに向けて、中山間地域振興計画に基づき進めてきた中山間地域ならではの価値に共鳴する人を増やし、活かすための取組や、県内への移住促進などの取組を着実に推進するとともに、県によるプロモーションの実施を通じて、県内全域へ人を呼び込み、それぞれの市町において「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げる将来の目指す姿が実現されるよう市町の取組を積極的に後押ししてまいります。

【むすび】
私の質問は以上ですが、最後に、ひとこと申し述べさせていただきます。
戦後75年を迎え、私は、昨年11月に50歳になりました。
終戦から25年経って生まれたわけでありますが、幼少期に戦後を感じた記憶はありませんでした。
これは、戦後から25年の間に、当時の皆様が一生懸命頑張り、努力し、廃墟からの復興を成し遂げられたからにほかなりません。
一方で、いま50歳の私が、25歳からの25年間で、私は、そして本県は、次の世代に対して、どのくらいのことができたのか、という感を募らせています。
私自身も反省しているところでありますが、一言で申し上げますと、危機感の共有に欠けていると思っております。
戦争は目に見えて街が破壊されますが、少子高齢化・人口減少は長い年月をかけて進んでいくもので危機感を持ちにくいため、県民全体での共有が難しいのではないでしょうか。
政治・行政が率先して業務に邁進している姿を見せることで、危機感と希望を共有する必要があります。
こうした反省の上に、これからの25年を見据えて県がどうあるべきか、人口減少社会を迎える中で、相当なスピード感をもって取り組みを進めていかなければならないと思っております。
先ほどの質問で、東京圏への一極集中の是正の必要性について申し上げましたが、地方創生が進まないことについて国を批判するだけではなく、県として覚悟をもって、独自の地方創生を進めなければいけません。
そのためには、いったん立ち止まり、成果主義にとらわれず、長期的な視点をもって、次の25年を考えていく必要があります。
25年後、2045年は、戦後100年になります。
戦後100年に向けて、広島に住む人たちが、「広島に生まれ、育ち、住み、働いてよかった」と思えるよう、知事、執行部の皆様、そして私も県議会議員の一員として、ともに力を尽くしてまいりたいと考えております。
御清聴ありがとうございました。 (次ページ再質問)
【再質問】耐震化補助等の拡充について
質問の中でもお伝えしたとおり、耐震診断は本県を含め5県のみ、耐震補強は本県を含め3県のみが、県として補助制度を創設していません。
 市町で補助制度が設けられているが使われていないということは、道路や河川以外の民間の建物も何か災害があったときには危険だということをしっかりと伝えていくためにも、県が率先して補助制度を設けなくてはいけないと思います。
 隣県の岡山県は、耐震補強の補助制度を平成18年度に開始し、平成27年度に事業仕分けにより廃止したが、平成28年の熊本地震を受けて危機感を感じ、県と市町が一体となって補助制度を再度設けています。
 広島県は未だに市町に働きかける、なおかつ活用が少ない、今後検討する、という危機感で大丈夫なのかと思っています。
 再度この件に関して、お答えをいただきたいと思います。

【答】都市建築技術審議官
住宅の耐震化の促進につきましては、市町と協調した補助制度を創設している他の多くの都道府県においても、その活用は低調であることから、県といたしましては、市町との役割分担や要望を踏まえ、地震防災に対する県民意識の向上や、安心して耐震診断や改修を行うことができる環境づくりに、率先して取り組んできたところでございます。
 来年度は、広島県耐震改修促進計画の第3期計画の策定を予定しており、耐震化の目標達成状況や他県の状況などを踏まえ、国や市町と連携した、効果的な支援や環境づくりの在り方について、検討してまいりたいと考えております。

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